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医師連携してマレットフィンガーの保存療法を行った流れ

外傷協会の先生方、日頃より大変お世話になっております。

おおえのき接骨院の大榎です。

今回当院でマレットフィンガーの方が来て、当院スタッフが整復固定をして、手の専門医師から保存療法と当院キャストを使ってもらえたのでシェアします。


今回は大半がオペ適応となりやすい骨性マレットフィンガーの保存決定について症例報告させて頂きます。

75歳、男性

cc)右4指骨性マレットフィンガー、左肩腱板損傷(確定診断)

pi)ゴルフ場ロビー入り口にてカーペットに躓き前方に転倒、右4指過屈曲で手をつき、その後左肩を直接地面にぶつけ負傷する。

ps)
右4指:DIP背側圧痛(+)自動伸展不能、DIP屈曲時痛(+)爪床辺りに内出血(+)、エコー末節骨背側不整像

左肩:棘上筋停止部(+)自動外転不能、drop arm test(+)painful arc sign(+)、棘上筋内低エコー像

このような患者情報になります。

当院に長年通院されていらっしゃる患者さんでして、写真から分かるように手指の変形やエコーで上腕骨の変形が分かると思います。

指に関しては受傷機序と所見からマレットは明らか。エコー不整像で骨性マレットと容易に判断出来ました。

直圧整復は近位骨片を遠位方向に寄せながらDIP過伸展と共に直圧しました。この時あまり整復感はありませんでした。

整復後エコー確認後に、DIP過伸展位のまま綿花を丸めたものをDIP背側にテーピングで固定して過伸展位を保ち、ルナキャストでシェルスプリントを作成しました。

回答書にあるようにOA骨棘部の骨折で転位少なく、またlagが出たとしても変形治癒に対して理解のある方なので保存決定となりました。


左肩は典型的な腱板損傷の所見で、肩のOAもみられエコーでランドマークを左右対称に描出出来ませんでしたがSFと思われる部分で腱内に低エコー像あった為部分断裂と思われ、一緒に対診しました。

マレットの対診がメインだったので手の外科に送りましたが、肩は肩専門の先生に後日MRI受診となりました。肩のほうがオペになるかもしれないとのことで、それまでの対症療法が中心のリハビリを行っていきます。


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マレットの固定ですが、当初PIPフリーのシェルスプリントにしてましたがPIPの屈曲に合わせて、深指屈筋も同時収縮してしまい、テコの原理で背側のスプリントが浮き上がりフィットしないという事象が起きました。

手専門医からは良い固定具だからそのままで良いよ〜と言われたようですが、修正しました。

修正として、掌側から当てて爪の辺りで折り返してキャップを作り、過伸展位になるようにモデリングしました。こっちの方が接触面が広く、フィットしてズレがありませんでした。

背側がフリーで患部の観察もしやすく、こちらのほうが良さそうです。

ちなみにルナキャストの場合2重です。3重は分厚すぎ。1重だとすぐ折れます。

指先の固定なんかはオルフィットなどのほうが薄さと頑丈さ的には良いのかもしれません。

オペありきならコスパの良いダイヤ工業さんのユビットでも良いですが、保存でいくなら少しでも整復位、過伸展位を保ちやすい固定を作っていきたいところですね。

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また骨性マレットは受傷機序によりタイプが2つに分かれます。

今回のように、過屈曲により負傷した場合は『タイプ1(屈曲損傷)』で、終止腱の牽引による剥離骨折。骨膜の連続性は断たれる。

反対に、過伸展位で軸圧を受け受傷した場合は『タイプ2(伸展損傷)』で関節内骨折となり脱臼を伴う可能性があります。骨膜の連続性は保たれる。

関節面1/3以上の骨折は不安定となる原則オペ適応です。

オペは説明不要の『石黒法』が定石です。
過伸展位を保ち続けるのが大変で最悪lagが残る保存に対し、石黒法は予後良好で満足度も高いのでオペ前提とする医師、医療機関が多いです。オペありきで対診先を選定すると良いでしょう。

受傷機序から骨折形態を予測出来るとより高度な鑑別が出来ると思います。

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マレットフィンガーはエコーが無い限り、圧痛、自動伸展不能、背側内出血等の所見だけでは腱性が骨性かの判断は非常に難しいです。

腱性の場合、保存だと8週固定で予後不良。

骨性の場合、保存は4週固定。再転位注意。

ほとんどがオペになり、癒合までの保存をする機会は少ないので、たくさんの学びを得ながら治癒まで気を抜かずやっていきたいと思います。

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