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2021年4月13日の乾杯

2021年4月13日の乾杯。
4月大歌舞伎、第一部を観てきました。平日の午後、密をさけて逃げ込んだ銀座のガランとした喫茶店で、その余韻に浸りながら、観てきた舞台のことや舞台を観ることについて語り合います。、

👨演劇のおじさんと
👩おねえさんです。こんにちは。
👨こんにちは、
👩今日はお昼に、というか日中にね。
👨久々におめにかかりまして.
👩そうですね。喫茶店の片隅で収録をしております。
👨人知れず、人を避け、コロナに配慮して録っておりますが、うふふ。
👩はい。本日は一緒に歌舞伎をね。
👨ちょっとしたイベントということで
👩観てまいりまして。
👨凄かったですよね。
👩本当に。今日は『小鍛冶』という演目と『勧進帳』を観てきました、はい。朝からね。
👨『小鍛冶』の方は猿之助さんと中車さんということで、これはもう半沢直樹そのものですからね。ヒール役のお二人がそろって。
👩あはは。でもね、本業のほうでね。
👨うん。
👩やっぱり、猿之助さんの動きというか表現力というのは、身体能力の高さとそして表現力というところで。ほんと跳ねるような、観ていてわくわくする…
👨なんだろ、西洋のダンサーと混じってもまったく遜色ない、日本のホンワカした切れに加えてほんと一瞬ずつがキレッキレでしたよね。
👩うんうん、ですね。
👨歌舞伎って、なんだろう、西洋の舞台とは違ったメリハリじゃないですか、だけど今日の『小鍛冶』には西洋のものとも肩を並べるような凄さも感じて、日本人の磨かれた芸、しかも多分70歳にもなってできるかといえばたぶんできないと思うんで、やっぱりまだあの歳の猿之助さんだからできたことだとも思うんだよね。
👩演目的にも25年振りって仰ってましたよね。ただ西洋の、西洋ってひとくくりにしてよいかはわからないのだけれど、そのやっぱりこう、体の中にリズムがあるというか…「動」の芸術とか「静」の芸術って、よく言われますけれど、、日本の昔からの芸術っていうのは「静」だといわれていますよね
👨うん。
👩今日の『小鍛冶』は、私はその中でも、やっぱりその、ダイナミックだったしパワフルだったしリズミカルでもあったのだけれど、やはりそこには留めの美学みたいな、やっぱり「静」の芸術なのだなと思えて、とてもよかったですね、楽しかった。なんか、あと、まだ、全然まだ詳しくないんだなと思いました、歌舞伎について。いろんな技、技といってよいのかわからないけれど…技があるでしょ????
👨はい
👩形って狐、いなり大明神、ええと稲荷伏見・・伏見稲荷神社の化身の狐様がでてくるのですけれどね。最初に出てきて、一回こう退場するのですけど、なんていうんでしょうね、一瞬で消えたからね。セットがこうくるんと回転するところに演者がジャンプすることで巻き込んでしまう。
👨あの外連には、客席からかかっちゃいけない声がかかりましたものね。思わず。
👩出ちゃうよね。今あれなんですよね。大向こうとか、もちろん会話はしないけれど、大向こうを掛けないでくださいっていわれているんですよね、寂しいことですけれど。やっぱり聴きたいよね、すごく聴きたいよ。
👨あのシーンで一回だけ「澤瀉屋!」って声がかかったときに、ああやっぱりかっこいいなぁって思いましたものね。
👩かっこいい。
👨また、いま言っていたその「静」の部分って言うのは、確かにおっしゃるとおりで、それはすごく洗練された切れのある「静」でしたよね。それは、私もすごく思って。で、あと、後半のあれも、
👩『勧進帳』、
👨そう、『勧進帳』も大歌舞伎で観るのは初めて。木ノ下歌舞伎では観たことがあって、あれはあれで凄いなぁとは思っていたんですけれど。だけどまあ、大歌舞伎のあの見せ所満載さ。
