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デザイナーが「見え方」だけでなく「在り方」にまで介在する。それが強いブランドを築く条件。

「デザインとは、ブランドの存在意義や提供価値といった『在り方』を伝えるための手段です。デザイナーが、その在り方に深く理解し、共感していないと、いいデザインなんて生まれません。

だからこそ、デザイナーはグラフィックやUIなどの『見え方』にとどまらず、『在り方』にまで積極的に介在にしていくべきだと思います」

デザイナーに求められる役割についてこう語るのは、Oisix ra daichiでアートディレクターを務める戸田俊作さんです。

そして、デザイナーこそ、ブランドの「在り方」を定義する際に、最も力を発揮できる人種だと戸田さんは言います。その理由とは、何なんでしょうか?

人の暮らし・衣食住に関わるOisix ra daichiLIFULLの2社で開催した勉強会「彩りのある暮らしをつくる、強いインハウスデザイン」にて、戸田さんが講演した内容をお届けします。

戸田 俊作(とだ・しゅんさく)さん。OisixEC事業本部 販売推進室 売場デザインセクション アートディレクター / グラフィックデザイナー。2008年に多摩美術大学グラフィックデザイン学科を卒業後、広告制作プロダクションを経て2017年にOisix ra daichiに入社。 OisixECの売場全般のWebや紙のアートディレクションとデザインを兼務。現在は若手デザイナーの技術育成や成長支援にも従事し、社内デザインコンペ開催にも携わる。

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「在り方」あってこその「見え方」

今日は、僕がOisix ra daichiに入社してから今日に至るまでの約2年間で感じた、ブランディングとデザインについての考え方の変遷についてお話しさせて頂きます。

タイトルは、『在り方のデザイン、見え方のデザイン』としました。

ここで言うブランドの「在り方」とは、企業やブランドの存在意義を定義することです。別の言葉に置き換えると、企業理念やブランドコンセプト、存在意義。主に創業者や経営層、ブランドマネージャーなどが在り方を決める領域です。

一方、ブランドの「見え方」とは、在り方を具現化したものです。企業やブランドがユーザーにどのような印象を与えるかを左右するアウトプットです。VI(ビジュアルアイデンティティ)やUI(ユーザーインターフェイス)、グラフィックなどのビジュアルイメージやプロダクトデザインが、見え方の手段ですね。ここが、主にデザイナーが主戦場としている領域です。

「見え方」はお客様の目に映る大切な部分です。ですが、「見え方」とは「在り方」を伝えるための手段ですので、「在り方」あってこその「見え方」です。

その関係を絵に描くと、こんな感じでしょうか。

そして、僕がデザインやブランディングに携わるようになって感じたのが、Oisixを長くご愛用いただいているお客様は「見え方」の根っこにある「在り方」について、すごく意識して見ているということです。

見えている部分を通じて、「このブランドは、どう在ろうとしているのか?」を感じとろうとしているんです。

しかし、見え方が複雑になっていくと、見る人によって在り方の解釈が別れていきます

例えば、Oisixブランドができて今年で19年目なのですが、誕生当初は「おいしい野菜を届けたい」という在り方に基づき、「おいしい野菜を売ってます」という見え方に統一していたので、とても分かりやすいブランドでした。

一方、現在のOisixは、時短商品など様々な新サービスを展開しています。会社の成長と共に、見え方が多様になってきたんですね。

そうすると、「Oisixらしくない!」「原点を見失っている!」というネガティブな声をいただくこともあります。その一方で「時代のニーズに合ったサービスを提供してくれて嬉しい!」というポジティブもいただき、両方の声が出てくるようになりました。これはお客様からではなく、社内のメンバーからも出ています。

つまり、在り方をきちんと定義し、そこに基づいて見え方を育てないと、よくわからないブランドになってしまう

だから、僕は「見え方」の専門家であるデザイナーも、「在り方」の定義にまで介入していくべきだと思っています。

そして、インハウスデザイナーは、社内に籍を置いているので経営陣との距離が近い。だから、「在り方」に介入がしやすい環境が整っているんです。ここに僕はインハウスデザイナーの可能性を感じています。


デザイナーほど「在り方」の定義に適任な人種はいない

僕は、企業やブランドの「在り方」を定義する上で、デザイナーほど適任な人種はいないと思っています。

なぜなら、デザイナーとは客観性を徹底的に鍛える訓練を行ってきた人種だからです。

例えば、デッサン。デザイナーはデッサンの訓練をやりますよね。

僕も曲がりなりに美大に行くためにデッサンの訓練を長いことやってきました。当時は「なんで、こんなことをやらなきゃいけないのかな…」と思っていたんですけど、今思うとデッサンはデザイナーに必要な素地を育んでくれていたと感じます。

デッサンは、描く対象をまず客観的に観察・分析します。それを頭の中で整理・編集して、手と鉛筆でアウトプットして描くというプロセスです。これは、在り方を考えて、見え方に昇華するというプロセスに大事な要素です。

だから、僕はアートディレクターとして、この絵のようなことをOisixでやっていきたいと思っています。

デザイナーがOisixという名前の木の「見え方」を手入れしてくれるんですが、僕はアートディレクターとして、少し離れたところからブランドの「在り方」を考えて、「見え方」をコントロールしていきたいんです。

