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俳優がたくさんいて戯曲は図書館にあるなら読んでくださいな私達のために

俳優さんってたくさんいるんですよ。

なんとなくそう思ってるけど、実際そうなんです。大学と専門学校合わせたらえらい数で毎年それだけ卒業生がいるんです(スタディサプリでは「役者・俳優を目指せる私立大学の一覧」で12件ヒット「舞台・演劇学を学べる専門学校の一覧」で64件ヒットします)。

それだけいるものだから、「売れたいとかじゃなくてただ演技が好き」という「道を探究している」ような「本当の意味での俳優」「野生のワーニャおじさん」みたいな人もめちゃくちゃいるんです。それに対して舞台の数は少ない。なので今、世の中に俳優の力があふれまくってる状態なんです。

というのを知った私は舞台を企画して主宰してまして、年2回くらい7年くらいやってます。主にコントの舞台。演劇がやりたいわけではなくて、笑える表現の一形態としてやってるのであんまり詳しくないんですが、どうやらこれは俳優の力があふれとるぞ、とだんだんそういうことを知りました。

俳優が世に余る一方で戯曲(上演する物語、台本ですね)というものも埋もれてます。

図書館には「戯曲」というコーナーがあって名作がたくさんあります。ためしに別役実の昔のを読んでみたんですがおもしろいですね。これって別役は「書けた! これでもうみんな海外のものやらなくていいよ、これやればいいよ!」と思ったんでしょうね。

でも今の劇団は大体自分たちで書いてやってるんですよね。表現において新しいことが重要ですしね。そうすると毎年異常な数の戯曲が生み出される。名作は図書館にあるのに。

俳優、戯曲がたくさんある、そしてお客さんはそんなにいない。文化がそれほど根付いていない。ならこの図書館にある名作を俳優さんがただ読んでくれてそれをあんまりなじみない人が見に行けばいいんじゃないか。そんなことを別役の戯曲を読んだときに思ったんです。

商売の世界に三方良しという言葉がありまして、私がもっとも嫌いな言葉です。それはこの言葉を持ち出す人がみんなうさんくさく見えるからですが…、でも今日だけは不本意ながら三方よしと言わざるを得ません。うさんくささは私が担いますので皆様はどうぞお先に、私の屍を越えていってくだされ。

なのでこういう公演を企画してます。

俳優さん、演出家は自身の研鑽のためとします。公演は無料にします。でも費用自体はけっこうかかります。俳優の交通費、稽古場代、戯曲の上演料、劇場使用料、照明はなしにして戯曲と俳優をまずはそのままお塩で召し上がりくださいみたいな公演にしたとしても道具や袖作ったりそれ運んでくるお金とか要りますね。投げ銭を受け付けるのともっとかかりそうなら有料のワークショップを併設してそこでペイすることを考えてます。

その公演を5月の4、5日に行います。別役実『その人ではありません』という戯曲です。2人芝居で短くて道具が少なくて読んでおもしろかったのでこれにしました。

やります、というだけではなくてこの公演の目的は俳優と演出の研鑽と顧客の創出、ひいては文化を広めることですよね。なのでできれば真似してもらったほうがいい。やり方をここにメモしておきます。各地でやってくだされ。

基本姿勢として「クリエイティビティはできるだけ減らす」ことにしてます。だれでもできる必要があるからです。

■戯曲を探す

やりやすそうな戯曲を探すわけですが、ただやりたいやつでもいいし、後述の上演許可がとりやすいかどうかで考えてもよさそう。演劇論を書いている作者だと稽古のときの考えの助けになるのでなおいいと思います(別役実は『演劇教室』もあるし『コント教室』もありました)。

■俳優を募集する

Twitterで募集してgmailに応募してもらいました。「研鑽のために別役実の稽古をします、週一回、平日午後に」というような感じで。私は自分のやってる舞台のアカウントがあるので俳優さんがリツイートけっこうしてくれました。応募が30人くらいあったんですが対応できるのは8人くらいなので8人にしぼってお断りのメールを出しました。