👩私も今回ね、もちろん『勧進帳』っていっただけで分かる方も多くいらっしゃるとは思いますけれど。義経と弁慶が関所を通るときに疑われて、弁慶が真っ白な巻物を勧進帳さらさらって読んで見せたりとか、弁慶が疑われた義経を打ち据えるっていうあれですよ、『勧進帳』。言葉では知っているし、物語の流れみたいなものは知ってたけれど、生で観るのは全然違った。面白かった。
👨最後の六方、痺れましたよね。
👩痺れましたよね。弁慶のね、あれは飛び六方でいいんですか。
👨ですよね。
👩東西南北、天と地に、全てに動くという、詳しいことは分からないのですけれど。でもね、もうね、何はなくともやはり文化とは素晴らしい。伝統とは響いてしまうということを感じましたね。魅せられる。よく分からなくてもね、歌舞伎はね。私も最近はよく観てはいるんですけれど、分からなくても面白いじゃないですか。是非観て頂きたい。今まだね、世の中の状態的に、そんなにその席がいっぱい埋まっていなくて、隙間がある状態で後ろの方の席でもなんならちょっと観やすかったりもするので、是非観にいって頂きたい。
👨あはは。でもなんかね、二人とも観終わって興奮醒めやらずみたいな形でしたものね、
👩知識がまだ足りないというか勉強不足ということもあって、イヤホンガイドを借りてみるんですけれど、イヤホンガイドを借りて観たらほんと分かるから。
👨わかるものね、そうそう。
👩このイヤホンガイドがまた……本編とは離れるんですけれど、いろんな方が舞台を観ながら要所要所で説明してくれるんですけれどね、そのね。解説の人によって合う合わないがあって。
👨あはは、なるほど。
👩何回か観ていて、この人滅茶滅茶喋……今台詞を話しているのに滅茶滅茶喋るなぁっていう人がいたり、あの、言葉は少ないけれど重要なところだけ差し込んでくれる人がいたり、全然関係ない話をしたり、あの、全然関係ないっていうか、そのー、なんていうのか派生的な話。どの方も個性があっておもしろいのですけれど、で、そこでどの方と自分の相性が良いかって言うことではあるとおもうんですけれど。うん、イヤホンガイドの解説の人も面白いから。
👨彼らの言い方をすればここが聴きどころみたいなね、
👩そうそう。で、今日、『勧進帳』のイヤホンガイドの方が多分初めての方だったんですけれど。聴いていてその方はけっこうね、なんか演出をかけてきてくれていて。というか、どちらかというと唄や浄瑠璃が流れているときや役者さんが喋っているときには全然差し込まないで、で、どちらかというとその言葉は少なめな方だと思うんですけれど、でも、次の台詞みたいなところに合わせてピタッと止めるみたいな。ここでっていうとバンと役者が決めの台詞を言うみたいな、なんか初めてのタイプのイヤホンガイドの方で。
👨あの、イヤホンガイドってほら、例えばお浄瑠璃なんかだと言葉が全部分かるわけではないので、それに対して翻訳みたいなことをしてくれてる訳じゃないですか。ただ、それも人によって最初に意味を全部言っちゃってという人と、
👩ああ、いるねぇ。
👨重ねて意味を言う人と、
👩ああ、それもいるねぇ。
👨それから、あと、終わってからそこのところで意味を差し込んでくるタイプの人もいる。3タイプあるじゃない。
👩はいはい、ある。大きく分けてそう。それでそれぞれの味がある。
👨で、私とかは、それでも少し歌舞伎に対して耳が慣れてきたんだと思うんですよ。わかるところも少しだけあるのね。だから、分からないところに、あれって思ったところに、こうだって後付けで差し込んでもらうタイプが個人的には一番親切だな。
👩うん。私もね、最中に言われない方が好きだなって思う。やっぱり役者さんの言葉を聞きたいし。
👨やっぱり耳が慣れてきたというか・・、
