日常と散歩の賛歌

日常と散歩の賛歌

小学生のころは、学区の外へ行くのは、危ないからいけなかった。
だけど、きっとその向こうに広がる未知の町に憧れた。

大人になった今、学区もなければ、行けない場所も少なくなった。
だけど、行かなくなった。

未知だった町は、おおよそこんなもの、と、見当がつき、憧れが小さくなったからだろうか。

それとも、本当は行きたいと思っていても、日々のやるべきことを優先して、忙しいと言い、行きたいという思いも、べつに行きたくないよと、思い込もうとしているのか。

どちらでも、良い。
とりあえず、今私は、日常を大切にしたい。家族を大切にしたい。
いつもの景色は愛おしく、安心する。
もしまた、どこか歩きたくなれば、歩くだろう。

……
ちなみに、今日の仕事帰りは、なんだか無性に歩きたくなって、いつもは電車の道を一駅分歩いた。

夕暮れ時で、紫色の空と、街の灯りと。
帰宅する人や、親子連れ。子どもはパピュパピュとサンダルを鳴らして、お母さんの前を走っていった。

なんだかなぁ。
知っている街のはずなのに。
懐かしさや、小さい頃の憧れを写し出した世界にいる気がして。
歩くのは、良いものだ。と。
ふとそんな夢の中にいる、とても良い気分になった。

そして、その良い気分のまま、家に帰った。
家族のいい笑顔が、おかえりと迎えてくれた。
そして、今日も家族で夕飯を食べる。
ああ良い一日だった。

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