本当にあったひどい話7

これは本当にあったことなんですけど聞いてください。

浴室の脱衣場で覗き見た主人の携帯電話に届いたメッセージは私の親友である高島愛子さんからのものでした。もしかしてと思ってましたが、なんでお相手が高島さんなの。

私は高島さんに旦那が浮気をしているのかもしれないと相談したことがあったんです。高島さんは絶対してるに違いないと一緒になって怒ってくれました。証拠をおさえるなら音声はこうで写真はこうでとやり方を詳しく教えてくれていました。頼りになる弁護士事務所を教えてくれました。雑誌の読者投稿欄にハガキを送ってくれました。ラジオの電話相談室に私のフリして電話もしてくれていました。そして私の代わりに泣いてくれていました。あれはなんだったの高島さん……。

仕事に行くと言ってでかけた主人の車が高島さんの家に停まっていることがGPSから分かり、私は確信に至りました。高島家のインターホンを押すとチェーンロックがついたドアが開き、驚いたことに主人の顔が見えました。私はその瞬間に涙が溢れ出てきました。

そして主人の後ろにももう一つの顔が見えました。高島さんでした。小刻みに震える高島さんは私よりも泣いていました。一体その涙はなんなの高島さん……。

「なんで!」私が主人に向かって強く言い放つと主人は「一体なんのことだ」としらばっくれるんです。高島さんの手にはレコーダーが握られていてそのマイクは主人の口元に向けられていました。それはなんなの高島さん。人の目は泳ぎ、伏し目がちになって私は気づきましたが服を着ていないんです。カシャ。一体その写真は証拠だとしてもどこにむけてのものなの高島さん。

「高島さん、さっきからなんなの。証拠を押さえてるみたいだけど、それはあなたでしょ、あなたが悪い証拠であるし、あなた自身が不利になるようなものでしょ!」

私が奥の高島さんに向かって声を荒げると高島さんは主人を押しのけるような形で顔を出し、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら

「それでもいい、それでもいいの! 私のことはほっといて、気にしなくていいから! あなたのことを第一に考えてほしいの! このまま裁判に進んで! そうしたら全面的にあなたが勝つの! 私は家も財産もズタボロになるでしょ、でもそれでもいいの! あなたの尊厳が保たれるならそれが一番! 私のことはどうだっていいの!」

と私の手をとって両手で握りしめて泣きながら懇願するんです。一体これはなんなんでしょうか。私はわからなくなってただただ悲しくなって泣きました。


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