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海から森へのラブレター💌

あめつちの便り「土の音」🌺
【海から森へのラブレター②】

    臨海自然体験に集う子らがヤス(矠)を持ったとた
ん、目が輝き出す。各自工夫をして水中に素潜りし、海藻が繁茂する海中林を縫って魚を追う。

「やったーっく初めて命がけで魚を取った子の誇らしげな笑顔。母なる海と共に生きたころの息吹が蘇る。

    私たちの内に脈々と流れる血潮の濃度を幾分高めると、海水の化学組成と大差はない。

動物の「赤い血」の化学構造の中心には鉄があり、「緑の血」とも呼ばれ血球素の合成に深くかかわると考えられている葉緑素の中心にはマグネシウムがあり酷似の化学構造を持つ。

呼吸する動物は、葉緑素を持ち光合成をする植物なしでは生きられない。
    地球上の酸素の8割は植物プランクトンや海藻が供給すると言われ、魚の餌場であり産卵場、隠れ家となる藻場に群生するアマモが酸素を放出する能力は熱帯雨林の5倍。地球温暖化をもたらす炭酸ガスも吸収する。

    私たちの食卓を賑わす魚介類が生育するには植物プランクトンが繁殖し、動物プランクトンが増えて稚魚が育ち、イワシやプリへと食物連鎖が適度の平衡を保って広がることが必要だ。

光合成に必要な葉緑素が生合成されるためには鉄分が不可欠。
    森の中にたい積した枯れ葉が分解されてできる腐植土層に含まれる有機物と無酸素部位で生成した鉄イオンが結合して "フルボ酸鉄" ができ、これが河川や海に流れ込み植物プランクトンや海藻に摂取されることが明らかになってきた。

    地球上の約7割を占める海の表層のうち陸の縁を中心に植物プランクトンが繁殖しているのは、必要な滋養分が豊かな森から来ていて魚介が寄りつく条件があることを示す。

江戸時代に「木一本首一つ」と言われ "魚付林" が守られたゆえんだ。コンクリートで固め尽くした川と海には多様性に満ちた生命の胎動はない。

    野生動物の生息場であり私たちに木の実や山菜を分け与え、天然のダムとして計り知れない恩恵をもたらしてきた地球上の森が危急存亡の秋を迎え、日本企業による伐採が進む遥かタスマニアの原森までがトイレットペーパーにされている。

足元では金沢市犀川上流の辰巳ダム建設計画によって、先祖の土地と伝統を守り森や川を敬い多くの動植物と共存してきた善良な農民の生活権が犯されんとしている。

バス2台が動く程度の発電量しか持たない、莫大な予算を費やすダム建設と引き換えに、犀川渓谷の自然環境と世界的文化遺産として昔ながらの機能を保つ辰巳用水を壊す愚策を、市民の「自然文化学習地域」として末代に誇れる振興策に転ずることが最善の英知だ。

    畠山重篤さんたちの植林活動では、魚が戻り増えていることが確かめられ、水産庁でも「魚を育てる森林の働き」を重視しだした。

広い効能で知られる「森林浴」とともに「海気浴」がある。
    海中林から発するフィトンチッド・(揮発性芳香植物体)の香りを心身に取り入れ、汗を流す。

私も 山と海の森 に漂う馨(かぐわ)しい グリーンノート(青葉の香調) の風に感謝を込め、山に木を植え仲間と森を育てよう。
   (日曜エッセー「道標」北陸中日新聞1994.5.22)

    ☆われら自然派【森は海の恋人】
 : https://youtu.be/w3m2Y_zD94c

    ☆自然はぼくらの教室だ【無人島生活体験】
 : https://youtu.be/Kjo60csne5A

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