■稽古をする

区民センターでとって週一回稽古をしました。お近くの区民センターに団体登録してそこの人に相談してとってください。小さな子がいる俳優さん、特にお母さんが俳優活動できない問題というのがあったので、今回お子さんがいる俳優さんも参加しやすそうな平日午後に設定しました。連れてきていただいてもよかったんですが、実現には至りませんでした。

■稽古の内容

宿題として6Pくらいずつを覚えてもらいます。今回は2人芝居なので8人を2人ずつ4組に分けました。稽古場では冒頭で課題の箇所の「ここはこうしてほしい」という最低限の演出を伝え、あとは各々で稽古をしてもらいます。なのでほぼ演出という作業はありませんが、各組の近くに行ってどういう話をしているのか聞かせてもらったり、口出しさせてもらったりします。あくまでも研鑽のためなので、俳優さんのやりたいことを優先してもらってます。最後に各組稽古した部分を発表し、主に演出側がどう見えたかを伝え、また他の組からの感想も伝えてもらいます。8回くらいの稽古で戯曲を一周しました。

■会場を探す

区民センターの教室みたいなスペースでやろうかなと思いましたが、知り合いが一軒家を借りてレンタルスペースみたいなことをやってたのでそこを使うことにしました。1時間1800円だったので、切り詰めて借りるとそっちの方が安かった。区民センターの教室だと有料にできないんじゃなかったかな。公的な稽古場みたいなところに打診したらワークショップは禁止ですというようなことがあったり。

■上演許可をとる

日程が決まったら上演許可をとります。検索や出版社にメールなどして戯曲の上演権を管理をしているところにお願いをします。別役作品は無料公演の場合5000円だそうです。有料の場合は2万円+席数や公演数に応じて追加されていきます。

■告知をする

今回は俳優さんにキャリアの長い方もいたのと私のふだんやってるツイッターアカウントもあるので、集客はそこまでがんばらなくてもよさそうでした。HPに書いてTwitterなどでお知らせしました。

足りなそうであれば今回使う場所は知り合いのスペースなので共通のお知り合いに声かけたりとかもします。

会場や区の掲示板での告知をする方法もあるなと思います。地域の人に見てもらうにはこれが一番いいような気もします。

区の掲示板に載せてもらうお住まいの区のガイドラインがあります。世田谷区はこのような形。自分たちで貼りに行って剥がしに行かないといけませんが、掲示期間は10日間で10日前から受付だそうです。

■公演をする

最初に想定していたのは俳優さんが台本を読む形だからリーディング公演でいいんですよね。でもそこから先はどんな形でもいいと思います。

今回私達で想定してるのは、最後まで覚えてきて通し稽古をする組が1組。そして他の組はごく短い部分を覚えてきてもらって演じます。お客さんは何回も同じ部分を見ることになりますが、これがけっこうおもしろいんですよ。同じ台詞でも発話する人によって全然ちがいます。俳優さんらは知ってることですが、一般の方はなかなか見られないところではないでしょうか。

で、そこからこうやってもいいんじゃないか、という一つ発展した案があって、演じ方に条件をつけたものをその場で出してやってもらうというのはどうでしょうか。ちょっとした演出ですね。どういう条件をつけるのかは知恵をしぼってもらって。俳優さんは即興でこういうことができるんだ(できないんだ)と思ってもらえるんじゃないでしょうか。

それならそんなに準備やクリエイティビティがなくても人に見せられるものになるのではと。

ということで、みなさん、見ましょうよ。同一空間、人に殴りかかられるかもしれないくらいの距離ではじまる演劇はおもしろいものですよ。そして、野生のワーニャ伯父さんたち、やりましょうよ、演劇を。長いはてしないその日その日を、いつ明けるともしれない夜また夜を、じっと、憶えては通していきましょうね。

■■追記 このような公演になりました


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