社会人受験 | 独学とアンチパターン

はじめにひとつ質問をさせてください。

これは独学にまつわる記事です」と聞いてあなたはどのような内容を思い浮かべるでしょうか?私はよく以下のような主張の記事を見かけます。

●「○○を独学するためのおすすめツール・方法論を紹介します!」
●「成功するためには学校に行くな。とにかく独学だ!」
●「偏差値○○から独学で逆転合格したワタシのマル秘メソッド」

残念ながら、このような主張はいずれもこの記事には含まれていません。この記事の内容は:

● 1.私にとっての「独学」の構成要素をマトリクスにして、
● 2.できるだけ自分自身の具体例を含めてアンチパターンを整理し、
● 3.読者の独学ライフがマイナスの状態からゼロに近づけるようにお手伝いする。

というものです。したがって、対象読者は:

● 私と共通の背景・ゴールを持つ受験生(詳しくは自己紹介目次をご覧ください)

に限られます。もちろん受験勉強以外の独学にも応用できる考え方はあるかもしれませんが、万人受けする一般論を述べようとするものではありませんので、予めご了承ください。

以下ではアンチパターンを 🔥 のマークで紹介していきます。

1. 独学の全体像

私にとっての独学の構成要素は、「習熟度ごとの時期」「マクロ・ミクロ」の軸によって以下のように分類されます。なお、1年ごとのPDCAサイクルは単位が大きすぎるので入れませんでした。

いずれのレイヤも基本的にはPDCAサイクルの繰り返しです。

全体に関わるアンチパターンは以下の通りです。

🔥「独学だけやりがち」

● どういうことか
適切な教師をとらずに独学だけやろうとする。

● なぜだめなのか
独学の最大の欠点は「すべての課題を自分で解決しなければならないこと」ですが、教師なしではその解決方針がとんでもない方向(あるいは ”トンデモ” な方向)に逸れてしまったとしても自覚が困難です。すなわち、独学がダメというよりは解決の方向性を誤ってしまうのが良くないということです。

● 私はどう改善したか
長期スパンでは、予備校の模試を受けることで方向性を誤っていないかどうか判断してもらうことにしました。これは特に国語・英語の作文の採点をしてもらえることのメリットが大きいです。

短期スパンでは、とにかく模範解答を写経することが自分にとってのアンサー、つまり方向性を誤らないための方法でした。私は仕事でプログラミングをしていますが、プログラミング学習において写経というと「自分で考える習慣がつかない」だとかで何かと過小評価されがちです。確かに考えなしに文字を写すだけの「写経」は論外だと思います。そうではなく、模範解答という教師を自分の中に取り込んで、以後の学習における誤り識別精度を向上させようとする、そんな行為としての写経が私にとっての改善方法でした。

ちなみに、私の場合は経済的な理由により残念ながら予備校等には通ってはいませんが、もちろん経済的に余裕があれば通うのがベストだろうと思います。それはもちろん予備校講師は教えることのプロであるからに他なりません。

🔥「ライバルの生態を無視して孤高にやりがち」

● どういうことか
他の受験生がどのような勉強をしてきているのか知らずに進もうとする。

● なぜだめなのか
他の受験生はどのように・どのくらい頑張っているのかというある種のセオリーを知らないと、どうしても「自分では頑張っているつもり」になってしまいがちです。

私の実例として「模試の重要性の過小評価」という問題がありました。受験勉強の最初期、私は模試の重要性が分からずに「問題集をやっていれば受かるだろう」と高をくくっていて、模試を受ける気が全くありませんでした。トップ進学校の生徒が1ヶ月に何度も模試を受けているという事実をようやく知ったのは、重い腰を上げて初めて模試を受けたその会場ででした。トップ進学校の生徒がそれだけの努力をしてもなお不合格となるような状況の中で、どうして自分がこの程度の努力で合格できるのか(いや、できない)という事実にようやく気づいたのです。

もちろんこれは一例に過ぎませんし、それに模試をたくさん受けたからといって合格できるわけでもないでしょう。ただここで私がクリアに理解したのは、守破離の「守」も知らずに進むのは百害あって一利なしだということです。

● 私はどう改善したか
月並みですが、合格・不合格体験記や受験参考本・記事を読むことが私にとっての解決策でした。ただ、これらのコンテンツは「主語が大きすぎる」「生存バイアスがかかりすぎている」などで正直眉唾ものの内容が多すぎてウンザリしますし、そのことも情報収集の意欲を削いでアンチパターンに陥る大きな原因ではあります。ただ情報の取捨選択は自分が注意すればできることですし、このウンザリを乗り越えてでも「守」を知るメリットは大きいものでした。

