本当にあったひどい話8

これは本当にあったことなんですけど聞いてください。

「浮気をチェックする方法って知ってる?」と主人が私に聞いてきたことがありました。縦型動画のアプリで見たというその方法とは、縦型動画のアプリの共有ボタンを開くとよくやりとりするLINEの相手が出るというんです。主人は自分のスマートフォンを使って説明してくれました。そして一番最初に出た名前は私の親友の名前でした。なんで、愛子が主人と。

私が主人を見ると、主人は悲しそうな目をしました。「え、まさか、え、本当にそうなの? うそでしょ!?」と私が目を真円に近いほど丸くすると主人は目をうるませて「くそっ!」と大声を上げて拳を宙に振り上げました。

一体どういうことなんでしょうか。主人は「だまされた!」「なんでこんなことに!」と地団駄を踏んで悔しがっているのです。私はなにかに担ぎ上げられているのでしょうか、何かに騙されているのでしょうか、これは一体なんなんでしょうか。涙目を浮かべて一心不乱に地団駄を踏み、やがて寝そべり、寝たままで足を踏み鳴らしてはそのまま伸ばし、自身の体を床にスライドさせながらうつ伏せになりまた涙で床を濡らし……私は何が起こったのか信じられない状態でいました。

ドアを叩く音がしました。主人はそれどころでなかったようなので私が出ると下の階の住人でした。どうやら下の階まで足音が聞こえていたようなんです。すみません、もうしません、こんなことはもう二度と起こらないようにしますから、と私は何度も何度も頭を下げました。

一体何時だと思ってるんだ、こんなことはこのマンションで一度もなかったと下の階に住んでいるという初老の男性はねちねちと怒り続けていました。

「まあそういうこともあるんじゃないかしら」隣に控えていた奥様と見られる大きなサングラスをかけた女性がようやく理解を示してくれました。助かったと思うやいなや、その女性は私の顔を見て「霊がいるもの」と言って水晶のブレスレットを売りつけてきました。私が何度も何度も断るとご主人は噛んでいたガムをドアになすりつけ奥様はつばを私のひざに吐きかけて帰っていきました。

背後では泣き叫ぶ主人の声が聞こえます。私はあまりにも情けなくてそのまま立ちすくんで泣いていました。

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