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こころに沁みる「名句」

晩年に認知症を患った母親は、帰省して顔をみせると、ひとりで行けるはずもない遠い場所に「今日行ってきた」とうれしそうに話をする。久しぶりに帰ってきた息子の顔を見て、「だれ?」「息子はあんたみたいにトシヨリじゃない」と言う。

自分の心のなかで、「昔の楽しかった時の思い出生活」をしていたのかもしれない。ひとり暮らしの寂しさを紛らわせていたのだろうかと思った。
(拙著note「アルツハイマー病の薬」https://note.com/ojinseye/n/n609b476fc3c1)

東京から帰省するのは、関西方面に出張のあったとき。ついでに立ち寄るというのが続いていた。「次はいつ帰ってくるの?」と言われても、その時は予定がたたないので「また連絡するから」としか言えなかった。

noteに投稿して間もなくのことだった。新聞に川柳の投句があった。

〽  顔見せぬ息子に『どなた?』と呆けてやる (るぽんさん)

句を読んで「笑い」、そして母親を思った。

高校を卒業して以来「顔を見せぬ息子」に、実家に帰って来いと思っていても口には出さず、「呆けた」ふりをしていた?まさか、そんなことはない、だろう。

ひとり暮らしをさせた母親への「気づかい」の不足、今さらながらの反省。こころに沁みる「名句」だ。