ワイルド・スピード/ジェットブレイク 〜カインとアベルのその先は〜

1.ヒップホップにどハマりし、ワイスピ初鑑賞を決意

 突然、ヒップホップにハマってしまった。私は幼い頃、イケイケの爆音の中カーレースをする様子を実家のTVで眺めた程度しかにワイルド・スピードの知識がない人間である。それなのに何故、ワイルド・スピードを観に行くことにしたか、それはたまたま聴いたリル・ウージーのGo Offという曲が最高だったからだ。音楽陣の豪華さでIMAXを選んだ。

 結果として最高の体験をすることができたので数時間前の自分に感謝したいと思う。

2.カインとアベル方式の脚本へのトラウマ

 早速、あらすじに移る。おそらく第一線から引退し、妻(レティ)と子供と暮らすドム(ドミニク)がとある兵器の回収の依頼を受ける。兵器は世界のパワーバランスを変えてしまう力がある。しかしその兵器を狙うのは実の弟で……。ドムは無事、兵器を回収し世界の平和を守れるのか。

 正直、このままストーリーが進んでいくのなら観るのを辞めようと思った。私はカインとアベルのストーリーラインが苦手である。どちらかが絶対であり、片方は追放を受ける。これほど悲しいストーリーはない。恋愛映画も当て馬を好きになり、ロミオとジュリエットはティボルトを好きになる性格の人間には辛すぎる。しかし、音楽を目当てに固唾を飲んで見守った。そして映画は当たり前に私の想像を超えていく。

3.家族という概念

 この物語で印象的なのは家族の扱いである。第一に主人公と父親、ミア(妹)弟の家族を見ていきたい。冒頭、ドムの父親はカーレースの事故で亡くなっていることがドムの回想で示唆されている。それが弟による意図的な事故であることも明かされる。事実を知ったドムは弟であるジェイコブをホームからカーレースにより追放する。ここまでが過去の出来事である。しかし、その実父親はカーレースで八百長する為にジェイコブに頼んで自ら望んで事故を起こしたことが語られる。理不尽に兄を憎んでいたと思われた弟にも理由があったのである。仲間に囲まれるドムと各々の目的のためだけに団結しているジェイコブの対比は観ていて痛々しいほどだった。

 第二にエルの家族について見ていく。兵器は起動するための暗号が必要とされているがそれは作成者の愛娘であるエル自身のDNAである。間違った方に使われないようにということであったが些か不用心な両親であるようにも思われる。娘のDNAを暗号にすれば彼女が追い続けられることを考えられなかったのだろうか。

 ここまで考えて、ふと一つの解釈にたどり着いた。この二組の親子は完璧ではない。誰だって、親だって完璧ではないけれど、愛していた。そんなふうに捉えることも出来るのではないだろうか。しかし人生を振り回された子供だけがこの事については賛否を問えるのだと思う。

4.爽やかなる追放、ホームはここに

 最後は更なる巨悪の台頭により兄弟は和解する。少し物足りない気もしたが諦めずに手を伸ばし続けた兄と妹の声が届いた瞬間は思わず感涙してしまった。また、かつて二人で並んで走ったあの瞬間と今二人で並んで走る意味の変化がこの上なく美しく感じた。全員の活躍により事件が無事終幕したあとジェイコブは自分の人生を再び走り出す。その時、どこまでも続く道できっと彼は追放された時とは同じような表情はしていないだろう。どこまでも続く青空とかつての夜の真っ暗な道の対比が非常にさわやかで、幸せだった。

5.最後に

勿論音楽も宇宙服を着たバディもカーチェイスシーンも、磁石アクションの後派手さも伏線回収も更には前作からのゲスト出演も語り足りないところはままあるが、難なく予想を裏切り最高を見せてくれた作品には感謝したいと思う。

とりあえず一作目からワイルド・スピードを観ます。

 

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