👩それはあると思いますよ。観ていくと、あれですね、なんていうのかなぁ、長唄だったりとか浄瑠璃だったりとか、唄を謡う方だとか三味線を弾かれるかたとかそういう方にも凄く目がいくようになるいうか。あと今ね、あれなんですよ、舞台の芸術だから、マスクは出来ないわけじゃないですか。だけど、三味線の方だったりとか、謡われる方とかはけっこうかっこいいんですよ。
👨あの、黒いね。
👩そう、黒子さんの顔を覆うみたいなやつの鼻から下だけバージョンみたいなね。なんか、いいなぁあれ、かっこいいなぁっておもうよね。それが舞台に映えしまってたりもして。おもしろい。歌舞伎はおもしろいよ。
👨うん。
👩みなさんにも観て頂きたい。歌舞伎。あとひとついいですか。私、知り合いに、私なんかとは比べものにならないほどの歌舞伎好きの方がいるんですよ。
👨あ、はい。
👩歌舞伎も好きで宝塚も好きなんですね。
👨うわぁ、それは豪華だ。
👩で、良く教えてもらってたんです色々。私も昔宝塚をよく観ていて、好きな方がいらっしゃって、もうかなり前に引退された方なんだけれど、学生時代……小学生とか中学生のころかなぁ、汐風幸さんという方がいらっしゃったんですよ。その方を私凄く好きで応援していて、で、それから暫く年月が経ち、汐風幸さんは今でもずっと好きだけれど卒業もされたしおめでとうございますっていう形なんだけれど。あるとき、歌舞伎を観ていて。その友人も偶然同じ回を観ていたんですね、で、あの人が良かったという話を、メインの方ではないんだけれど凄く気になる歌舞伎役者さんがいらっしゃったってその人の話をしたら、
👨うん。
👩「あれ、ちょっと待って、おねえさんって汐風幸さん好きって言ってなかった?」って。で、「うん、好きだよ」って言ったら、「今おねえさんが好きっていった俳優って汐風幸さんの縁者さんだよ」っていわれて。。汐風幸さんのお父さまが歌舞伎俳優だったのかな、おじいさまかな。(注:十五代目 片岡仁左衛門)。なんですよ。
👨梨園は繋がっていますからねぇ。
👩でも凄くない?私がなにも知らずに、この人いいなって言った人がさ、過去に、今も好きですけれど、汐風幸さんの・・。えぇ、血なの?血?っていう。好きなあれって変わらないんだなって。血続きで好きなんだなぁって思って。
👨今日の『小鍛冶』の二人だって従兄弟なんでしょ。中車さんと猿之助さんって。
👩うん、そうですね。でもおもしろいよね。実際に血が濃いからさぁ。
👨それはねぇ、サラブレットだって血で走るしね。
👩そうだよ。だって想像しちゃったもの。今日もね、歌舞伎の舞台にお子さんがね、
👨『勧進帳』にね。
👩そう、出ていらっしゃったんだけれど。まあ、たとえば歌舞伎役者の家に生まれたって言うことは生まれたときから歌舞伎役者なわけでしょ。しかも男子っていうことは跡を継ぐわけでしょ。長男だったらねぇ。次男だってきっと歌舞伎俳優にはなるわけだし。だから、どんな?どんな感じ??って思って。どうなってるのって。
👨まあ、家がその、芝居で成り立つっていうことは、成り立つっていうかずっとその文化であるっていうことは力なんだろうなって思う。それは男性に限らず、それこそ松たか子さんとか松本紀保さんだって、みんなそういう血を持ってそれを力に変えている部分ってあるんじゃないかなぁって気はしますよね。
👩そうですね.でもなんかさ、恐ろしくならないですか。もちろん、生まれたからにはさ、生まれた時からさ、もうずっと跡取りだってなって、ずっとやることは決まっていて、ずっと舞台に立って、お披露目もあって。稽古が身近にあるものとしてずっとやっていくという生活で育てていくものだと思うんだけれど、それにしたってさ、向き不向きとかさ、才能があるかないかとかってことはあるじゃん。きっと。
👨まあね。