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2. 長期スパン:3ヶ月ごと(模試ごと)

最もマクロな単位では、3ヶ月ごとにPDCAサイクルを回します。なぜ3ヶ月かというと、私の場合はこれがちょうど模試と模試の間隔くらいなので振り返りにちょうど良いからです。なので後述の「2週間ごと」との違いは単にPDCAのスパンが違うだけではなく、こちらは模試というマイルストーンを学習計画にどう活かすかという話だと考えていただくとよろしいかと思います。

この範囲に関わるアンチパターンは以下の通りです。

🔥「模試直前の過ごし方を軽視しがち」

● どういうことか
模試直前期になってあれもこれも復習したくなるものの、結局何をやればいいか決められずに当日を迎えてしまう。

● なぜだめなのか
試験直前には試験直前だからこそ効果を発揮する勉強をするべきですが、そのためにはそれ以前から準備をしておく必要があります。試験直前になんとなく思いついたものに手を付けるだけでは、試験中・試験後に「あれもやっておけば良かった」と後悔が残ってしまいます。私の実例として、初めての模試の直前に何をやればいいか分からず、それでも「何か試験前っぽいことをしよう」と思って問題集に付属する公式集を眺めて過ごしていましたが、これは自分固有の弱点の解決に繋がらないという点において全くもって無意味でした。

● 私はどう改善したか
私は日々の学習ノートを Evernote に記録しています。具体的には「問題を解いたノートの写真」「その問題のポイントの一言要約」を記録しています。試験直前にはこの一言要約の一覧表(いわゆるチートシート)を生成・印刷して見返すようにしています。このチートシートを読めば問題のポイントが網羅的に思い出せますし、もし思い出せなくてもノートの写真を見返せば良いので非常に便利です。

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3. 短期スパン:2週間ごと

2番目にマクロな単位では、2週間ごとにPDCAサイクルを回します。なぜ2週間かというと、これ以上短い単位だと振り返る内容がほとんど無くなってしまうからです。また、プロダクト開発プロセスのフレームワークであるスクラムにおいて、スプリント(開発を行うひとつの連続した期間のこと)のタイムボックスとして2週間という間隔がよく用いられるからでもあります。

この範囲に関わるアンチパターンは以下の通りです。

🔥「勉強以外の時間を雑に過ごしがち」

● どういうことか
勉強時間は計画するのに勉強時間以外を計画しない。

● なぜだめなのか
受験勉強のモチベーションが下がる要因は勉強以外のところにたくさんあります。私の実例として、モチベーション低下要因は「SNS」「お金」でした。

(SNS)受験生の目標は1年にただ1回の入学試験に合格することであるので、合格できれば1年間の成果は100ですが、不合格なら1年間の成果は0ということになります。さすがにこれは過度にプラグマティックな考え方ですが、受験勉強中はどうしてもこうした極端な考えが頭をもたげてきます。そんな状況でSNSを開いても「〇〇オリンピック入賞」「超有名進学校・進学塾所属」なんていう受験生の眩しい投稿にただただ圧倒されたり、逆にタイムラインに流れてくるネガティブな投稿には精神力を削られたりするばかりでした。

(お金)当然ですがお金のやりくりには精神力が要ります。お金の不安というのは受験勉強にとってマイナスでしかありませんが、かといって放置してもいられません。この緊張状態が大きなストレス源でした。

● 私はどう改善したか
SNSによるストレスは、使い方にルールを決めることで解決しました。私の場合、例えばツイッターなら「いいねする条件」「リツイートする条件」などを定めています(具体的内容はさすがに恥ずかしいので書きませんが…)。SNS上のアクションというのは好奇心と引き換えに精神力を消費する行為なので、このルール付けによってストレスが激減しました。

お金によるストレスは、お金のことを考える時間を明示的にスケジュールに入れることで解決しました。月に1回だけお金のことを考える時間を取り、それ以外の時間では絶対に考えないという方法です。

🔥「障害の解決をサボりがち」

● どういうことか
PDCA の A (Action) をやろうとしない。すなわち問題点を改善するための手を打たずに放置してしまう。

● なぜだめなのか
これは独学アンチパターンというよりは PDCA アンチパターンに近いかもしれません。これがなぜだめなのかは自明だと思いますが、それなのになぜ陥ってしまうのかという理由は色々あります。私の実例として、原因としてありがちだったのは改善策を実行可能な単位で設定していないからでした。

