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3月1日発売の拙著『最高の組織』の要約を公開します!

自分は組織と聞くと、「組織の利益」「組織の力学」という言葉がまっさきに思い浮かんでいました。働き始めたころからずっと、社会人としての常識という得体の知れない圧力が、個人の尊厳や幸せよりも優先されることにずっと違和感を持っていました。

組織というものを解像度を上げて見れば、一人ひとりのメンバーになるはずです。どのような形態であれ、その全員が個人のポテンシャルを最大に解き放てるような組織をめざしたいと考えてきました。

フライヤーを創業してから、一人ひとりのメンバーの側からまわりの景色を眺めるとどう見えるのかをずっと想像してきました。わかった気になってしまってはいけないけど、メンバーを知ろうと努力することは決して無駄にはならないと思います。それにより、自分たちにとっての理想に近づくための再現性のある法則が見えてくる気がしています。

この本は理想を追求する中で現実的な問題に直面しては、一つひとつ会社のメンバーや皆さんに相談して、おぼろげながら見えてきた考え方をまとめました。できるだけ素直に正直に考えてきたことを表現しました。

フライヤーのサービスと同じく、象徴的な箇所を中心に10分で読める要約を思い切ってnoteでも公開します。色々な方に届くと嬉しいです。

本書の要点

出世や成功がキャリアの目標だった時代は過ぎ去った。一人ひとりが毎日を彩りあふれる世界に生き、幸せを追求する場として会社が存在しなければならない。
ピラミッド構造の組織の問題点である上層部のボトルネックの存在と、無能になってしまうまで出世するというピーターの法則から、至るところでメンバーのポテンシャルが発揮できない状態になる。
ステークホルダーには優先順位がある。通説とは異なり、(1)従業員、(2)顧客、(3)株主・債権者・取引先という順で考えるべきだ。
理想的な組織形態の1つは輪を描いているようなものである。すべてのメンバーが同列で遠慮せず、プロフェッショナリズムを持ち、自律的に好きなことあるいは得意なことをする状態がよい。

要約

すべての組織が直面する課題
ピラミッド型組織

現代の株式会社の多くはピラミッド型の組織形態となっている。大組織でも統制が取れやすいため、一般的な組織の形だ。しかし、ピラミッド構造の組織には、上層部に能力のない人や意欲のない人がいると、その下層のメンバーがその人以上のパフォーマンスが出ないという問題がある。

さらに、「階層組織の構成員はやがて有効に仕事ができる最高の地位まで達し、その後さらに昇進すると無能になる」というピーターの法則もある。ピラミッド構造の問題点とこのピーターの法則を合わせると、会社のいたるところで無能になっている人がボトルネックになり、組織のパフォーマンスを下げてしまう構造がわかる。

「魚と組織は頭から腐る」という有名な格言がある。ボトルネックが上層部であればあるほど、その影響は甚大となる。それが、会社のトップだったとしたら、究極的にはトップを変えるしか抜本的な対処策はない。

ピラミッド組織構造で行える対処法

多くのビジネスパーソンにとって、組織の形を変えることは難しい。ただ、組織の形を変えなくても、理想的なカルチャーの組織を作ることは可能である。

採用に最大限力を注ぎ、適切な人材のみを採用する。特に他者に悪影響を与える問題児はそもそも採用しないように心がける。

1人の問題児が周りの3人の障害になると、合わせて4名の戦力ダウンになる。小規模組織でそのような事態になると影響が大きい。プラスになる人であることは最低限確認すべきだ。

組織長の人事に最大限配慮する。その際に、自分の能力や成果を最大限アピールするタイプではなく、人の育成や良さを引き出すことに長けた人材を登用する。

どんなに能力の高い人でも1人でできることには限界がある。組織長には組織全体を活性化できるような、人を活かせる器の持ち主を配置したい。

課長代理、副部長、副本部長など、部門長以外の役職はできるだけなくす。

ピラミッド構造の組織は情報の流れが円滑でなければ、会社全体のスピードが上がらない。部門長以外の人にも責任が発生するため、情報の流れから外れると「自分は聞いていない」ということを言い、情報共有を催促する。そして、根回し以外に意味のない会議を生む元凶になる。できるだけ不要な役職はなくし、情報の流れの乱れをなくしたい。