👩きっと……もちろんそれを上回る稽古量だったりもするんだろうし、きっと、しっかりとした俳優さんにはなるんだろうと思うんだけど。だけど・・・だけどいるじゃない、俳優さんの中でもギランギランに光っている人って。もちろん努力も才能もあるのだろうし、なにもしないでそうなっているとは全く思わないんだけれど、むしろそういう方こそ努力をしているとはおもうんだけれど、でも、あるじゃん。
👨努力を生かすマウンドっていうのが彼らにはあって、全力投球をできる環境って言うのを彼らは持っているわけじゃない?ある意味。それはそれで凄いことだよね。あの、ただ、このあいだ神田伯山先生がClub houseで時々お稽古と称することをやっていらっしゃってね。
👩へぇ、おもしろいことをしていらっしゃる。
👨なんかね、フォローしているですけれどね、彼を。○月○日お昼時、ランチタイムに稽古をしますって告知が出て、実際にClub houseの中でひとくさり語ってくれるんですよ。彼はフォローしとくといいですよ。
👩うわぁ、それいいですね。チェックしよ。そうだそうですよ、みなさん。
👨でこの間、『中村仲蔵』という噺があって。これは江戸落語にもあるんだけれど、それっていうのが、名跡には関係ない役者、それが江戸三座の筆頭役者にまで登りつめるきっかけの噺なんだけれど。彼は忠臣蔵の五段目を演じ方を変えた人って言われているんだって。
👩へぇ。
👨で、それまで忠臣蔵の五段目っていうのは弁当幕っていわれていて、
👩あはは、みんな食べるんだ。
👨それまで忠臣蔵の中でもあんまり面白くないところだったから。で、それを彼の演じ方の工夫で一気に人を惹きつける幕に変えたって言う話なのね。物凄く面白かった。もちろん講談だから面白く脚色はしているのだろうけれど。
👩そうか。……あれ?片岡愛之助さんってさ、元々梨園の人じゃないよね。
👨あの人どうだったっけ。いや、彼は違ったような気がする。
👩外からの人だったような。いるもんね。でも並の努力じゃないよね。凄いなって思う。
👨うん。
👩あと、興味が凄くある。どんななのだろうって。外から見るとさ、裏の努力とか大変さとかどういうことをやっているのだろうっていうのが見えないから。キラキラしたところだけばっかりが見えるじゃない。そういう職業だし。だからいいなぁとか思われた時とか、将来が約束されていてみたいなことを思われることも往々にしてあるとはおもうんだろうけどさ、でもさ、もうすごいプレッシャーとかさ、やらなければならない、だって絶対に輝かなければならないって生まれた時から決まっていて、小さいときからそれをもう、ねぇ、課せられるってとんでもないプレッシャーだと思うの。
👨あれなんだよ。そもそもの腰の入り方が違うっていうか。
👩そうですね。それはそうね。
👨まあね。あのさ、今そうやって劇団なんかでやっている人も必死でやっているっていうのもすごく知っているし、
👩そうね。
👨だけど、彼らは多分あんまりバイトってしていないように思うんだよ。
👩それはあるよね。そのさ、もう大変さはあるけどそれに対して
👨サポートするような。
👩うん。そこに集中できるようにっていう。だからさ、思うのよね。生まれというのは人を縛るものでもあるけれど、でも生まれた時から差はあって、平等ではなくて、やっぱりみんなが同じスタートではないから、
👨人間というは、基本的には平等であるとは思っているのよ、私。機会としてね。だけど、なんだろ、生まれつき与えられたものや環境っていうのは公平ではなくものすごく不平等だと思っていて。
👩そうだね、環境は不平等だよ。
👨才能とかもそうだし、あと頭の良さとか感性とかも決して平等ではない。そこは絶対に平等にすることができないし、それを平等にするって考えた瞬間にいろんなものがおかしくなる、逆に歪んでしまうような気もするんだけれどね。まあ誤解を恐れずに言えばだけれど。
