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リーグの機微とファンの機微~NOLファン総括2022・その1

2022年10月4日、オセアンBCスタジアム彦根にて行われた滋賀vs富山の試合。
結果は5-3で富山の勝利で終わり、NOL(日本海オセアンリーグ)の1年目は幕を閉じました。

BCリーグから離脱して1年目のリーグであり、ファンとして外から見たときに、そのドタバタしている様子はうかがい知ることができました。
ファンとして日本海オセアンリーグをどう見ていたのか、そしてどう考えたのかという事は、シーズンが終わった今、一度整理しておこうと思います。
ただ、整理したいことは山ほどあるので何回かに分けてnoteに記していきたいと思います。

ファンのストレス

今シーズン、NOLのコアなファンは強いストレスに晒されていました。
既存のリーグからの離脱、慣れないセントラル開催、昨年まで得られていた観戦体験(主に一球速報)の喪失、一部球団の不可解な人事…。
球場に通えば通うほど、たくさんのハテナが出てくる、そんなシーズンでした。
従来であれば、そうしたハテナは、直接球団代表やスタッフさんにぶつけて、お返事をもらって、納得していたのですが、今年はぶつけても「リーグの方が…」と受け流されることがままありました。
「そんなんチームで判断できる話でしょ?」というような内容が「いや、リーグが…」となっていた感じです。
ならリーグに気軽に話ができるかというとそういう環境もなく、ふつふつとストレスをため込む、そんなシーズンでした。
(いや、そもそも球団代表に簡単に話しできるんかい!という話ですが、独立リーグとはそういう環境です。)

事件勃発

そんな状況でひとつ象徴的な事件が最終戦の後に起こりました。

最終戦を終えてNOL黒田CEO(リーグ代表)の挨拶の中でのある発言が物議を醸します。
「一球速報はアマチュアのものだからプロは使うべきではない。」
(文脈を考慮した黒田さんの話はまた後ほどします)

いくつか前提の整理をしておきます。

まず第一に一球速報とは昨年までBCリーグで採用されていたテキストベースでの配信サイトです。
NPB(いわゆるプロ野球)でいうところのスポーツナビのようなものです。
チームの応援や観戦体験を充実させるためには欠かせない物でしたが、今シーズンのNOLではそれがなく、ファンも試合が振り返れなくて、ストレスが貯まっていました。

続いて第二に、黒田さんがファンの前に姿を現したのは、(自分の記憶が確かなら)開幕戦以来です。
当初、自分は頻繁にスタンドに来ていただけると期待はしていましたが、リーグ代表の職務とご病気の影響もあってか、それは叶いませんでした。
なので、ファンは聞きたい事も聞けない、言いたいことも言えない、そういう環境下にありました。

リーグ戦が一年終わった、その最後の黒田さんの挨拶での発言がファンのなかのマグマだまりを刺激してしまったのです。
自分は会場にいましたが、発言の瞬間ギョッとしましたし、周りを見渡すと不満を露わにしているファンも散見されました。

その中で震源となったツイート。

実際に、球場から帰りの車内でもその話でもちきりで、自分も「真意はどうであれ、思っても言ってはいけない言葉」と憤っていました。
それほど、ファンにとって黒田さんの発言は強い言葉だったわけです。

この「プロ/アマチュア問題」は一部の独立リーグファンにとっては、かなりデリケートな話題で、独立チームを「プロ球団」として誇りに思っている人からすると、「それじゃ今、一球速報を使っているチームはアマチュアだというのか?」という発想に至ることが推測されます。
(「独立リーグはプロなのか」という論点は話すと長くなるので、今回は割愛します。)
黒田さんの発言は行間を好意的に解釈しないと、言葉が一人歩きしヘイトを生み出しうる発言だったのです。
その点、黒田さんはファンの機微に対する理解と配慮が足りなかったなぁとは思います。