マトリクス型組織

例えばコンサルティング会社では、一人のメンバーが業界知識にフォーカスした業界別組織と、スキルにフォーカスした機能別組織の2つに所属する。このようなマトリクス型組織だと、メンバーの配属が柔軟になる一方で、複数の上長がいて別の指示が来ることから、メンバーが判断に迷いがちになる。こうした組織形態を取っている場合、対処療法的ではあるが、構成員の自律性を高める施策を徹底的に行うことで、個々のメンバーの良さが引き出されやすくなる。

文鎮型組織

1人の組織長に対して、例えば29人のスタッフが並列で従っているような組織のことを文鎮型組織という。よく言われるフラットな組織は、究極的にはこの形だろう。研究者などの自律的に働けるプロフェッショナル型人材の組織で、ごくまれに見かける。この組織の問題は、文鎮の上の部分、つまり組織長に集まる情報が多すぎてパンクすることだ。実際は有機的に動く文鎮型組織はほとんどなく、「文鎮型組織を目指す」というスローガン的な使われ方になる。

【必読ポイント!】これからの成長組織が向かうべき方向性
従業員を最優先にするということ

会社を取り巻くステークホルダーには、株主、債権者、従業員、顧客、取引先などが存在する。資本主義の色合いの強い会社では、株主が一番重要だとする一方で、全てのステークホルダーのバランスを取るべき、という主張もある。ステークホルダーのバランスを取ることは、実際には難しい。事業の状況にもよるし、片方を立てれば片方に悪影響があることが多い。ただ、これには実は答えがあると考えている。常識とは異なるが、ステークホルダーには次のような優先順位があると考えるのだ。

(1)従業員 ⇒ (2) 顧客 ⇒ (3) 株主・債権者・取引先

株主が最優先ではなく、従業員が最優先と考えることに注目していただきたい。従業員、つまり会社のメンバーがいきいきと楽しく仕事ができる状態では、質が高く熱量のあるサービスを作れる。その魅力や熱量を感じ取った人が顧客になり、サービスの利用者になる。そして、売上の増加と高い収益性を実現し、株主・債権者の要求にも答えられ、取引先にも長期的な関係が築ける。この好循環の出発点は、あくまでも従業員を一番大切にすることだ。

株主価値を第一に考える組織でも、従業員が大事という結論にはなるだろう。ただ、会社の哲学を問われるような重要な意思決定の場面において、逆の順番で考えている組織と、従業員を最優先で考える組織では、判断に大きな違いがでる。

輪を描く組織

ここまでピラミッド組織を中心に既存の組織形態について述べてきた。当たり前のことではあるが、人には本来上とか下とかはない。偉い人とか偉くない人もいない。完全な人もいない。すべての人は尊い存在である。

理想とする組織の例としては、サークル活動がある。共通の目的を持った人が、誰から強制されるわけでもなく自分の意志で主体的に参加をする。一人でするよりも、お互いに高めあえるし、共通の話題を持っているから理解し合うこともできる。

このように理想的な組織形態は輪を描いているようなものである。その輪には頂点はなく、輪の構成要素の一人ひとりは、デザイナー、エンジニア、セールス、CEOなどすべてのメンバーだ。誰が前に出ることも後ろに下がることもない。各メンバーの得意なことや好きなことを集めて役割を分担し、その力を総合すると自然に会社が動いているような状態である。

ティール組織(進化型組織)の何が凄いのか

感度の高い経営者の中で『ティール組織』は既に共通言語となっている。本の中で特に重要な箇所は達成型(オレンジ)組織と進化型(ティール)組織の違いにある。

達成型組織の目標は競争に勝つことであり、必然的にイノベーションを追求する。実力主義で意思決定はピラミッド組織の上層部でなされる。多くの民間企業で見られる形態である。

一方、進化型組織は、マズローの5段階欲求の最上位にある「自己実現の欲求」に根差している。支配やエゴから切り離し、人生の豊かさを信頼する。成功・出世はもはやメンバーの目標ではなく、自分の使命を追求することにフォーカスする。先駆的な進化型組織には3つの特徴がある。

「自主経営(セルフ・マネジメント)」:メンバーには上司がおらず、誰もが強い権限を持っている。そもそも権限委譲という概念もない。自分の使命を追求することに重ね合わせるように顧客にサービスを高い熱量で提供する。
「全体性(ホールネス)」:情緒的・直感的・精神的な部分や弱さを隠すことなく、自分をさらけ出し、お互いの内面を支え合う慣行を作っている。
「存在目的」:達成型組織では株主価値の向上が目標となっている一方で、進化型組織は組織自体が存在する理由、将来の方向性を常に追求し続けている。