そのため、ブランドの「見え方」だけでなく、ブランドの「在り方」について、経営陣や社内のメンバーとしっかり議論を重ねていくことが大切だと感じています。


個々の商品の「在り方」を明確にする

ここからは、この考えに基づいて、僕がどんなことをやっているのかという具体的な事例をふたつ紹介させていただきます。

ひとつめは、商品レベルのミクロな話で、個々の商品の「在り方」を考えて、「見え方」をデザインするという話です。

僕は、Oisixで販売している野菜や食材の商品紹介画像の撮影ディレクションをしています。「おいしそう」「買いたい」という気持ちをお客様に持っていただくことが大切なのですが、撮影をする際に強く意識しているのは、商品のポジションを明確にするということです。

僕は商品のポジションを明確にする時の基準となる3大フィルターというものを持っています。それが、時間・カテゴリー・ハレとケの度合いです。

「時間」とは、どの時間帯に食べる食材なのかということです。

「カテゴリー」とは、肉なのか、魚なのかといった、それぞれの食材のカテゴリーを指しています。

「ハレとケの度合い」とは、日常的に食べて欲しいものか、誕生日や記念日などの特別な日に食べて欲しいものなのかという意味です。

例えば、肉というカテゴリーでも色んな食材があります。

これを残りの2つのフィルターを通してみるとポジションが明確になってきます。

撮影のディレクションをする際やスタイリングを考える時には、このポジションを意識しています。

例えば、左下のローストビーフはお値段がはる商品なので、ちょっとリッチにいきたい気分の時に食べる夕飯かなと思っています。だから、リッチな食器を使ったり、高級感のでるライトニングでリッチ感を演出しています。

右下のローストレッグは、クリスマスや誕生日の時に食べる肉料理担当なので、奥に蝋燭を置いていたりとか、ライティングをダークな感じにしたりして、そういう在り方に見え方をコントロールしています。

このように、各商品のポジションという「在り方」を考えて、「見え方」をつくっています

なぜこのような考え方に至ったかというと、Oisixの理想的な売場の「在り方」とは何かを意識するようになったからです。

僕のなかでの理想的な売り場とは、普段使いのものからちょっと変わった商品まで、様々な食材が取り揃えられたバラエティー豊かな売場。つまり、3大フィルターの全項目が抜け漏れ無く網羅できている状態がベストだという考えがあるからです。


ブランドの「在り方」を突き詰め、共有する

もうひとつの具体的な事例は、ブランドレベルでの話です。

昨年、『らでぃっしゅぼーや』と当時のオイシックスドット大地が経営統合をした時に、OisixのECサイトの中にらでぃっしゅぼーやのブランド紹介と商品を取り扱うページをローンチしたいという依頼がありました。

らでぃっしゅぼーやがOisixの中に入って、お互いのブランドがごちゃごちゃになるとマズいと思い、各ブランドの提供価値を明確にしようと決めました。

まず初めに行ったのは、『大地を守る会』も含めて、Oisix ra daichiの持っている3つのブランドの「在り方」を、それぞれ一言化することからはじめました。

そして、各ブランドのメンバーにヒアリングを重ねていくと、こんな風に分けることができました。

その結果、らでぃっしゅぼーやの「在り方」を一言で表すと、「笑顔あふれる食卓づくりを手伝うお店」と定めました。

各ブランドの「在り方」を定義した後、「見え方」に関するルールを社員や外部パートナーに共有できるように、A4・2枚の簡単な資料にまとめました

左側の用紙では、スタイリングの雰囲気や世界観を雑誌やお店に例えています。また「在り方」を表すキーワードや、「見え方」のイメージについて簡単に書き連ねています。

そして、右側の用紙は、撮影スタッフのために作ったものです。「見え方」として、具体的にどういう風にしたいのかを伝えるものです。

こういったプロセスを経て、らでぃっしゅぼーやの紹介ページはこうなりました。

主に意識したことは、トップビジュアルに人の手を登場させたり、刺繍のような粗めの点線を装飾に使うなど、随所に人感を感じさせる要素を取り入れました。商品の写真のスタイリングはシンプルさをベースにしながら、アクセントで柄や色味を取り入れています。

こうして、らでぃっしゅぼーやの「笑顔あふれる食卓づくりを手伝うお店」という在り方にそって、全体的に暖かい雰囲気を漂わせました

結果、サービスローンチの翌週の時点で、週次・月次の両方の売上目標を達成することができました。

このように「在り方」を意識しながらデザインをすることが僕は大切だと思います。

むしろ、ブランディングにおいて良いデザインをするためには、「在り方」への理解・共感が絶対に必要です

そのため、僕たちデザイナーは企業やブランドの「見え方」をつくる役割にとどまらず、その手前にある「在り方」にまで介在していくことが、強いブランディングを築く上で大切なのではないでしょうか?

そして、客観性に優れ、「見え方」を熟知しているデザイナーこそが、「在り方」の定義に適役だと思いますし、僕は在り方にまで介在できるデザイナーを目指していきます。今日は、ありがとうございました。

Text & Photo:井手桂司

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