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帰還

一週間ぶりに戻ってきた。
旅は思いがけず長く苦しいものになった。
まさか惑星にまで飛んでいこうとは思わなかった。
その名もコロナ惑星である。
ぐるっと目隠しをされたように視界を奪ったのははちまきではなく、倦怠感という見えない圧力だった。
身体の防衛本能による高熱で敵を倒そうと迎え撃つ。その熱は己にとっても苦しいものになり意識が遠ざかる。
応答せよ。
応答せよ。


惑星での戦いに集中したくても、現実の星での生活には仕事がある。
今の状況を伝えねばならない。
ぼうっとする頭で休む旨を打ち、眠る。
発熱をしてからまる三日間は寝込んだ。
熱は下がっても頭の上に小僧が居座っているような重い倦怠感。
まともに目が開けていられない。
常に瞼が重く、すぐにでも閉じて眠りにつけそうだ。気力もどこかにいってしまった。



惑星コロナは遠く遥か彼方に見えていたはずだった。
何十ものドアの向こうにあるはずだったが、それは幻だった。嘘だった。
いつも既にここにある危機だった。
安全な場所なんてない。
だからここにいるしかない。
本当に?



命は有限だ。
時間は無限だが、わたしの人生にはここまでという見えなくとも確実に制限がある。
惑星コロナに吹き飛ばされ、それに気づかされた。
やりたいことをやって散ろう。
あれ、やっておけばよかったな、今とは全然違う未来があったはずだ。そんな風にため息で幕を引きたくはない。
難しいことではない。
そう決めたらいいんだ。


惑星コロナから帰還したわたしは、再び動き出す。

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