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松本清張原作映画『点と線』(1958年・東映)を初めて見て、気になったこと

YouTubeの東映公式チャンネルで映画『点と線』を観た。観たのは初めて。

東宝、松竹、大映、日活とは違い、50年代の東映映画はなんとなく苦手な感じがあり、観るチャンスはあったものの(中野の『TSUTAYA』には昔からある)長らく敬遠してきたわけだが、いざ観てみたら、これが頗るおもしろかった。

自分は10代(1984年頃)の時分に原作を読んでおり、飛行機を使ってのアリバイ作りの古さには苦笑を禁じ得なかったクチ。とはいえ、わずか4分間が鍵の東京駅での目撃シーンに限ってはスリリングというしかない。福岡県の香椎駅そばで、その後亡くなることになる女が歩きながら発した「随分寂しいところね」も印象に残る。それは原作も映画も一緒。

内容にはまーったく関係ないが、観ていてちょっと気になったのが、福岡県の上役刑事のセリフ「あれば(あれを)、三原さんにちょびっと話したら……」。大人の、それも刑事が口にする「ちょびっと」が妙に新鮮。「ちょびっと」は特に方言ではないはずだが、九州ではよく使う(使った)言いまわしなのだろうか。ちょびっと気になった。

主役の刑事が『ウルトラセブン』の「V3から来た男」ことクラタで、殺されるのが同じくセブンのプロテ星人というのが味わい深い……。

それ以上に自分が気になったのが、以下のシーンに端を発する流れ。例の13番ホームから15番ホームで知人を目撃するシーン。当初は女2人で目撃した場面が映る。

その後、あらためて刑事の聞き取りにより、男の知りあい含めた3人で目撃していたことが明らかになる。

実は3人で目撃していた。古い映像に加え、プラ
ス山形勲登場でなんとも不気味、濃いぃ味わいが


あくまで推理者として観ているこちら(細かい内容は当然忘れている)としては映像として「女2人で目撃した」と頭にインプットされているので、あらためて、実際は3人で目撃していた(重要な事実)ことがわかると、アンフェアとまでは言わないが「おいおい、最初から言ってくれよ!」となる(笑)。

これが映像なしの単なる語りや供述だったり、記憶が完全に曖昧な設定なら問題はない。だが、記憶も供述も明快で映像ありだと話は違ってくる。昨今のサスペンス映像でこういう流れはアリかしら(ウソの供述の回想シーンなど、連ドラならありうるか)。

たとえば、映画『ゆれる』(オダギリジョー、香川照之、真木よう子ら出演)では、問題の橋からの転落シーンが何度となく回想されるが、急に展開が変わるようなことはなかったはず。

なお、「2人で目撃」から「3人で目撃」が明らかになる時間差は15分ほど。ストーリー全体のほぼ3分の1ほどの時間経過で明らかになる。うーん、時間としては許容範囲か?(苦笑)。

まあ、いまから66年前の映画。いまさらあーだこーだ言っても仕方ない。内容、独特の映像ともに、非常に見応えがあるのは間違いない。

札幌まで行き、疑惑の人物が実際その地を訪
れていたかを確認。仕事関連の人間はともか
く、宿屋の担当者に対し宿帳確認だけおこな
い、顔写真を見せないのはいかがなものか


ちなみに調べたら、同年の『キネマ旬報』選のベスト10には入っておらず。そのかわりと言ったらなんだが、同じ松本清張原作で
「もう一人の高峰」の高峰秀子主演『張込み』(松竹。監督.野村芳太郎)が8位に入っていた。あと、この年、松本清張映画が5本も公開されていることも初めて知った。

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