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引き寄せで家は買えるのか⑥

 沸いているはずのお風呂のお湯が水だったような
つめたっという感覚だった。
支払いラクラクの金額で買えるはずが大ごとになってきた。
しかも、私は派遣の仕事の更新をしないと派遣元に伝えたばっかりだった。

 実は私は正社員で働いたことがないことに、ものすごくコンプレックスがあった。
ボーナスシーズンになると、ボーナスでこんなの買いました~や、
こんなことしました~みたいなSNSの投稿にいいねをつけながら、
ラピュタのポムじいさんのように、その石をしまってくれ…
わしには強すぎる…と心でつぶやくのだった。
一度でいいから、ボーナスというものを味わってみたいんや!!
と思っていた。
派遣先は昭和の企業という感じで、のんびりしていた。
派遣の私にも区別することなく、良い意味でもあるいはもう一方の意味でも
割としっかりと仕事をさせていただいたように思う。
慣れてきた頃に、もう少し子どもさんの手が離れたらでいいから
社員にならないかと声をかけてくれた。
本当に嬉しかった。
頑張りが認められた気がしたし、これはもしかして
念願のボーナスをもらえるチャンスなのではと思った。

 だけど、引き寄せのことや自分の本心に蓋をしないように
感じることをすればするほど、辞めてぇなと思うように
なってきた。
辞めてもどうにかなる。
いやしかし、夢にまで見たボーナスはいいのか?
何度も何度も何度もせめてローンのことがはっきりするまでは
頑張ろうかと逡巡した。
それが、辞めることに舵を切れたのは、
まさかの子どもの友人関係のトラブルだった。
すんなり背中を押されて辞めることにした。
おれは会社をやめるぞ!
と何度も使い古されたであろうジョジョの言い回しで
夫に報告したのであった。
 



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