● 私はどう改善したか
例えば英語の学習計画の振り返りで「英文法を優先的にやる」という改善点が出たとします。しかしこれだけではまだ実行可能の具体性があるとはいえず、いくらでもサボる口実ができてしまいます(私がそうでした)。これをさらに「土曜の15:00-18:00に英文法の問題を2問やる」くらいまで具体化して、あとは当日を迎えたらただそれをやるだけ、という状況を作るようにして少しずつ改善してきました。

もちろんこれは勉強そのものだけでなく、例えば「部屋のゴミを捨てる」とか「靴を洗う」とかいった勉強以外の知的活動にも当てはまります。

🔥「好きなときに好きなだけやりがち」

● どういうことか
気が向いたときだけ大量に勉強してしまう。習慣化されていない。

● なぜだめなのか
まず当然ながら勉強に気が向くこと自体は何も悪いことではありませんし、内容を深掘りする学習は大事だと思います。問題なのは学習計画をこのような極端なやり方に全振りしてしまうことであって、このようなやり方は「気が向くかどうか」「モチベーションが高いかどうか」という不安定な要素に依存しているため、ごく短期間の見積もりですらほとんど不可能です。私の実例として、受験勉強を初めてからの数ヶ月はこの「好きなときに好きなだけやる」方式で勉強していましたが、どれだけ勉強しても先が見えない恐怖ばかりが募って、その結果肝心要のモチベーションが阻害されてしまうという悪循環に陥っていました。

● 私はどう改善したか
いま自分が大事にしているのは、モチベーションが高まるような環境づくりは大切にしつつも、モチベーションの高さに依存した計画はしないことです。むしろモチベーションが低いときを基準に見積もり・計画を行うことで、現実的な長期計画が立てられるようになったように思います。ただしモチベーションが高いときはそれを抑圧しすぎないように、一時的に「残業(予定時間を超えて勉強を続ける)」したり時間割を組み替えることもあります。

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4-A. 毎日の学習(未習期)

毎日の学習では、習熟度によってやることが分かれます。

まず最初期には、高校で習わなかった科目をゼロから勉強しなければなりません。私の場合は数学B・数学III・物理・化学・世界史がこれに該当しました。この時期は、ノートに要約を書きながら教科書を読み進めつつ、章末問題に取り組みました。

この範囲に関わるアンチパターンは以下の通りです。

🔥「はやく応用問題をやりたくなりがち」

● どういうことか
最初から応用問題ばかり」やろうとする。

● なぜだめなのか
基本問題を疎かに最初から応用問題ばかりやろうとするのは、単に「簡単なことができていないのに難しいことができるわけがない」という点で不適切です。もちろん応用問題に取り組むことは学習対象への多角的な視点を養うという意味では重要ですが、それは基本問題の訓練を十分積み重ねてからの話であって、少なくとも「この(応用)問題は何を言ってるのか分からないなあ」という知識レベルのうちは応用問題の効果は薄いというのが私の体感です。

私の実例として、学習の最初期にはよくこのアンチパターンに嵌りました。最初期の「他の受験生は何年も前に学校で習っていることなのに自分はまだ知らない」という大きな学力的ビハインドがある状況下で、はやく基本問題を抜け出して応用問題をやりたいと焦って空回りしてはストレスを溜めてばかりでした。

● 私はどう改善したか
とても基本的なことですが、まず最初に基本問題に十分取り組み、その上で基本問題・応用問題を行ったり来たりしながら進めるようにしています。

また、この時期のストレスは勉強それ自体によって解決することはかなり難しいように思います。上述の🔥「勉強以外の時間を軽視しがち」アンチパターンにも書いたように、勉強以外のストレス源もうまくコントロールしながらこの時期を乗り越えていけると良さそうです。

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4-B. 毎日の学習(教科書完了期)

教科書を一通り完了したら、複数分野をまんべんなく繰り返しながら問題集に取り組みました。なぜひとつの分野に集中せずに複数分野を反復するのかというと、そのほうが記憶に染み込みやすいからでもあり、そうしないと片っ端から忘れてしまうからでもあります。

このような手法を「間隔反復」と呼ぶそうですが、これは以下の記事で用語が紹介されていたのを執筆中に見かけて知りました。

また、この頃から実際の過去問にも少しずつ取り組み始めます。なぜこの時期に過去問を始めるのかというと、できるだけ早く過去問の難易度感を掴んで見積もり精度を上げたいからということと、これより早い段階では「過去問の問題文が読めない」のでトライする意味が薄いからです。

