オイ

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オイ

おつまみ作家。   https://oisiso.com   https://instagram.com/oi_petit/ 10年以上書き続けてきたブログの中から選出したエントリをこちらへ。

最近の記事

空中戦

よく晴れた日、草っぱらに寝転がって京の町屋の写真集を眺めていた時の話。 少し目が疲れたので空を仰ぐと、突如視界にカラスが入ってきた。 続いてトンビがやってきた。 どうやら両者はケンカをしているらしい。 トンビのほうが体が大きく優勢な様子。 カラスは下から突き上げられそうになり、思わず体を反らす。 すると今度は背後に回られ上から押し付けられそうになる。 防戦一方の展開だ。 ところが次第にカラスは戦い方を変えはじめ、なんとトンビを一方的に攻め始めた。 カラスの作戦はこうだ。

    • 解決!【上がらない】漏電ブレーカー【落ちる】

      沖縄県に新居を構えた友人の家に遊びに行ってきた。 本日も沖縄は晴天ナリ、と言いたい所だったがあいにくの大雨で……。 だから室内でまったり過ごしていると、突如停電になったのだった。 「雷も鳴ってないのになんでやろ?」と友。 念のためブレーカーを見にゆくと、電気が落ちた原因は雷ではなく漏電ブレーカが下りた事によるものだった。 「ヒエエ、この家漏電してるぅ!」狼狽甚だしい氏。 そこで我も現場に向かい、懐中電灯片手に状況確認する事となった。 とは言っても私もまったくの素人で

      • この店はお酒も売っている

        普段晩酌用の酒は地元でもっぱら購入しているが、銘柄がマンネリ化してしまったのでオンラインで購入してみる事にした。 でもハッキリ言って、ロクな酒屋が無いんだネットには。 たとえば激レア、とまではいかなくてもわりかし美味しい通人の間で知られる銘柄、といった酒の名前を検索して上位に表示されるのは、 例のオンラインショッピングモールにある店で、堂々とバカバカしいプレミア価格設定をした上で、配送には時間はかかるわ、そもそも売り切れだわ、検索エンジン汚染甚だしい店ばかりが立ち並んで

        • とうさん

          「オイくん元気しとるねー」 はい 「子供は大きゅーなったやろうねー」 はーい。 「タマネギのいっぱいできとるけんがもっていかんねね」 ありがとうございますいつも。 「もーこん前はね、このタマネギばさ、父さんの全部抜いてしもうてからさ、しっこてこ怒りとばしたとよ。 最近父さんはね、なんか好かん事のあれば庭に植えとる花とか野菜ば全部引っこ抜いてしまうとさね、もー腹ん立って涙の出るとばい」 「こん前はさね、息子がどっかから貰うてきたヒノキの切り株ばさ、庭に置いとったと

        空中戦

          トカモツカワレルンデスカ

          久しぶりに家内と二人で買い物に出かけた。 腹ごしらえの後いざ買い物へ。 この買い物に付き合わされるのが苦痛なので同行したくないのだが、ポーターとして駆り出されてしまう。 相変わらずひとつの買い物が長い。 物を買いに来たというよりも、店員さんとおしゃべりをしに来たというほうが妥当。 まだ長引きそうなのでここはひとつ、ちょっとその辺をお散歩に…。 セレクトショップの店頭に別注スニーカーとやらが置かれてあり、やけに発色が良かったのでつい近寄って手に取った。 ためつすがめつして

          トカモツカワレルンデスカ

          三年前新宿での出来事。 出張二日目の朝、目を覚ますと体が鉛のように重たく、頭がマグマのように熱い……昨夜の酒が残っているのではないこれは、風邪だ風邪。 スマフォに手を伸ばし、近隣の病院を検索した。 地図を見ながら這うようにしてたどり着いたのは、かなり古びた、こう言っては申し訳ないが廃屋みたいな個人医院だった。 もちろん普段ならば別の所を探すが今はもう、生きているのがやっとであるほどツライ。 それにしても都会のど真ん中にこんな場所が存在しているなんてエモい。 薄く所々濁

          漁師談

          もう10年よ漁師になって。 その前はさ、建設関係にいたんだけど、50歳でクビんなっちゃって。 まあ、カミサンと二人で食べていくのがやっと、ていうかトントンだね。 油代が5年前の2倍になっちゃってさ、今だってリッター100円ちょっとだもんな。 だからさあ、油代だけで月に2万もかかっちゃうの。 で、エサ代が1回1500円でしょ、するともう、トントンなわけよ。 釣れる魚はまずアジね。 で冬は鯛やマトウダイ。 今の時期だったらイサキね。 やり方はウキ流しでさ、そうさねえ、長い時で

          漁師談

          13個

          緊急事態宣言後、次女だけが朝、小学校へ登校した。 他の子供たちは皆休校になっているものの、市の方針で今日まで小学生は登校する事になっているのだ。 彼女は今学校で机に向かいながら、気になっている事がたったひとつだけある。 それは近頃大のお気に入りであるチョコレートの安全である。 このチョコは珍しい事に、子供達全員が一斉にトリコになるほど我が家でブレイクを果たした26粒入りのどこにでも売っている箱入りのもの。 試しに一粒貰ってみると、なるほどたしかにクリーミーだ。 ひ

          ぼくのみそらーメン

          次男が友達の家に遊びに行った時の出来事だった。 お昼時になり、ではご飯を食べようという事になり、次男はその時間になったら家へ戻るよう母に言われていたのでいざ玄関に向かうと 「ばあちゃん、みそらーめんにしてよ!」 という友達の声がした。 そこでクツを履くのを止め、何気に台所を覗き見たところ、 おばあちゃんがせっせと友達のために、みそらーめんを作ってあげている光景があった。 鍋に水をためて火にかけ、袋をやぶって麺を入れ、どんぶりを出してカマボコを刻み・・・ その光景がな

          ぼくのみそらーメン

          タグを留めるな!

