本当にあったひどい話

これは本当にあったことなんですけど聞いてください。

ある日、主人の実家に帰省したときのこと、高速の料金所が近づいてきたとき、運転する主人がETCが入ってないかもと言い出し財布の中から現金をとってくれというんです。私は主人の財布を見たことがないものですから少しおっかなびっくり財布を開けてみるとそこにはコンドームがぎっちり入っていたのです。10や20できくのでしょうか、本当にぎっちりと長財布に入っていて、私は思わず主人の顔を見て、見間違いだったかもしれないとまたコンドームを見て、どういう顔をしているのだと主人を見て、また本当にコンドームなのかと財布の中を見直しました。

本当にコンドームでした。私は主人の顔を見ました。
「早く、千円あるから」
とこちらを見ずに言うので、コンドームの存在感に負けてはいるもののそこにはたしかにいた千円札をとって主人に渡しました。
支払いを終え、黙っておつりを渡し、受け取った私もいささかいつもとなんの変化もない主人に戸惑いはしたものの、あれはなんだったのかと思いながら財布におつりを戻してそのまましまいました。もちろんコンドームはぎっちりしていました。

それ以来私は常に主人に疑いを持っておりました。そういえば主人はトイレに行くときも風呂場にも携帯電話を持ち込むんです。主人が風呂に入っているとき私はゴミ袋の替えを補充すると言いながら浴室の脱衣場に入り、主人の携帯電話の画面を見ました。
LINEの通知が来ました。「高島愛子」と。私は血の気を失いました。あの高島さんが。私達と保育園の保護者仲間であり、私にとっては親友とも言えるような高島母からなぜLINEが来ているのか。

結論から言うと浮気をしていたのでした。主人の車にGPSを仕込み主人の動向を追うことにしてまもなく、仕事中のはずの主人の車は高島家のマンションの駐車場に停まっていたのでした。

主人にLINEを打とうか、高島母に電話をしようか、どうすればいいかと考えながらそのまま高島家のドアの前まで来てしまった私は、耳を疑いました。中から獣の咆哮にも似た動物的な女性の声が聞こえてきたのです。それは高島母の声に間違いはなかったんです。

私はインターホンを使わずにドアを強く叩きました。鉄製の扉は重く大きな音を立ててしばらくするとドアが勢いよく、しかし10センチだけチェーン付きで開きました。そこから見えた顔はなんと主人だったんです。

その瞬間、私はあまりにも驚いて声が出ませんでした。驚いたのは主人も同じだったようです。明らかに動揺した顔をして目線を下に下げました。見ると主人はパンツ一枚の格好だったんです。
「何してるの! ちょっと! わかってるんだから!」
と私が言うと主人は私の目を見て一回、力強くうなずいてから扉をまた閉めました。

チェーンを外すために一度閉めたのかと思いましたが、かすかに走る足音が聞こえ、少しの間をとってから再び動物のような咆哮が聞こえてきました。
「ちょっと! ちょっと!」
私は信じられずまた扉を強く叩きました。
「なにやってんの! ちょっと!」
私は何度も何度も扉を叩くうちに、悔しくて涙が出てきました。

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