徒然と怪異 自動ドア

アニメ呪術廻戦を見て、思い出したこと。

住んでいるマンションは幾つか自動ドアがあり、セキュリティが結構厳しい。一番外に面した自動ドアのうち一枚は、越してきてから暫くして、不調を来たしたようで、何度か修理の業者が来たあと、いつのまにか貼り紙を貼られ、数ヶ月ずっとロックをかけられたままになっている。

その、「故障のため締め切っています」と貼り紙をされた自動ドアが、時折、開いているのだ。

最初は握り拳くらいで、掃除でもしていて開けたのかなと思った。

次はそれよりももう少し広いくらいで、猫が通れそうな幅。

次は人が一人、なんとか身体をねじ込んで入れそうな幅。

マメな管理人が換気でもしているのだろうと思って、開いているとは思いつつ、特別気にする事もなかったが、ある日、たまたまエントランスで顔を合わせた管理人のご婦人が、挨拶の後、すれ違うが早いか

「いやだ、また開いてるわ」

と言って、その一枚を閉めにかかった。

つまり、今まで開けていたのは管理人ではなかったのだ。

内側に、鍵のサムターンがついた自動ドア。

それをわざわざ捻って、錠を開け。2m50cmはある外用の、ガラスの重みだけでも相当重い、取手のない扉を。力を入れて、引き開けたヤツがいるという事だった。

動き出せばそうでもないが、動くまでが大変なのは多くの方が知っているだろう。

その扉を、ほんの少しだけ開けるイタズラに、労力に見合う価値があるはずがない。

その自動ドアは、動かなくたって構わないような立地だった。エレベーターから一番近い自動ドアは不調なく動いているし、ポスト近くのエレベーターを潜ったら、少し歩いて常に解放されている方から出入りしたっていい。

いやあね。と、重い扉を、壁の方から寄り掛かるように押す管理人婦人を手伝いながら、私は周囲を見たが、この自動扉は建物の中からは見えない所にあった。

なるほど、監視カメラからも、死角だ。

それでも、動かない自動ドアを勝手に開けるメリットがあるとは思えなかった。

人のイタズラだろうとは思っている。

だが、まだ扉が稼働していた時。目に見えない何かを挟み込み、止まるような動きをする様子を見た。

虫か何かに反応して、勝手に開閉しているのも、度々見た。

それらは単なる老朽化で、扉を支え滑らすレールや車輪の不調によって、途中で止まるようになったと考える方が、現実的ではある。

しかし、目に見えない何かが、このマンションを出入りしていて、時折自動ドアに挟まったのであったら。

封鎖したその扉からしか出入りできない何かが、未だに出入りしているとしたら。

私はいつか、その扉がひとりでに開く様を見られるのではないかと思っているが、今日もまた、開くはずのない扉は、少しだけ開いた状態で、コンビニ帰りの私に発見されるのだ。

行く時は、閉じていたのに。

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