粒は丸い方がよい

小学生のころ、友人の水筒には麦茶が入っているのにわが家は渋くて黒い薬草茶が入っていた。
いつも、渋いお茶を飲んでいたわたしは、友人の家に遊びに行ったときに出されるあまい麦茶を「なんか美味しい気がする~」と飲んでいた。

大学生になり一人暮らしを始めたある日、いつものようにスーパーで食材の買い出しをしていたら、ふとこの時のことを思い出したので麦茶パックを買って帰宅した。
よくある、青いパッケージのやつだ。
わくわくしながら帰宅し、さっそく煮出して、あの時の甘さを思い浮かべながら飲んでみた。
「あれ?」
うーん、なんか違う。いや、麦茶なんだけど。なんか、えぐみ?うん、えぐみがある。

甘いと思っていた麦茶は何となくえぐみがあり、うーん、これは思い出補正だったな、とすっかり飲む気をなくしてしまった。
ほぼ手付かずの残りの麦茶パックは、後日あそびにきた友人にあげた。

それから数年、大学生活も折り返しに入ったころ、バイトで品出しをしていた時にたまたま麦茶パックを見かけた。
その名もつぶまる。
たしかに、粒が丸い。名前、かわいい。
今のようにスマホが普及していない頃なのでレビューの確認も出来ないまま、試しにひとつ買って帰った。

やかんに水を入れて、麦茶パックをひとつ。
火にかけて沸騰するのを待つ。
数分待てば、しゅわしゅわ、しゅわしゅわ、甘い香りの湯気。
甘い香りに、ついつい期待してしまう。
まだ熱い麦茶をマグカップに注ぎひとくち。

あ、おいしい。

それからというもの、家では必ず麦茶を沸かしておくようになった。

大学を卒業して、もうすぐ十の位の数字が変わる年齢に差し掛かっているが、わたしは飽きもせず粒が丸い麦茶を飲んでいる。
ちなみに、割れてるのは未だにだめ。
つぶまるを見かけなくなったので、佐賀の会社の丸粒麦茶を愛飲しているのだけれど、これが安くて美味しい。
パックになっていないので、お茶パックに詰める必要はあるけれど、濃さの調節もできるし、別に手間でもなんでもない。
夫も、なんかこの麦茶おいしいね、と言っていた。
だよね〜わかるわかる。

さて、先日実家に帰省したとき、母に丸粒麦茶を勧めたところ「あら、わたしもいま家に置いてるのよ~」とのこと。
しかも「麦茶ってなんか苦手だったけどこれは美味しいわね~」なんて。
つくづく親子だな~と、笑ってしまった。

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