👩それはそう。あの、環境に差はあれど、出来ないなんてことはないとは思っているけれど、でもやっぱりさ、そこは大きいよね。大きいは大きいよね。だってさ、その、価値観・・、なんだろうな、豊かさみたいなのってさ、思うんだけれど、どれだけのものを観るのかとかさ、どれだけ自分に栄養を与えるかっていうことになるんだろうなって思うの。それを観ることができる状況だったりとか、もう、たとえばバイトをしないでも常に稽古場があって稽古ができる状態、そこに全力投球できる状態っていうのもやっぱり持って生まれたギフトだとも思うし。ある意味ね。
👨まあねぇ。
👩中にあるものだけがギフトじゃないからね。
👨血っていうのはいろいろにあるよね。
👩うん。
👨まあ、演じる方もそうだけどさ、私って母がもうだいぶ前、5年くらい前に無くなったんだけれど、母が最後に入院していたときにはけっこうふたりの時間を頂けたので、彼女の若い頃とか父親とどうやって知り合ったのかとかをね
👩きいたんですね。
👨もうふたりとも分かっていたからね、話をしてくれて。それまで私の抱いていたイメージの中では父親と私は全然感性が違うものだと思っていたのよ。私はたとえば美術館とかそういうところに行ったりするのが好きだし、あとそういう、・・実学でないものがすごく好きなのね、で、父親は仕事として学問の方にいた人だから、実学ばっかりだっていうイメージがあった。で、話を聞いて、若い頃とか・・、まあ二人は恋愛結婚だったんですよ。その学問の世界に行く前に父親は会社勤めをしていてそこで知り合ったから。で、そのころってね、父親は歌舞伎を観に行ってるは、展覧会を観に行ってるは、映画も芝居も寄席も大好きだったという衝撃の事実。
👩もう滅茶苦茶血が濃いじゃないですか。
👨二人のデートは日比谷公会堂でクラシックのコンサートを聴きにいくことだっていう・・。
👩うーん、いいねぇ。
👨まあ、二人とも東京だったからね。
👩まあね。でもめちゃめちゃ似ているじゃないですか。
👨うん、そうなのよ。
👩あははは。おじさんはねぇ、芸術に造詣が深い・・。
👨別に造詣が深いわけではないんだけれど。その、そういうのに興味を惹かれる、ちょうどその、梨園の人が育ったようにね。父親の本棚とか表面の部分は今でも学問の本がずらっと並んでいるんですよ。だけど、最近やっと精神的にも両親のものを整理できるようになってきて、いろいろ整理をしてたら、裏の方にきったない段ボール箱みたいなのがいくつもあって。で中をみたら、中が歌舞伎の芸談だったり、展覧会の画集とか、その手のものがぎっちり詰まっていて、父親ってそういう人だったんだっていう発見があって。改めてそうだったんだと思ったけれどね。
👩なんか、強いつながりを感じる。
👨あな恐ろしや・・、みたいな。でも、この馬は水を飲む馬でしたっていう・・・。
👩いやぁ、でもなんかいろんなことを考えちゃった、ほんとうに。その、うーん、なんかね、なんかちょっと舞台っていうかね、その本編とはちょっと離れてしまいましたけれどね。でも、実際ね、私も一番最初に行ったときにはそうだったけれど。歌舞伎ってさ、ちょっとハードルが観るまでは高いんですよ。でも慣れていくと、知れば知るほど面白くなるものだから、なんていうのかな、待って降ってくるものではないと思うんですよね。
👨うん、そうそう。
👩見続けたりとか、どこに面白さを感じるかとか。でも実際に観ると、やっぱり得るものがとても大きくて、想いも駆けるし、作品自体にも実際にいろいろなものを刺激されるし。やっぱりね、観て。みんな観に行こう。歌舞伎座に行こう。
👨いや、とはいうものの、値段も高いしね、正直。 
👩まあねぇ。
👨あれで小劇場の芝居だったら、多分3本とか4本とか観にいけるわけだし。
👩でもさ、5月?、6月?でしたっけ、さっき話していた歌舞伎の演目ってなんでしたっけ?
