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「ないまぜになった時間を掬い取れるのは、やっぱり演劇なんじゃないかな」排気口 インタビュー

佐藤佐吉演劇祭実行委員会が、参加団体の魅力を紹介するため稽古中のお忙しい所にインタビューを敢行!第12弾は排気口の菊地穂波さん、佐藤暉さん、中村ボリさん、坂本ヤマトさんにお話を伺いました!

佐藤佐吉演劇祭2024参加団体インタビュー
ゲスト:菊地穂波・佐藤暉・中村ボリ・坂本ヤマト(排気口)
聞き手:内田倭史(佐藤佐吉演劇祭実行委員会)


みんなでずっと遊んでて

内田:自己紹介をお願いします!
菊地:排気口の 作・演出をしています。菊地穂波です。よろしくお願いします。
佐藤:排気口の役者の佐藤暉です。
中村:中村ボリです。
坂本:坂本ヤマトです。
菊地:排気口は、大学で全員知り合って、元々先輩後輩だったり友人だったりという感じで、学年も年齢もバラバラなんですけれども、演劇をなんとなくやり始めて、なんとなく活動して、今に至る感じです。 
内田:めちゃくちゃざっくり(笑)! 
菊地みんなでずっと遊んでて、2019 年ぐらいからしっかり演劇をやり始めました(笑)。2019年に、チケットって売り切れることがあるんだっていうことを知って、その後のワークショップとかも結構人が来てくれて、よしこれからだ!って思い始めたタイミングですぐにコロナ禍になっちゃって。それで一旦一年間くらい休みました。コロナが少しだけ落ち着いてきた2021年の夏ごろに演劇祭に誘ってもらい、そこからじゃあまたやろうかって活動を再開しました。
内田:出会いは演劇サークルですか?
佐藤:いや、ゼミで出会ったんです。
中村:しかも演劇のゼミじゃないんです。映像のゼミで。
佐藤:ややこしいんですけど、穂波さんが僕の先輩で、ヤマトさんは僕と同期なんですけど、年齢は一番上なんです。で、ボリが一番チビで2個下。
内田:みんなバラバラなんですね。
佐藤:けど何故か息があって、いや息があってたわけでもないか…。なんか一緒にいました。
内田:その頃から集まって演劇をやってたんですか?
佐藤:いや、遊んでたり、お酒飲んでたりしてました。
菊地:ちゃんとやり始めたのは2019年。たぶんその前の僕らのことを知ってる人はまずいないと思います。
佐藤:空白の5年くらいがありました。
菊地:遊んでた時期(笑)。
佐藤:最初の頃にやってた劇場もなくなったしね。本当にある種の身内しか来ないというか、そういうノリでしたね。

稽古風景

台本よりも作品の方が優先

内田:稽古で大切にしていることはありますか?
佐藤:風通し?
菊地:風通しですね。
佐藤:穂波さんが言ったから正しいとか、僕らが言ったからそうしなきゃって言う風にならずに、客演の人も排気口の人も同じフラットな状態で意見が出せる風通しのいい雰囲気というか、同じレベルで話し会える環境がいいなと思っています。あと、感染症とかまだあるんで、そういう意味でも風通しが良い方がいい。
菊地:あとは、怒鳴らないですね。イライラしない。物に当たらない。そんぐらいですか? 
内田:大切ですね。
坂本:穂波さんは危ない演出もつけないしね。
菊地:怪我しそうな演出はつけないね。

内田:どういう風に作品を作っていますか?
菊地:ぼくらは普通だと思いますよ。僕が台本書いてきて、稽古場行って、演出する、みたいな。特別なことは何もやってないです。すみません(笑)。
中村:最近は台本があるんですけど、昔は穂波さんがセリフを喋って、それをみんなでメモ取って覚えてたりしました。
佐藤:2019年以降はPDFを覚えて(笑)。
菊地:そうね。PDFを覚えてからは普通に台本を用意するようになりました(笑)。
佐藤:でも、台本の変更は結構多いと思います。
菊地:めっちゃ変えちゃいますね、稽古場で。
佐藤:結構穂波さんのテンションによるところが大きくて、調子がいい時は本当に変更が多いんですよ。どんどんセリフが増えて(笑)。でも疲れてる時は全然変更ないよね。
菊地:そんなことないよ(笑)!。でも稽古で何回もやってもらって、うまくいかない時は変えちゃいますね。やっぱりできないことをできるようにしていくってよりはその人にあったものに変えちゃいます。台本は書き上げたらおわりだけど、作品自体はみんなで作るものだから、台本よりも作品の方が優先。だから書き換えるのは全然苦じゃない

突破口はお酒とネカフェ

内田:創作の中で困った時、どう突破口を開けていますか?
菊地:お酒ですかね、僕は。
一同:(笑)。
中村:よくない(笑)。
菊地:もうやめちゃったんですけど、タバコを吸ってた時はタバコとお酒(笑)。台本を書く時はネカフェに籠っていて、今日もネカフェからここに来たんですけど、インタビューが終わったら飲みに行きたいなって思ってます。
坂本:いや、ネカフェに戻って欲しいわ(笑)。
内田:いつも同じネカフェに籠ってるんですか?
菊地:毎回台本を書くたびに行くので顔馴染みになっちゃって。若くて優しい店員さんがいるんです。書いている時は、そこにずっと籠ってます。お風呂に入りに一回家に帰ったりはするんですけど。ネカフェのシャワーはちょっと嫌なので。
坂本:変なプライド持つなよ(笑)
菊地:なので、突破口はお酒とネカフェですね
内田:めちゃくちゃ具体的ですね(笑)。
佐藤:それで突破してるんだったらいいや。
内田:みなさんは何かありますか?
佐藤:排気口のいいところってあんまり悩まないところだと思います。みんなよほどのことがないとあんまり気にしないというか。なんか「どうにかなるっしょ」の精神が強すぎちゃう節もあると思います。とりあえず飲もうか、みたいな。
中村:わたしも本番ができたらそれでいいって思ってますね。

