チャッターアイランド vol.22

『チャッターアイランド』はDJ/プロデューサーのokadadaとDJ/ライターのshakkeがしゃべったことを記録する、という趣旨のテキスト/音声コンテンツです。あいかわらずのマイペースな更新頻度ですが、ボチボチやっていきますので引き続きよろしくお願いします。(※2022年11月24日収録)

タイパよりナイパ

okadada このあいだ、渋谷のBOUNCEで和田(Wardaa)さんにひさびさに会って。“ピンチョン読んだんですよ”みたいな話をしたんですよ。“よく読むねぇ”って言ってましたけど。で、ちょうどそのちょっと前に和田さんがヒップホップのフェスに行って、ひとり持ち時間5分のライブ観てさすがに疲れた、って話をしてて。さすがにもうちょっと観たかったかなっていう。“タイパ”という概念。タイムパフォーマンスってやつですね。そういういわゆるファスト消費みたいなものも、ここまでくるとさすがにちょっとつらくなってくる、みたいなこと言ってて。っていう流れで、自分が急に古典とか長い作品読むのとかも、そういうものとのバランスを無意識に取ってたんかなって思って。
shakke それはあるかもね。
okadada “ちょっともうわからんわ”っていうぐらいのものに改めてチャレンジするっていうのもそういうことへのバランス取りだったのかもなぁって話をして。
shakke タイパ問題、あるよねぇ。やっぱタイパが極まるとさ、最終的に曲自体の時間が短くなるとか、曲のスピードが早くなるみたいなこともあって。ここ半年くらいでスピードアップバージョン……表記的には“Sped Up”って書くんだけど、そういう再生速度を上げた早回しバージョンがだいたいTikTokとかで使われてて、それこそタイパの最たるもんだよね。でもそれはそれで聴き心地としておもしろいから好きではあるんだけど、なんか極まるとこういうことになるよなぁとは思う。
okadada どうなんでしょうね。自分はよくわかんないんですよね。おもしろいんやったら長いほうがええやんって思っちゃうから。いい音楽なら長いほうが得やとすら思ってるとこあるんで。
shakke そういうのって堆積で成り立つものでもあるからね。
okadada はいはいはい。
shakke 音源もライブも時間経過の堆積でもあるし。
okadada 早く終わっちゃうと、また聴かなあかんと思うから。
shakke まあ、それはそれで貧乏性ということでもあるけど。
okadada そうっすねぇ。でも皮肉という意味合いも半分ぐらいはあるんじゃないですか。
shakke たしかにね。それもあると思う。
okadada それこそ“若い子はこうなはずだ”って勝手に思っちゃうようなところあるじゃないっすか。若者のブームを十把一絡げにして語るみたいなんもよくあるじゃないですか。そういうふうな感じもするなぁ。“若者はファスト消費でタイパなんですよ!”みたいな。そのほうが納得しやすいからそう言ってる、みたいな感じは正直ちょっとしている。しかし、もちろん傾向はあるっていうね。一絡げにはできないけど傾向はあると思ってる。
shakke でもそのヒップホップフェスはタイパ問題っていうよりも、出演者が多ければ得、みたいな方向性だと思うんだよね。チケットを売るタイミングでタイムテーブルを出してるわけじゃないから、来てるお客さんはひとアーティスト持ち時間5分とかを前提で来てるわけではないので、どちらかというとたくさんアーティストが出ることへのお得感みたいなことで来てるんだろうなと。そのことのほうが自分的には問題……まあそういうイベントもたくさんあるからもはや麻痺してるけど、自分としては出演者が少ないほうがおもしろいって思っちゃうから、そこは逆だなと思ったりする。
okadada それって極まってるだけでフェスブームからずっといっしょやんとは思うなぁ。クラブでもそうじゃないっすか。昔からそういうのはあって、最近はより極まったなとは思いますけど、あんま変わってないって感じもしますね。
shakke たしかに。
okadada それにしても量が多すぎるやろ、みたいなのはありますけどね。アイドルイベントとかすごいじゃないっすか? アイドルのでっかいフェスとか“150組出ます!”みたいなのも見たし。
shakke それって1日で?
okadada でっかい体育館をいくつかに仕切って。
shakke へえ~、すごいなぁ。でもどうしますか、オカダさん。たとえば“オカダさんにうちのフェス出てもらいたいんですよ! ただちょっと出演者多くて、DJの時間が5分……ギリ8分くらいでお願いしたいんですけど”みたいなオファー。
okadada やるやる! いや、5分~8分は逆にスゴいやろ。
shakke なにができるだろうね?
okadada まず家で練習していきますね。そこまでいったらDJコンテストみたいなね、前にあったじゃないっすか、DJ MAGがやってた15分のセットで審査するDJコンテスト。あれに近いんじゃないですか。でも持ち時間30分って言われたら“う~ん……”って思うけど……あ、クラブの周年イベントとかだとあるし、それはそれでいいんだけど。そうじゃなくて30分って言われたら“う~ん……”となるけど、5分でと言われたら逆にスゴいんじゃないかな。“もう持ち時間5分、1曲でいったろうかな”みたいな。
shakke ハハハハハハ!
okadada でもタイパね。……いや、やっぱ“タイパがいい”っていうことはそもそも“すぐ済む”ってことじゃないでしょとは思いますけどね。“長くゆっくり楽しめる”というのもタイムパフォーマンスいいんじゃないかって思いますけど、まあそういうことじゃないんでしょうね、たぶん。
shakke そもそもここで言うタイパの前提として“知ってる曲を何曲も聴ける”っていうのがあるよね。
okadada やっぱよくねえな。アングル仕掛けていきますか。タイパ、よくないです!
shakke ハハハハハ!
okadada ……わかった! タイパよりナイパや!
shakke ん? ナイパ?
okadada ナイスパーティー。
shakke ハハハハハハ! うるせえ~!
okadada “おい、おまえら聞いてるか? タイパとか言うてんな! ナイパや、ナイパ!”
shakke レゲエDJみたいに音止めてマイク持ってな。
okadada “いいか? タイパとか言うてんなよ? タイパよりナイパやろ!”
一同 ポゥポゥポゥポゥ!
okadada ハハハハハハハハハハハ!
shakke ハハハハハハハハハハハ!