          子供達を連れて買い物に出かけていた妻は帰ってくるなり私にコートを差し出した。 「ちょっとコレ見て」 と。 息子用のベンチコートである。 受け取って指差された部分を見ると、防犯タグが付いたままになっている。 「いい年してやるね……」 と言えば「そんなワケないでしょう」と真顔で返ってきた。 なんでも帰宅してからこの状態に気付いたらしく、お店に電話をすると、スタッフさんが取り忘れてしまったとの事。 しかし何のための防犯タグなの、店を出る時に鳴ったでしょと聞けばプンとも音

          タグを留めるな!

          はっじっめての、骨折

          クラブの練習に出かけた長男は、その日も朝から高テンションだった。 昼下がり、学校から連絡があったので「ん」と思えば長男が足首を痛めたという連絡だった。 めっぽう腫れているらしい。 監督の経験から察するに、どうやら骨折してるっぽいので病院に向かいます、との事だった。 私としては「あ、そうなんだ」という程度の感想しかその時抱かなかった。 なぜならば、我が家の骨はちょっとやそこらで折れてしまうほどヤワではないからだ。 食事も万全だし、遺伝的に考えてもそうである。 私は子供の

          はっじっめての、骨折

          酒縁

          量販店で買い物中に見慣れぬ日本酒の銘柄が目についた。 〇関である。 〇関という酒がある事はもちろん知ってはいたものの、ここ長崎でこの銘柄を見る事はこれまでなかった。 しかも一升瓶で千円程度という安さ。 いまの時期お燗が恋しいので今晩〇関でいっちょう試してみるかと提げて帰った。 よく燗酒コンテスト金賞、など札のついた日本酒を最近見かけるが、お燗してみると妙に甘味が強く丸っこい味のするものが多い。 ところが〇関は舌上で広がりながらもキリッとしたシブさも残っており、今年のお燗

          芋ずる式

          18時を少し過ぎた頃、デパチカで買い物をしていたら突如方を叩かれた。 振り返れば70代とみられる女性がニコニコしながら立っていた。 「あのー、ドーナツ屋さんはどこにあるのでしょうか?」 と聞かれたのでフロアガイドに手を伸ばしペラペラめくって場所を突き止め教えてあげた。 「ありがとッ!」とこちらに片手を挙げたその人は、そのまま立ち去るのかと思いきや、私の目の前にビニール袋を突き出してきた。 見ればさつまいもの切れ端が一袋にまとめられているもので「見切り品」という文字の

          芋ずる式

          あの日見た景色

          男はゆっくり上体を左へ傾け、右のポケットからハイライトを取り出した。 左手の人差し指と中指を重ねて箱をトントンと叩き、せり出てきた一本に顔を近づけ、前歯でつまみ上げる。 箱をカウンターに投げるようにして置くと、同じく右のポケットから、着火回数三千回を誇るBICの黄色いライターを取り出した。 そして首を右に傾げながら「ジャッ」とヤスリを回転させる。 ところが火花が散るだけで、火が立たない。 再度「ジャッ」。 繰り返し「ジャッ」「ジャッ、ジャッ、ジッ・・・」。 つかない

          あの日見た景色

          4時間目

          クラス一物静かなA君の周りに人だかりが。 「はてどうした?」と向かえばなんと! 定規の穴に人差し指を突っ込んでみたところ、抜けなくなっていた。 みんなは、それを助けようとゆっくり引いてみたり、押したりするも、がっちり指に食い込んでいて、抜ける気配がない。 将来宇宙飛行士を目指しているR君はこう言った。 「そうだ、セッケンをつけてみよう!」 A君を手洗い場へ連れてゆき、たんねんに指の周りへセッケンをこすりつけ、少々水でぬらして泡立てた。 そこで恐る恐る定規を回転させなが

          4時間目

          イタチのキモチ

          この冬始まった現象だ。 近頃度々、屋外のゴミ箱が荒らされるので、誰の仕業かと思えば「イタチ」だった。 颯爽と現れてはゴミ箱に飛び乗り、一瞬のうちに鼻先でフタを開いて中にもぐりこむ。 その動きの滑らかさときたら、もう何十年もそうやって生活してきたかのように一切無駄がない。 初めのうちは、現れたのを見かける度、息を殺して様子を見守った。 子供たちも珍しい来客に目を丸くした。 ところが実情は、ゴミを荒らされているわけだからゴミ袋が所々破けていたりもし、ゴミ出しの際に具合が

          イタチのキモチ