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原稿用紙のマス目を埋める

ふだん読んでいる新聞や文庫本は、そのほとんどが縦書きだ。新聞によっても違うが、1行の文字数は11から12字。手元にある文庫本は38字だ。すらすらと読める。ところが、文字をマス目にいれた縦書きの活字原稿を読むと、まことに読みづらい。

文章教室に通っていたことがある。提出した1000字程度の作文のなかから講師がいくつかを選び、ケーススタディとして意見を述べ合うというスタイルだった。縦書きのマス目の原稿用紙に手書きやワープロソフトで書かれたものを読む。内容の把握はもちろん、起承転結などの構成、作者のいいたいことがきちんと書かれているかなどをチェックする。ところが、活字で書かれた原稿は何度も読み返さないと頭に入ってこないのだ。

読んでいるうちに、文と文のつながりが切れてしまう。1行20文字、文字数が少ないわけじゃない。新聞は12文字だ。ルビをふるための空間があるからか?ただの四角のマス目原稿に書いたものも同じようにわかりづらい。字間が広いせいか?文字を大きくしてみたらどうか?

マス目がうるさいのだ。

自分の原稿を、マス目あり、マス目なし、それに横書きでプリントして見比べてみた。マス目なしのほうがよほど読みやすい。それ以上に、横書きの方がいい。ふだん目にするビジネス文書やメールが横書きだからだろうか。

原稿用紙は明治時代、東京・神楽坂にある文具店「相馬屋源四郎商店」が始めたものだという。もちろん、その頃は手書きだから、文字数、分量の把握に役立ったにちがいない。書く方も、それを印刷する方も。今は文字数を簡単にカウントできるし、1行の文字数だって任意に選べる。
なぜ、今も原稿用紙をつかうのだろうか。

その時も作文はエディタをつかっていた。もちろん横書き。提出するときはワードの縦書き原稿用紙にコピペして、プリントして提出していた。「きまり」だったから。その次からは、横書き1行30字にし、行間を広くし、字数を添えた。内容はともかく、読みやすいと言ってくれる人もいた。

noteはもちろん、新聞などの投稿サイトもマス目の原稿用紙で提出しろというのはない。字数がわかればいいし、チェックして編集するのも、プレーンのテキストスタイルがいいにきまっている。

原稿用紙のマス目を手書きの文字で埋める。文豪ならまだしも、原稿用紙の出番はほとんどなくなった。