チャッターアイランド vol.8

『チャッターアイランド』はDJ/プロデューサーのokadadaとDJ/ライターのshakkeがしゃべったことを記録する、という趣旨のテキスト/音声コンテンツです。毎月1回、月末の配信を予定してます。

神戸で遭遇したすこし不思議な話

okadada 8年ぐらい前に神戸のパーティーでDJして、終わってから友達3人ぐらいとメシ食おうってなって。24時間やってる中華料理屋があるんで、そこでメシ食ってたら、めっちゃでかい白人男性が入ってきてこっちに話しかけてくるんすよ、英語で。“なに?”って思ってたら近くに寄ってきて。“あ、ごめん!”みたいな。“遠くから見たら外国人やと思って英語で喋ってもうてたわ”って。オレらも“ああ……”って感じで。
shakke 向こうは英語で話してたん?
okadada いや、日本語で。普通に流暢な日本語ね。オレらもどうテンションを持っていったらいいかわかんなかったんだけど、向こうは酔っ払ってるというか陽気なひとで、隣に座ってきたんですよ。こっち3人のテーブルの横のテーブルに座って、けっこう話しかけてくる感じで。で、こっちも最初どういうテンションで交流したらいいかわからなかったんだけど、向こうが“なにしてたん?”って訊くから、“クラブ行ってた”って言って。で、“そうなん? オレもやねん”みたいな。それで“オレらはさっきまでDJやってた”って話になって。で、そのときいた3人ともアニソンかけたりもしてて。どんな音楽が好きかみたいな話になって、“アニメの曲とかも好きだよ”って言ったら、“え、アニメの曲好きなん? じゃあ菅野よう子とか知ってる?”って言われたんすよね。いるじゃないすか、それこそ『攻殻機動隊』とかの音楽やってるひと。“オレらみんなめっちゃ好きやで”って言ったら“マジで? オレ、菅野よう子の曲で歌詞書いてんねん”って。
shakke へええ!
okadada “自分ら『カウボーイビバップ』って好き? あれのさ、オープニングあるやろ? あの曲で最初しゃべってるの、オレやねん”って。
shakke ハハハハハ! “Tank!”?
okadada そうそう。最初のほうで“3,2,1, Let's Jam”って言ってるとこあるじゃないっすか。それ言ってるヤツやったんすよ。
shakke すごいね!
okadada で、名前聞いてその場で調べたら、ほんまにそうやって。みんなその曲好きやったから“すげえ!”ってなって。向こうも“知っててくれてうれしいなぁ”みたいな感じで、そこからこっちのテーブル座って“乾杯!”ってなって。めっちゃテンション上がって。そのひとは当時、菅野さんの英詞曲の歌詞を書いてるひとみたいで。本業は作詞家で。なんかすげえ変な空間やったんすけど、それでテンション上がって朝の9時くらいまでしゃべったんすよね。話してるうちに好きな作詞家の話とかになって、そいつがいちばん影響を受けたのがJohn Lennonと、The Doorsの……
shakke Jim Morrison?
okadada そう。そのふたりが陰と陽としてあるみたいで。John Lennonが陽で、Jim Morrisonが陰、それが自分のなかで相反してる、っていうような話をしてたら、だんだんスピリチュアルじゃないけど、内なるもの、神秘性に関する突っ込んだ話になってきて。で、こっからが本題なんですけど。神秘的なエナジーとか魂とか信じるか信じないかみたいな話になって、オレは信じてないわけじゃないけど、絶対あるとも言えへん。信じるに足る状況にいきたいと思ってるってことをそのひとにして。懐疑的やけど、そこまで否定派じゃないって言ったら、向こうも“それはすごいわかるよ”って。そいつはそういう神秘主義とか魂とかはけっこう信じてると。“なんでかっていうと、10年前くらいにガンになったんよ。で、けっこう進行してて、ステージ3とかまでいってて”って言うんすよ。
shakke ええ……。
okadada で、医者にももう無理やって言われてて、結婚もしてるし、もうダメだ、どうしようと思ってたみたいなんすよ。それでいろんな病院に行ったり、それこそ拝み屋さんじゃないけど、藁にもすがる気持ちでそういうのも試したけどもちろん治らへんくて。どうしようと思ってたら、名前忘れたけど、当時の菅野よう子さん仕事で歌ってたあるシンガーのひとがいて、もうシンガーはやめてて気功治療みたいなのをやってるっていう。要は手かざして治療する、みたいな。で、うさんくさいって思われるのもわかってるからおおっぴらにはやってなくて、マンションの一室で紹介制でやってるっていう。で、彼はそのひとといっしょに仕事をしたこともあったから仲もよかったんっすって。で、その気功治療やってるひとからそいつに電話かかってきて。“聞いたんだけどさ、ガンになったんだって?”って言われて。“わたし、いまは気功治療みたいなことやってて、あなたは友達やから助けたい。お金もいらんし、信じなくてもいいから一度来てくれ”と。で、それやったら行くじゃないっすか、藁にもすがる気持ちで。お金もいらんって言ってるし。
shakke まぁ、ものは試しにという感じでね。
okadada で、久々に会って話もそこそこに施術ということになって。ベッドに横たわって。彼は胃ガンだったらしかったんだけど、その気功のひとにはどこのガンかは言ってなかったみたいで。でも体に手をかざしたら、胃のあたりで手が止まって“このあたりだね”って言われたっていう。
shakke おお……。
okadada で、そこに手を当てて、“んっ!”って力を入れたら、その部分がめっちゃ熱くなったんですって。そしたら、その施術してるひとがもうボロボロ泣いてて。10分ぐらいその状態やったらしいんだけど、手を当ててたところも熱くなくなって、気功のひとも“これでたぶん大丈夫だと思うから”って。で、病院で診てもらったら実際に治ってたという。
shakke うわぁ、すごいね!
okadada すごい話っすよね。で、彼は“この話をきみたちは信じんくてもいい。でも、オレはそれで治っちゃったからそれ以降は信じるしかなくなった”って。それはそうやろなと思って。自分もその状況だったらそうなると思うし。とはいえ、結局は飲み屋で会ったヤツに聞いた話やから、そこまで信じるかっつったら信じれへんけど。でもね、占いとかスピリチュアル……自分は話としておもしろいんでオカルト全般好きですけど、心からそういうことを信じるにはこういう体験がないと無理そうかなっていう。
shakke たしかにね。我々はいまのところノンスピリチュアルな側というか、熱心に信仰してる宗教とかがないわけだけど、もしそういった体験があって、それが信じるに足るって確証ができちゃったら……
okadada だから陰謀論とかは笑えないですからね。つねに自分がそうなる可能性はあるっていう。新興宗教にしても、昨今言われてるような陰謀論にしてもそうっすよね。
shakke そうね。陰謀論もさ、確証っていうより、自分の信じたい方向というものがあって、それが乗っかっちゃったら、やっぱりそこに向かっちゃう気持ちっていうのはなくはないよなっていう。