この範囲に関わるアンチパターンは以下の通りです。

🔥「ノートに思考過程を書き残すのをサボりがち」

● どういうことか
問題を解くときにノートに思考過程を書き残さずに進めてしまう。

● なぜだめなのか
まず「最も経験値を得られるのは問題を解くときではなく振り返りをするときである」という前提があります。しかしノートに思考過程を書き残しておかないと、思考過程を振り返ることができなくなってしまいます。数学などでは計算・証明の過程を論述する必要があるため比較的このアンチパターンに陥りにくいですが、マーク式問題や国語の作文ではこれをやってしまいがちです。

● 私はどう改善したか
解決策として(そのまんまですが)、ノートに思考過程を書き残すようにしています。さらに思考過程を書き残そうとする行為それ自体によっても、現代文で特筆すべき効果がありました。私の実例として、ずっと現代文の学習がこのアンチパターンに陥っていて、つまり思考過程をろくに書き残すことなしに解いていたのですが、当然振り返りがうまくできなくて苦労していました。そんなときに思考過程の書き残し方を知りたいと思って現代文の参考書を読んだところ、現代文の解き方にも一定の型があることを知ったのです。これも今思えば当然の事実なのですが、とにもかくにも無知な私にとっては良い副作用でした。

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4-C. 毎日の学習(過去問期)

過去問に歯が立つようになってきたら、分野別の学習を減らして、実際の過去問や模擬問題集に取り組みます。なぜ分野別の学習を減らすのかというと、入試問題には分野融合問題が多いため分野別にやっているとその実戦感覚が抜け落ちてしまうからです。実際このような分野横断的な対策は、予備校による分析資料でも重要性が述べられています。

同時に、この時期から「単語帳」「公式集」「化学反応式集」のような浅く広く知識を復習する学習をルーチンに入れます。なぜこの時期からこのような単語帳学習を始めるのかというと、過去問のような応用問題の演習には時間がかかるため学習サイクルが長くなりやすく、そのぶん長期間触れられずにホコリを被っていく知識が増えるからです。

この範囲に関わるアンチパターンは以下の通りです。

🔥学習内容をコロコロ変えがち

● どういうことか
例えば「昨日は数学の過去問を1回だけやってみて高得点をとれたから、試験直前は数学は全くやらなくていいや」などと、「不十分なデータ」「耳ざわりの良いデータ」のみに基づいて極端な意思決定をし、その結果学習内容が安定せずにコロコロ変わる

● なぜだめなのか
不十分なデータをもとに意思決定をしてしまうことの危険性については、次の記事が詳しいです。

また「耳ざわりの良いデータ」とは読書で例えるとページ数のことです。どれだけたくさんのページをめくっても知識が定着していなければ意味がないのと同様に、どれだけ過去問で高得点を取れても本番で得点できなければ(そのくらい安定していなければ)意味がないということです。すなわち定着度こそが本番に直結する指標であるわけですが、その定量評価は本当に難しいです。

このアンチパターンに関する私の実例として、1年目のセンター試験で起きた「センター数学の悪夢」というのがあります。

このときの私は、試験前1ヶ月の得点推移データから見るに全科目8割以上を取れるはずだと慢心していました。なかでも数学は「昨日は数学の過去問を1回だけやってみて高得点をとれたから、試験直前は数学は全くやらなくていいや」と、不十分で耳障りの良いデータに誘惑され、極端にもほぼ無対策のまま本番を迎えてしまいました。その結果は、全科目8割以上のなかで数学IIBだけ6割を切ってあわや足切りという最悪の結末。これは本当にトラウマで、その後何度か悪夢にうなされました。

● 私はどう改善したか
上述のように、知識の定着度について真に定量的な自己評価をしようということ自体が非現実的でした。そこで私は過度な定量評価を諦めて、一度やると決めた学習はしばらく続けるという最低限のルールだけを守るようにしました。これによって学習内容の取っ替え引っ替えで生じていた(大きな単位の)コンテキストスイッチのコストが解消されて、総合的には良い方向に進んだと思います。

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5. さいごに

正直、私自身の独学技術もまだよちよち歩きの状態なので、ここに書いた内容も1年後に振り返ってみたらまだ修正点が出てくると思います。しかし少なくともこの記事の内容くらいは、3年前の受験勉強を始めたばかりの自分が身につけてくれていたら…と思うようなものをまとめてみました。

今後も適宜アップデートしてより良い記事にしていけたらと思います!

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oimou@受験生

仕事をしながら東大受験を目指す、東北在住の20代男子。 商業高校→大学進学→退学→�IT企業就職転職。

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