稽古風景

打ち上げの次の日の朝に飲む、しじみの味噌汁

内田:演劇をやっていて一番好きな瞬間はいつですか?
菊地:僕は本番を客席で見てるのが一番好きですね。
中村:差し入れの食べ物を食べてる時が好き(笑)。
一同:(笑)
菊地:差し入れくださいって太字で書いてもらった方がいいんじゃない?
中村差し入れが欲しいです。
佐藤:僕はあれかな? 仕込みが終わった後の舞台を見るとき。稽古場だと殺風景だけど、劇場に入って仕込みが終わったら、あ!こんな感じになるんだって一気にイメージが湧いてくる。その瞬間が好きです。
菊地:めちゃくちゃいいな。俺もそっちだ、聞いててマジで思った。
一同:(笑)。
内田:坂本さんはどうですか?
坂本打ち上げの次の日の朝に飲む、しじみの味噌汁ですかね。
菊地:演劇関係ないじゃん!(笑)
佐藤:酒飲んだ後何がいいですかって質問じゃないからね(笑)。
一同:(笑)。

ないまぜになった時間を掬い取れるのはやっぱり演劇なんじゃないかな

内田:今回の作品「光だと気づいた順に触れる指たち」はどんな作品ですか?
菊地:とにかく何でもない時間っていうのを書ければいいかなと思っています。僕ら、バンバン公演をやりすぎてる感があるんですよ。ここまでずっと、ひとつの公演が終わったら次の公演の稽古、みたいなスケジュールが続いていて。物語がある作品をずっと作ってきたので、今回は、なんでもない時間、ただみんなが喋っていて、ただみんなが離れていくっていう時間。そう言うものを書ければいいなと思っています。どんな作品かって言うと、あの、太文字で書いて欲しいんですけど、みんなでお酒飲んでて、うわーって盛り上がってる時に、自分がちょっといいなって思ってる子が楽しそうにしてて、やっぱいい子だなって改めて思って、その子を見てたらふと、言葉も何もないんだけれども、”その子は他の誰かが好きなんだ”っていう予感が生まれる
佐藤:はい?
菊地という時間を描きたい。
中村:めっちゃ太文字の部分多いじゃん。
菊地その子の好意を向けられてるのは自分じゃないんだって、気づいてしまったんだけど、その場はすごい楽しい、みたいな。このないまぜになった時間を掬い取れるのはやっぱり演劇なんじゃないかなって?
内田:なるほど。
佐藤:めっちゃ太字になってる。
菊地それが佐藤佐吉なんじゃないかなと。
佐藤:まとめ雑すぎん?
菊地恋の力で殴り込みです。
内田:ありがとうございます。楽しみです。
佐藤:少しでも盛り上げられればと思います。
菊地:王子小劇場でやれるのは本当に楽しみです。僕らなりに頑張るんで、よろしくお願いします!

稽古風景

坂本:あのちょっといいですか?
内田:はい
坂本:先程の質問ですが猫お風呂です。
佐藤:なに?
坂本:自分にとっての突破口は猫お風呂です。
内田:猫お風呂ってなんですか?
坂本:猫の写真を眺めながらお風呂に入ります。その時お風呂の温度は56度に設定しています。熱々のお風呂に浸かりながらスマホで猫の写真を見つめていると精神が落ち着きます。
佐藤:なに?
坂本:それと、今僕がハマっているのは架空のインセクトキメラウォーズです。
内田:架空のインセクトキメラウォーズってなんですか?
坂本:例えば稽古場に向かう電車とかで昆虫を思い浮かべるんです。
内田:はい
坂本:オオスズメバチを思い浮かべて、対戦相手のカマキリも思い浮かべて、その2匹を頭の中で闘わせます。その時に溶けていく箇所をキメラして架空のインセクトウォーズつまり昆虫戦争を作るのにハマっています。
佐藤:なに?
坂本:頭の中で闘わせていると段々とオススメバチの輪郭の部分が溶けていきます。そこに対戦相手のカマキリの輪郭をくっつけるみたいな感じです。そうするとキメラされた架空のインセクトウォーズになります。
一同:、、、
坂本:現時点で既に14種類のインセクトウォーズが僕の頭の中には誕生しています。それを2つに分けてクリーチャー戦争を開始するのが今後の目標です。クリーチャー戦争が始まった時点で僕はインナーワールドに飲み込まれてしまいます。
一同:、、、
坂本:今までありがとうございました。

稽古風景

四人の飾り気のない気さくな空気感に笑わせられっぱなしのインタビューでした。排気口の『光だと気づいた順に触れる指たち』は3/21(木)から開幕!20日の初日は中止となってしまいましたが、22日の13時に追加公演もあります!

公演詳細

排気口
想像力に希望を懸けたリリカルなストーリーと、その随所にちりばめられた多層的な言葉のおかしみによって描きだす。誰しもが思い当たる人間の悲哀と、どうしようもなくくだらないユーモアが、舞台上であざやかに結びつくとき、思いがけない生の輝きが誕生する。

佐藤佐吉演劇祭2024参加作品
排気口『光だと気づいた順に触れる指たち』
〇会場:王子小劇場
〇作・演出:菊地穂波
〇出演:佐藤暉、中村ボリ、坂本ヤマト、桂弘、澁川智代、森川錦、海国りん、山田航大、小川雄気
〇詳細はこちら
https://haikikou.stage.corich.jp(団体HP)
https://en-geki.com/sakichisai2024/haikiko.html(演劇祭特設サイト)

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