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66歳の起業

Mさん。非常勤の顧問に就任するという連絡があった。ご本人は大いに不満のようなので、愚痴を聞きにでかけた。

「短すぎる、たった3ヶ月だ」

これまで、この職は1年が慣習だった。1年あれば退職後の準備できる、はずだった。3ヶ月じゃ足りない、シナリオがくるった、と言う。

大手上場企業に入社、営業畑から海外駐在を経て購買部門の執行役員で現役を終えた。63歳、そのあとは、子会社の社長をやって昨年常勤顧問になった。

どうシナリオがくるったの?

常勤顧問、非常勤顧問に仕事はない。このポストは慰労のポスト、つまり、税金を払うために用意したものだ。税金は前年、つまり高額報酬時をもとに徴収されるから、会社を辞めて収入がなくなったときに支払う税金はきつい。貯蓄を取り崩すしかない。常勤・非常勤顧問というのは、給与を安くしても少しの期間は会社においてあげるから、それで税金を払いなさいという温情のあるポストなのだ。

2年あると思った「温情期間」が急に縮まった。まだその後の準備ができてないらしい。じゃあ、何をしたかったのと問うと、「起業だ」と言う。

彼の目論見はこうだ。

ありがたいことに、国の年金と退職金でなんとか生活はできる。でもね、基礎年金は所得税や住民税、介護保険などで天引きされてほとんど残らない。残りの厚生年金だけじゃ、生活するのがせいいっぱい。これまでのような出張時の楽しみや外食などには足りない。だから、

「起業する」

自分で会社を持てば、好きに経費が使える。出張や接待、個人企業だから奥さんを専務にしておけばいい。サラリーマンだと奥さんとふたりの食事は当然自腹だけれど、会合経費で落ちる。クルマも営業車にすれば経費を振り替えられる。そう、起業すれば経費天国だ、と。

わたしも、そう、思います。

彼に残った時間は非常勤顧問の3ケ月、足りない。これがご不満のようなのだ。購買部長の「虎の皮」を着て、その伝手で商流にはいる。こんな起業を、この1年で形にしようと思っていたらしい。

Mさん、あと3ヶ月、頑張ってください。