行間を読む試み

ただ帰宅し、少し冷静になりしっかり文脈判断はすべきだなぁ、と思いBOSSKにて今一度、黒田さんの挨拶を確認しました。

下は一連の発言。

例の発言の前後の文脈として、「独自の新しい事をやってきた」→(その一つの例として)「一球速報はアマチュアのものだからプロは使うべきではない。という判断で、様々な意見を取り入れて試みた」→「できなかったことに関してはどんどん改善していかないといけない」という事が述べられていました。

黒田さんの発言を好意的に拡大解釈する(これが真意である可能性もある)のであれば、「一球速報はもともとアマチュア野球の速報を主にしていたものを独立リーグがプロだけれども利用していた。しかしプロとしてそれでいいのか、もっといい物が提供できないかという問題意識のもと、やはり独自のものを作らないといけないのではないかと考え、動いたけれども上手くいかなかった」という解釈もできそうだなぁと思いました。

一球速報の話が、メインに据えられているわけではなく、あくまで一例に過ぎなかったので、上記の発言では真意を自分は判断できない、という結論に達しました。
ただ、現場での反応から、ファンの地雷を踏んだという事実はまぎれもない事実です。

騒動の終結?

この騒動に関して、黒田さんはすかさず反応をされます。

文脈で判断して欲しい旨、時間の関係で言葉足らずになった旨が、滋賀ファンのかっしーさんとのやり取りで語られています。

自分はこのやり取りを見て、これこそが必要だったのだと改めて思いました。

リーグとファンの対話

自分はNOLのスタンドにいて、自分も含めファンのストレスを感じており、その声はしばしば耳に入っていました。
その様を見て自分は7月くらいからずっと「黒田さんがスタンドに来たら一発で解消する」と言い続けていました。

これは黒田さんに、問題の解決や責任を追及するためではありません。
現在地の確認と問題の共有による明確化のためです。
自分たちのリーグがどこにいて、何をしようとしているのか、それすらも分からないからストレスを感じるのです。
ファン(少なくとも自分)にとって大事なのは「できる/できない」の話ではなく「現状をどう見て何をしようとしているか」なのです。
それが分かるだけで、ストレスの8割は解消すると思います。
これは私見ですが、たぶんSNS上のNOLに対する否定的な意見も、それだけでかなり減ると思います。

例えるなら、家族で遊園地に遊びに行って、お腹が空いたからちょっとご飯買ってくるねと親がどこかに行き、不安に取り残されている子供。
この例えの親が黒田代表で、子供が今シーズンのNOLのファンです。
この子供にとってのストレスは、確かに空腹もありますが、親がいない事なのです。
ふと横に目をやると、近くの売店で買ったサンドイッチをおいしそうにほおばる家族が目に入ります。
自分の親はステーキを探しに行ってくれているのかもしれませんが、そんなのは子供は知る由もありません。
ただただ不安でストレスに苛まれ、癇癪を起しそうになっているのです。
一緒に遊園地を楽しみたいのです。

だから、もし、この文章を黒田さんが読んでいたら、1-2か月に1回だけでもいいですから、スタンドに足を運んでみてください。
現場にいるファンの声を聞いてみてください。
たしかにファンは子供なので親の事情は知る由もありません。
無理難題を言うかもしれません。

ただ親には親の事情がある。
それはファンも大人なので重々承知しています。
やりたい事が出来なくて忸怩たる思いもあるかもしれません。
それに対して、なんでできないんだ!と現状責めることはしないと思います。
繰り返しますが大事なのは「今をどう見ていて、今後どのようにしたいか」なのです。

小さなリーグだからこそ、ファンはリーグを支えたいというロイヤリティを持っています。
程度の差こそあれ、貢献したいと思っています。
それがNOLファンの機微です。

ただ、ファンが球場正面玄関から入り、黒田さんに会いに行くことはできません。
ですので、来シーズンはぜひファンに会いにスタンドまで来ていただきたいものですね。
リーグとファンでNOLをより良い、世界に誇れるリーグにしましょう。

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