●チャッターアイランド#22でshakkeが紹介した書籍

『新幹線と特撮』
発行/おつまみプロ
自主・資料性博覧会頒布書籍

『東京タワーと特撮』
発行/おつまみプロ
自主・資料性博覧会頒布書籍

『特撮版人間臨終図鑑・下』
発行/タイム・トンネル
自主・資料性博覧会頒布書籍

『アリアケパンチ vol.3 AKIRA50年史』
発行/おしゃま図書
自主・資料性博覧会頒布書籍

『明治時代の道頓堀五座の様々な記録本』
発行/立華屋
自主・資料性博覧会頒布書籍

『変装探偵Ⅰ・Ⅱ評全集』
発行/ビオラン亭ガメラ
自主・資料性博覧会頒布書籍

『あなたの知らない2時間ドラマ制作の世界』
発行/TMP
自主・資料性博覧会頒布書籍

『前売券原寸大図鑑』
発行/マグナ商店
自主・資料性博覧会頒布書籍

『流されて円楽に 流れつくか圓生に』
著/六代目三遊亭円楽
出版/竹書房

●チャッターアイランド#22でokadadaが紹介した書籍

『映画の生体解剖 恐怖と恍惚のシネマガイド』
著/稲生平太郎、高橋洋
出版/洋泉社

『「伝統」とは何か』
著/大塚英志
出版/ちくま新書

『寓話』
著/小島信夫
発行/保坂和志個人出版

『カフカの父親』
著/トンマーゾ・ランドルフィ
出版/白水社

『脱構築と正義』
著/ジャック・デリダ
出版/講談社

『文藝 2022年冬季号』
出版/河出書房新社

フル音声版は以下をクリック

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