見出し画像

新興宗教GEEKS

2019 9.8 sun @下北沢GARAGE 

円盤でもiTunesでも廃盤という幻の重廃盤アルバム『MAGICAL VOX PARANOIA』を頭から順に演奏する、ただそれだけのライブに足を運んだ。

台風(令和元年台風第15号、別名“ファクサイ”という名がついていた。贅沢な名だね)が近づく中、昼間から土砂降りで、下北沢の屈強なお祭り男たちも屋根の下に避難せざるを得ない様子だった。
そんな中小さな日傘を2人でシェアして、私達は会場である下北沢GARAGEへと足を運んだ。(日)傘を差していたのにも関わらず、背中や肩はぐっしょりと濡れており、これから地下で沸き立つであろう熱気をやや憂鬱に捉えた。

だがそんな心配は取り越し苦労となる。開演後から終演まで、後ろからの圧を感じることなく終始マイペースなGIGが執り行われたからである。
それについては、ステージ上のエンドウ.さんが年々フランクになっているのが1つの原因なのではないかと思う。
間違いなくMCは年々面白くなっており、ライブを観に来ているはずなのに、腹を抱えて笑った記憶が、曲を聴いて感動した記憶と同じくらい想起されるからである。
心の底から漫談(ディナーショーでも可)の開催を願っています。金ならいくらでも出す。

GIG中の彼について、感じたことがもう1点ある。以前は、エンドウ.さんの「有り余る上司感」に圧倒されているように見えたメンバー各位であったが、現在は全員サポートメンバーなので、逆にへぇこらしてるのが丁度良く感じられる。立場がやっとあるべき位置に置かれたのではなかろうか。
GEEKSとしての4人がいたときよりも、心なしかエンドウ.さんはステージを遂行しやすそうで、楽しそうで何よりある。



曲目

1.新世界論

2.カスマス
エンドウ.さんの「お前らの曲だ!」という煽りで始まった。無知は罪、低脳は悪。

3.沈まない太陽 

間のMCではただ一言「“てぇふう”来てるから気をつけてね」と言ってニヤリとした。

4.虹色の電流
イントロの軽快なリズムが心地良かった。

5.WONKA
私が1番聴きたかった曲で、エンドウ.さんは歌詞を忘れて「ウアー」と誤魔化していた。

6.サリー

7.刹那ウェイ

独特のチューニングタイムが始まり、「GEEKSらしさ」が増した。ビーボー鳴らすギターのチューニングが、うるさくもなかなか好きな時間である。

間に再びMCを挟む。
「“てぇふう”来てるから身を守る最善の行動を取ってください」と言っていた。2回目。
その後「MVP10周年GIGです」と本公演の説明を始めた。何やら『MAGICAL VOX PARANOIA』発売から10年経ったがゆえの開催らしく、その他にこれといって大きな理由はないらしい。 

唐突に「次の曲の説明するの良いよね」と言ってニヤリとした。続けて「次の曲は、好きな子に想いが届けばいいな、みたいな曲です。聴いてください」とヒィヒィ笑いながら曲の紹介をしていた。 #無理のあるMC

8.Hail2U

9.ペールギュント
曲の複雑さにただただ圧倒される2分18秒だった。ギターがメロディーになったり刻みパートを演奏したりなど目まぐるしくて、エンドウ.さんの手元から目が離せなかった。目のみならず、身動き一つ取れなかった。4人とも大変そうで、「パンクロックバンド」という感じがした。歌詞がある曲よりも4人で1曲を作っている感じが強く、とても良かった。
無事弾き終わったエンドウ.さんは「やったー!」と声を漏らしていた。彼曰く 「山場は越えました」とのこと。 

10. WONDER WORLD
「こんな曲がやりたい、と思ってGEEKSを作った曲です」なんて情緒的な一言の後始まった。この曲を作ったエンドウ.さんの人となりを考えると、自然と涙が溢れてしまうかと思う。溢れはしなかったが。

11.ジェントリーボウイ 

ここで少し長めのMCが入った。
「今日は祭やってるんで、見て帰るといいですよ」から始まり、そこからはお祭り男をdisりまくっていた。以下原文ほぼまま。
「エンドウ.さんは、普段そうじゃない癖に祭の時だけドン・キホーテになる(ガラが悪くなるの意だと思われる)輩が大っ嫌いですからね。神輿担いでりゃ世界一偉いみたいな顔しやがって。道譲ったりしねえもんな。サマソニとかもそうだよ。わざわざキャンプして泊まる奴、そんなに現実逃避したいか。フェスなんか大っ嫌いだよ」
思い出したように続け様にヘイト撒き散らしていて最高だった。なぜかサマソニdisで涙が出た。
最後にエンドウ.さんは「せめてみなさんは世の中を優しい目で見て許して生きてください。エンドウ.さんはもう無理なんで」 と言い、「あと数曲やって帰ります!」 と締めた。

12.GET BACK

13.Smashing Road
ジャーン、とキメるところで、エンドウ.さんが他の3人と目配せ、タイミングを揃えてたのがとても良かった。

14.世界の果て
Smashing Roadの後、まだ曲がありそうな雰囲気の時点で募る想いにまみれていた。生きてる間に聴けると、観られると思っていなかったので本当に嬉しかった。今日下北沢GARAGEに居られて良かったと、今日まで生きていて良かったと、心の底から思った。
それと同時に、もう一生この素敵という言葉では表しきれないほど心地良いサビのメロディーで爆裂するエンドウ.さんを観ることはないのかと思うと悲しくなった。
2つの理由から涙を流すことは禁じえなかったものの、やはり全力でその場を楽しむことができて本当に良かったと思う。
世界の果てについて何も言及せず、ただ演奏して帰るエンドウ.さんがとても格好良かったことは言うまでもない。


ずっと先の未来の話をしてくれる人が好きだ。エンドウ.さんはいつも先の話をして下さる。
2029年まで存在の確約(口約束)をしてくれるバンドなんてそういるもんじゃない。口から出まかせにしても、発言してくれるだけでどこか救われた気分になるし、安心して観続けられる気がする。 

ギークスレイブのはしくれとして、GEEKSもといエンドウ.さんをうつくしいと純粋に思う。ほとばしる汗や唾液がライトに照らされて最高だった。最高にうつくしかったです。
エンドウ.さんの瞼の広さと意図せず作られるえくぼが好き。

わざわざ今日のために髪を赤く染めて、目の周りを黒く塗るのもやめないでいてくれて、GEEKSの未来の存在を仄めかしてくれて、本当にありがたく思う。

他人のために自らのビジュアルに気を遣うような人ではないため、たぶん全部やりたくてやってるのだろうが、それが回り回って私達をどうにかさせる要因になってるから、「新興宗教GEEKS」は最強なのである。


『MAGICAL VOX PARANOIA』を頭から順に演奏する、ただそれだけのライブだったが、本当にそれがベストで、これ以上がなくて、いかに曲の質が高いのかが窺えるGIGであった。
エンドウ.さんがフランクでMCが面白かったことも重要ではあるが。
曲も良いがエンドウ.さんが作り出すあのユルい雰囲気がたまらなく好きだ。MCで一生笑ってた。本当に面白い人だ。

『BABBAGE』10周年ライブはアルバムを2周してくれ。頼むから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?