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おニャン子クラブの1stアルバムにして名盤の『KICK OFF』。アイドル音楽史において、今日まで散々評され、語り尽くされたとも思われる中、ちょい変化球(おそらく)のこんな切り口で書いてみた

おニャン子クラブの記念すべき1stアルバム『KICK OFF』(1985年9月21日リリース)。彼女らのファンにとってはもちろんのこと、アイドル音楽史を語るうえでも極めて重要な1枚であり、今日聴いても色褪せていない、本当の名盤。激賞の論評や緻密な分析、はたまた青春時代に接したゆえのシンプルに熱い思いなど、多くの人間によって様々なことが語られ続けて(尽くされて)きたわけだが、そんな中、リアルタイムで高1のときに聴きまくった際に感じたもの――自分なりの本作へのひとつの批評というか、モヤモヤというか、疑問というか、違和感というか、そういったものがあり、それを書いておきたい。

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当時何度となく聴くうちに、自分がこのアルバムに抱いた感想のひとつが「シングル、それもデビュー・シングルの曲順がA面の4曲目って、なんか地味な位置に置かれてるなあ」というものだった。

当時15、6歳の分際で、そんな大した数のアルバムを聴いているわけではなかったが、早々にちょっと思うところがあった。それまで聴いていた(全部ではない)聖子にしろ明菜にしろアルバムで、シングルがA面の4曲目に配されたものは思いつかなかった。A面1曲目だったり、B面1曲目だったり、どちらかのラストだったり。いや、2曲目でも3曲目でもいいのだが、4曲目というのはあまりないんじゃないか? という気がした(あくまでアイドルのアルバム限定。シングル曲満載の洋楽は別)。

が、考えてるうちに1枚浮かんだ。中3のときに聴きまくった菊池桃子の1stアルバム『OCEAN SIDE』(1984年)だ。奇しくも、『KICK OFF』よろしく、秋元康が作詞で大々的に関わった作品で、A面4曲目が2ndシングル『SUMMER EYES』。ただし、B面1曲目がデビュー曲『青春のいじわる』なので、自分の中でのアルバムの定石(?)に入っていた。

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いや、それでも『SUMMER EYES』。A面ラストじゃなくその前の4曲目という位置が自分なりに好きだった。アルバムの曲順の重要性などまだなにもわかってはいなかったが、ちょっと溜めた感じ、聴き手を待たせた感じが絶妙で、もう1曲あるのですぐに盤を裏返す必要がないのもよかった。

なるほど、そう考えると、CDじゃなくLPレコードという当時ならではの形態というのが大きく関係しているのかもしれない。

ただ、『KICK OFF』の場合は収録シングルは『セーラー服を脱がさないで』1曲のみ。その圧倒的なインパクトやノリや勢いを考えると「A面1曲目のほうがよかったんじゃないか」という思いが強くあった。まあ、それでも気に入って、周りの友人に負けじと繰り返し聴いたのだが(その後になるが、2ndアルバムの『夢カタログ』は、周知のようにシングル『およしになってねTEACHER』がA面1曲目。ちなみにおニャン子のアルバムの中で自分が一番好きなのが『夢カタログ』)。

今回、ざっと調べたところ、『KICK OFF』以前の人気アイドルのアルバムで(それ以降はどうでもよい)、シングル曲がA面4曲目に配されているのは、以下の感じ。

小泉今日子『Today's Girl』(1985年2月21日リリース)。A面4曲目は『ヤマトナデシコ七変化』(ロング・ヴァージョン)

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岡田有希子『Fairy』(1985年3月21日リリース)。A面4曲目は『二人だけのセレモニー』(アルバム・ヴァージョン)

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岡田有希子『十月の人魚』(1985年9月18日リリース)。A面4曲目は『哀しい予感』

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山口百恵『ドラマチック』(1978年9月21日リリース)。A面4曲目は『絶体絶命』。ただし、B面ラストに『プレイバックPart.2』収録。

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調べた限り、やはりあまりない。小泉今日子、岡田有希子2枚、おニャン子クラブと、1985年にA面4曲目シングルのアルバムが4枚リリースされているのは偶然か?(小泉と岡田のアルバム。高1当時、確実に耳にしているはずだが、そこまで熱心なファンではなく曲順は頭に入ってなかった)。

厳密に言って、山口百恵の『ドラマチック』はA面に6曲入っており、A面残り1曲への繋がり、余韻の妙味という織田祐二的嗜好とは微妙にニュアンスが異なる。

ロングやアルバム・ヴァージョンというのも本来のシングルのイメージと異なり、自分の中ではちょっと違う(『二人だけのセレモニー』はそこまで極端に違うわけではないが)。

そうなると、9月に3日違いでリリースされた『KICK OFF』と『十月の人魚』の2枚が、正統派の(笑)それということになるはずだが、うーん、どうだろう。岡田の『哀しい予感』は泣きメロ炸裂の叙情ソングで、菊池桃子の『OCEAN SIDE』の『SUMMER EYES』に通ずるもの。4曲目が完全にハマっている。一方、『セーラー服を脱がさないで』は、やはり真っ当にフツーに考えるに、頭の配置のほうがしっくり来るように思われる……。むろん、37年近く経過して、いまさらグダグダ言っても仕方なく、アイドルアルバムの金字塔、歴史的名盤として確固たる位置に君臨しているのは百も承知で。

とはいうものの、なぜ4曲目なのか、そこに必ず理由はあるはずで、知れるものなら知りたいと思う。前述の面々のアルバムの影響は? など。当時、自分と同じようなこと考えた人、どのぐらいいたかしら。



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