👨5月は忠臣蔵の六段目ですね。
👩忠臣蔵ですよ、みなさん。
👨おかる勘平ですね。
👩観たいでしょ、みなさん。私も母親が忠臣蔵が好きなんで、もしかしたら凄い観たがるかもしれない。見せてあげたいなぁ。
👨それがおねえさんの血だ、うん、でも私も観たい。まあ、今は歌舞伎座が三部制で、ほかにもいろいろやるんですけれど。なんか、まだ私も初心者だから、有名なものをちゃんと知りたいっていうのもあるんですよね。
👩そうですね。あとなに観たいかな。宝塚は観に行きたいですね。ただ、チケットがとれないだろうなぁとか。あとバレエとか。
👨ああ、バレエはいいですね。
👩バレエはね、結構前だけれど、裏のね、スタッフで入っていたことがあって、それこそさ、上野の東京文化会館とかで。まあなにをしていたかまではいわないですけれど仕事をしていて、そこには海外のね、国立バレエ団とかオペラの団体とか、その国を代表するような人がくるわけ。英国のロイヤルバレエ団とかも来るわけ。忘れられないんだけれど「瀕死の白鳥」を観たの。
👨ああ、はいはい。
👩あの、バレリーナさんが、なんだっけ、プリマドンナ
👨うん、プリマね。
👩瀕死の白鳥を一人で踊るわけですよ。もうさ、なんだろうね、同じ人間だと思えないんだけれどさ、私は袖から観ていたけれど、もう感動で泣いちゃって、仕事中なのに、なんかね、分からないわけですよ、綺麗だなぁとは思うけどさ、でも綺麗だとかそれだけじゃなくて、その世界の厚み、厚さというか重厚さというか、ほんと濃いのよ、その空気が。その作り出されている空気が。
👨うん。
👩そういうのって知らなければ一生触れあうものでもないから、いろんなものに手を出して観てみる。合わなければ観なければいいんだから、もっと観てみるというのは改めて大事なのではないだろうかと、このコロナでいろんなものがなかなか観れなくなっている状態で、やっぱり自分が何を求めているのかっていうのをすごく感じやすくなっているから、観に行こう、みんな!
👨うふふふ。あの、さっきも言いかけたけれど、馬だって水場のところまでは連れて行かれないと水は飲めないけれど、その水を飲む意思っていうのは絶対に大事なんですよ。それは極めて馬が決める問題だから。
👩そうね。
👨馬を引く人にであうことも大事。バレエにしても、私はそんなに沢山観ているわけではなくて、まあ観ているといえば観てはいるんだけれど。昔、NYにいたことがあって、その時に夜になるとたまに日本人による日本人のためのバーに飲みにいっていたんですよ。要は日本人の従業員がいてバーテンをやったり接待をしてくれるのね。最初は仕事上のお付き合いでいっていたのだけれど、そのうちひとりでも行くようになって。そのころって滅茶苦茶日本人が多かったわけではないけれど、いろんな勉強をしに来ている女の子もけっこういて、英語はもちろんのこと音楽や絵を学んだりとかね。そのなかにひとり、バレエをやっている子がいて、それなりに上手いというか、日本では先生の下でアシスタントをしていたという、要はバレエがわかる人だったのよ。で、ある日飲みにいったらカウンター越しにいきなり「いくら持ってる?」って言われて、「はぁ?」ってなったら「出せ」って言われて・・。でお財布からけっこうな金額をぶんどってそのまま店から出ていって。で、暫くしたら戻ってきて「そんなに良い席ではないけれど取ったから一緒にいこうよ」って言われ、翌日の夜、リンカーンセンターのメトロポリタンオペラハウスにつれて行かれて。で、その時に観たのがパリオペラ座のバレエで。
👩ああ!!はいはい。
👨で、演目はおねえさんとおんなじですよ、「白鳥の湖」。ルドルフ・ヌレエフっていう座長さんが当時もうそれなりのお歳で、普通には踊りきれないから最後のところを自分が踊れるようにかえてしまったらしく、彼女が、「バッタ物やんけ」ってえらい怒っていたという。でも、その時に主役級でノエラ・ポントワさんっていうバレリーナが参加していて、有名な32回転、黒鳥が片足立ちで32回転というのを踊ったんだけれど、それが必死になって踊り切るっていう感じじゃないのよ、ちゃんと一回ごとに、回転がついていくごとに、ニュアンスがどんどん変わって、周りが華やかに感じられて、照明とかが変わっているわけでもなんでもないのにその空気が違っていくのよ。どんどんこう、なんていうの、巡っていくの。で、私はその当時、ミュージカルは毎週のように観に行っていたのだけれど、オンブロードウェイだったけど、そうであったとしても、どんなにそのオーケストラが音を奏でても、ダンサー達がキレキレの、たとえば最高のタップを見せてくれたとしても、あれとは違う。
