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北島三郎さんのファイナルコンサートで号泣した話

北島三郎さんのコンサートに行ってきた。

しかも、ファイナルコンサートの最終日だ。

サブちゃん。
物心ついたころには、既に演歌の大御所だった。
じいちゃん、ばあちゃんにかわいがられて育った私には、日常の中にサブちゃんの歌があった。

幼稚園のころには「函館の女」を口ずさんでいたし、
紅白で「まつり」を聞かないと年は越せない!と大晦日の夜中はテレビの前を陣取っていた。

そのサブちゃんも、もう85歳。
「ファイナル」と銘打ったコンサートが開催される。

あくまでも、この場所での「ファイナル」に過ぎない、ということなんだけど、年齢を考えると、私が生で見られるのは最後になるかもしれない。

チケットはなんとか取れそう。
予定も大丈夫。
行かない選択はなかった。

気分を盛り上げるため、コンサートまでは予習を重ねた。
まずは、知っている曲をダウンロードしまくり、毎日聞く。

そして、図書館でサブちゃんの本も借りてきた。

『道 吾が道…歌の道・人の道』
昭和63年に書かれた本だ。
渋谷で流しで歌を歌い、歌手になるまでの道。
歌手になってからの紆余曲折が語られている。

「よい木にはよい実がなる。だけど、よい木にはよい土壌が必要だ。
貧乏しながらよい土壌をつくろうと苦労したけど、七人の子供たちは、みんなよい実をならしてくれた」

道 吾が道…歌の道・人の道

サブちゃんのお母さんの言葉。
「よい土壌をつくる」。母として、沁みます。

そして、いよいよ御園座へ。
到着してみると、見渡す限りのお年寄り…!!!!
アラフォーの私だが、ここでは圧倒的に若者だ。

ゆっくりと進む列に並び、チケットを切ってもらって、会場に入る。

まずは、グッズゲットだ!
ぴかぴか光るうちわ。
北島ファミリーのイラスト入り!

さぶちゃんまんじゅう。
サブちゃんにちなんで18個入りだ。
(3×6 サブロー)
面白いだけじゃなく、美味しい!

そして、Tシャツ。
背中に「北島三郎」「祭」「感謝」
の文字入り。超渋い。
(いま、着ている。タグには「KITAJIMA FAMILY」と金色刺繍。超絶カッコいい。)

開演までの待ち時間、あたりを見渡すと、スマホをいじる方々が目に飛び込んでくる。
LINEとかやっているっぽいのだが、みんなスマホの文字がめちゃくちゃ大きい。
スマホって、こんなに文字を大きくできるんだ…!
最近老眼が怪しくなってきたので、近い将来役に立ちそうだ。

そして、いよいよ、幕が上がった…!
最初は、大画面でサブちゃんの軌跡が上映された。
星野哲郎さんの声でサブちゃんが語られる。
「川に佇む大きな岩のよう」と例えられていたのが印象的だった。

その上映が終わると、サブちゃんの登場だ!!

北島ファミリーの皆さんと一緒に登場!
車椅子(超豪華バージョン)に乗っていた。

昨年末に大腿骨を骨折されたそうだ。
でも、声は素晴らしい。
トークも軽妙で、ユニークで、面白くて、老いなんて感じさせない。

一曲全てを歌うのは難しいのか、ワンフレーズ歌って、あとは北山たけしさんや大江裕さん、原田悠里さんや山口ひろみさんに任せたり、時々一緒に歌ったり、という感じだった。

1番だけ歌って、エピソードを話して、また次…という感じ。

でも、それはそれで、たくさんの曲が聞けて良かった。
そして、少ないフレーズでも、サブちゃんの歌声は素晴らしかった。

声量も、こぶしも、心を震わせる迫力がある。

子供の頃から、何度聞いたか分からない、「函館の女」や「与作」も歌ってくれた。

それにしても、ご高齢の方が多いだけあって、開演数十分を過ぎた頃から、トイレに行く人がたくさんいた。
あっちでも、こっちでも、行ったりきたり。

私のすぐ後ろに座っていたおじいさんは、疲れたのか、いびきをかいて寝始めていたりもした。

サブちゃんの「父」としての顔も垣間見た。
51歳で急逝された、息子さんのお話をされたときだ。
「この話をすると、今でもたまらなくなる」
と言いながら、声を震わせた。

私も子供たちと一緒に見ていた「おじゃる丸」の曲や、
北島兄弟の「ブラザー」は、この息子さんが作られていたのだとか。

「ブラザー」を北島兄弟が歌っていたとき、サブちゃんは少しうつむきながら、寂しげな表情で聞き入っていた。

そして、コンサートもいよいよ終盤。

「この舞台に立つのも、これで最後になると思います。」
「辛いです。」

何度も言い、涙を流すサブちゃん。
その声に、その姿に、私も号泣した。

サブちゃんの姿を目に焼き付けたくて、1部が終わった休憩時間に、オペラグラスまで購入したのに、涙でサブちゃんの姿がかすむ。

そんな中、これまで、「歌えるところだけ歌う」スタイルだったサブちゃんが、ついに一人で歌った。

2曲。
危なげなところもなく、歌い切った。

その2曲め「竹」

花の咲くのはただ一度
竹は寿命が尽きるとき
人もまた
上辺の花を飾るより
誠実の花を持てばいい
こころ豊かにしなやかに
ああ…粛々と 行けばいい

「引き際の美学」というような言葉も口にしていたサブちゃん。
「豊かに」「しなやかに」「粛々と」この時を迎えられていたのだろうか。

ああ、涙でサブちゃんが見えない。

そして、ついに。ついに。
本当のファイナルにやってきた。

最後はもちろん…
「まつり」
!!!

北島ファミリー全員と、TAOの太鼓の皆さんと、みんなで盛り上げる。

「ぅお~~とこぉ~~ぅはぁ~~~」
サブちゃんの力強い声が響き渡る。

客席でも、大きな手拍子がはじまる。

サブちゃんの背後には、大きな龍が目を光らせながら登場!
龍の口から白い煙がプシューっと吐き出される!

サブちゃんの脇には、実の娘の水町レイコさんと、義理の息子の北山たけしさん。

最後の最後、そのお二人に脇をかかえられながら…。
サブちゃんが、立った…!!!!

「これが~~~名古屋の~~~まつりぃ~~~だぁ~~よお~~~」

北島ファミリー全員で、歌い上げた。

パーーーン!!
左右からたくさんの金のテープが出てくる。
(紅白で最後に出てくるやつ)

舞台上の皆さんが、深々と頭を下げる。

客席は、うねるような万雷の拍手。

華々しく、幕は降りた。

…すごい。
さすが、演歌会をけん引してきた男。
いや、日本を支えてくれた人。

85歳で、自ら「ファイナル」と銘打って、この舞台を作り上げる、その覚悟。

サブちゃんだけじゃない。
お客さんだってすごい。
コンサート中にトイレに走る人。
スマホの文字がめちゃくちゃデカい人。
車椅子の方もたくさんいらっしゃった。

きっと、ここに来るのも大変だったはずだし、
ここでいるのも大変だったはずだ。

それでも、サブちゃんを見にくるんだ。
そこまでしてでも、サブちゃんの歌を聞きたいんだ。

ポツポツでき始めた白髪や、シワを見つけては、老いを嘆いていた私。
「それがどうした!」
と思わされるほど、サブちゃんに、お客さんに、励まされたコンサートだった。

サブちゃん、最高!!!

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