組織論においては、絶対的な答えは存在しない。ただ、進化型組織が理想の形の1つであることは感じてもらえるはずだ。

主体性の強い組織の成立条件

進化型組織のように主体性の強い組織の成立要件を述べる。

第一に、メンバーがお互いを信頼し、かつ大切に思っていることだ。自分の生き方を主張できる前提は、自分の生き方を理解してもらうことである。それができていないとはた目には自分勝手に見えてしまう。そのため、相互理解の時間はできるだけ多く取るべきである。

第二に、全てのメンバーが高い水準で自律的に動けるセルフスターターであることだ。それとは逆にフリーライダーには、居心地の悪い組織になるだろう。

第三に、組織全体のトップは、メンバーが自律的に動いた結果の責任を自身が取る、という覚悟があり、それを伝えていることだ。

人材採用と人材育成の心得
優秀層がなぜ会社に所属するのか

人はなぜ会社に集うのか。安定した収入は正社員にならなくても達成できるし、キャリアを全うするほどに会社が存続する保証はない。自分という個人が人から求められるようになることこそが、究極のジョブセキュリティだ。一流の人材が会社に所属するのは、社会に対してより意義の大きなことができる場合、一人だと楽しくない場合、ライフイベントなどで優先順位の一時的な変化に応じて働き方の強弱をつけやすい場合、というような背景がある。

自律的で主体性の高い組織を作るためには、集まる人材が重要である。だからこそ、人材採用にはできる限りリソースを割きたい。

人材の採用基準

スタートアップでも大企業でも採用にずっと関わり考え続けてきて、たどり着いた採用基準は下記のものだ。

(1) カルチャーフィット > (2)ポテンシャル >> (3)スキル

カルチャーフィットはその人材が組織にとってプラスになるのか、マイナスになるのかを分ける最重要な項目だ。また、会社のカルチャーに合っていなければ、その組織に長期にわたってコミットしてもらうことは難しい。人としてのありのままの姿で活躍できる人材は、カルチャーフィットが良いことが多い。

次にポテンシャルについて補足する。成長組織においては、事業や業務がずっと同じ状態であることはまれだ。会社の成長に応じて、行うことが頻繁に変化する。業務内容が変わっても、ポテンシャルのある人材であれば、3カ月間いい環境を整え集中して努力してもらうことで、一流の人材になる。カルチャーフィットとポテンシャルさえあれば、スキルが多少不足していても全く問題がない。あっという間に採用した人の活躍を目にすることになる。

スキル面は言ってしまえば劣後である。もちろんあるに越したことはないので、ポジションによっては確認をする。ただ、スキルが多少不足していても採用の可否を変えることはない。カルチャーフィットとポテンシャルが十分であれば、採用を進めても問題がない。

入社したメンバーが伸びる人材育成法

人材育成を考える前に、そもそも入社する人の人生の目的が「会社の売上の向上」「会社の利益改善」であるわけがないことに留意すべきだ。もう、出世と成功に縛られた人生を送ることで幸せを感じる時代ではなくなった。

人材育成をするうえで最も重要なのは、興味の強い分野をしっかりと確認して、チャレンジしてもらうことだ。その際に、教育プログラムを信じるのではなく、一人ひとり興味の対象や現状のスキルが違っていることに最大限配慮すべきである。全社員に適用できる教育プログラムという幻想は捨てるべきだ。人それぞれ生きる目的は違うのである。

そして、できるだけ1日8時間なら8時間と決めて、それ以上働かないことにより、最大限の集中力で業務の生産性を高める習慣を身につける。時間が決まっていれば、勤務時間後にやりたいこともできる。複業も大歓迎すべきだ。モチベーションも上がるし、人脈もスキルも得られる最高の機会になる。

人は元来、楽しいと思えることをしていると、ドーパミンなどの物質が脳内で分泌され、記憶力と思考力が格段に上がるものだという。わくわくする仕事を準備することこそが、人材育成においてその会社で考えるべき内容なのである。

あとがき

本の中から少しでも多く新しさを感じていただける(だろう)箇所を要約しています。

採用から育成、カルチャーの定着の具体的なノウハウや、実際にフライヤーというチームを運営する中で重視していることに関しては本書に記載しています。

また、一人ひとりがより活躍する社会、リスク感度がいかれていない多くの人が起業できる社会にするための提言も記載しました。

組織に関しては世の中に権威も多い中で、自分が正しいと思うことをお伝えするのはかなり勇気が必要でした。実は今でも少し怖いです。中身を見てみようかなと思っていただいた方は、ぜひ本も読んでみて下さい。


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