👩そうかぁ。
👨あれは違うんだよ。もう、一生忘れないよね。
👩うんうん。ほかのものでもいいんだ。でもなんかその、それぞれ違うのよ。なんかね、そのどれが至高とか私はあんまりしたくなくて、それを決めちゃう方がちょっと怖いことだなとおもっちゃうからね。でも、なんかその、バレエってまた一つの世界、それに触れると、すごく今まで知らなかった世界が広がるから、そういうのはすごく分かる。
👨おんなじような話をするのであれば、前にも話したかもしれないけれど、グレゴリー・ハインズさんっていうタップダンサー,
👩はいはい。
👨で、そのお兄さんにモーリスハインズさんという方がいらっしゃって、その人が6週間くらいブロードウェイで、「Uptown It’s hot」というブラックミュージックの歴史みたいなレビューをやって、で、その時に初めて超一流のタップっていうのを観たのね。
👩ああぁ、全然違うでしょ、それもまた世界が広がるよね。
👨そう。
👩もういろいろ観たい。みんな観ようね。
👨うふふ。
👩いや、なんか実際久しぶりに歌舞伎も観たもので、もう衝撃というかね、改めて良いものは良いというのを感じたので。まあそれもあっておじおねはそういう話をしているのですけれどね。
👨今日の猿之助さんのやつも。きっと20年もすれば伝説になるような、多分。
👩そうかもしれない。
👨観ているときってさ、割合とその価値っていうのを・・、これは価値があるものだって風には観ないんだよ。それ以前に捉えられちゃって。
👩そうなの、なんかね、いいんだわ、その、人それぞれにちゃんと違っていいし、嵌まんない人はきっと嵌まらないから。でもまず扉を開くことは大事だよなっていうのは思います。
👨うん。
👩我々は思います。おじおねはいろんな扉を開きたい。あなたのいろんな扉を開きたいと思っております。んふふ。
👨そうですね。まあまだコロナも大変だけれど、でも一応なんか劇場もだいぶ開いてきたし、今週は私も2本組みの公演3本、計6作品、今吉祥寺シアターでやっているものをを観てきたりもしたし。なんか少しずつ、しかもその6作品が全部よい出来だったりもしたので。
👩はい、それは次の話にでも。
👨これからは、コロナが無くなるのをじっくり待って、その間に観ることができるものは観て過ごしていきたいと思いますので・・。
👩共に心に栄養を与えていきましょう。
👨そうですね、いいことだ。さて、そろそろ終わりますか。
👩はい。
👨では演劇のおじさんと
👩おねえさんでした。また次回もよろしくお願いします。

=== ===
令和三年四月大歌舞伎
第一部

一、 猿翁十種の内 小鍛冶(こかじ)
童子実は稲荷明神      中車
三條小鍛冶宗近     猿之助
巫女                                    壱太郎
弟子                                    笑三郎
弟子                                    笑也
弟子                                    猿弥
勅使橘道成                         左團次

二、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)
[B日程]
武蔵坊弁慶                    幸四郎
富樫左衛門                         松也
亀井六郎                             友右衛門
片岡八郎                             高麗蔵
駿河次郎                             廣太郎
常陸坊海尊                          錦吾
源義経                                 雀右衛門

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