自分の葬儀でかけたい曲

okadada 自分の葬儀の出棺のときにこういう曲かけてほしい、みたいな。
shakke なんだっけ? レアグルーヴ・クラシックでさ、ナナナナナ〜ナ(鼻歌)みたいな。
okadada わからん、わからん。もうちょっと情報ください。
shakke なんだっけ。軽めのサンバみたいなリズムの……その曲とかはけっこういいな。最近はよくドトールで原稿書いたりしてて、そこでかかってんだよね(※Sergio Mendesの“Funky Bahia”でした)。あとはなんだろうね。Warとか?
okadada あぁ、“Why Can't We Be Friends”。
shakke そうそう。でも、それはちょっと泣かしにかかってんなぁ!
okadada 死ぬときまで外部を気にすんなよ……。死ぬときまでパブリックイメージを気にするのはよくないっすよ。
shakke いや、でもいい曲だからなぁ。
okadada Larry Levanの出棺のときの曲はMFSBの“Love Is The Message”だったらしいっすよ。
shakke それ、めっちゃいいじゃん。オカダさんはなんだろうね?
okadada The Flaming Ripsの“Race For The Prize”。それか坂本慎太郎とかですかね。ああいう無常感がある明るい曲みたいなのはいいかもしれないっすね。(NUMBER GIRLの)“OMOIDE IN MY HEAD”とかがいいっすか?
shakke ハハハハハ! やばいね!
okadada でも、これってオレらの世代のエモ曲じゃないっすか、言ったら。50年後ぐらいに70歳とか80歳ぐらいで、オレら世代のヤツが“出棺です”ってタイミングでジャンジャンジャンジャジャンみたいな感じで……フハハハハ!
shakke フフフ……。笑っちゃうけどねぇ。生前はこういうのが好きだったんだろうなってなるけどね。あぁ、オレはあとあの曲かな。Ricardo Villalobosのホルンが入る曲(“Fizheuer Zieheuer”)。
okadada ああ、テクノ送りね。
shakke あの曲はさ、微妙にユーモラスでもあるし、意外といい感じかも。
okadada でも、なんでもいいんですけど、やっぱGReeeeNとかはイヤですよ。まぁ好きだったんならしゃあないけど。
shakke それだったら國府田マリ子の“Twin memories”とかでもいいや。
okadada 葬儀に声優オタがいたら涙するでしょうけど……。
shakke 号泣でしょ。オカダさんは個人的な曲を選びがちだけど、いわゆるパブリックイメージみたいなのものもちょっと考慮したほうがいいんじゃないかなと思いますけどね。
okadada いやぁ、死んだあとにそんなこと気にすんのはどうかしてますよ。
shakke でも葬儀とかは自分のためとかでもないじゃん。
okadada まぁまぁまぁ。でも最後のいたずらというかね。あとは、たとえば映画とかで画面上に写ってるものと感情が相反してるみたいなことってあるじゃないですか。これはすごい好きってわけじゃないけど『リトル・ミス・サンシャイン』って映画があるじゃないですか。

okadada そこでMC Hammerの“U Can't Touch This”がかかるんですけど、音楽はあんな感じなんやけどめっちゃいいシーンという。ニュアンスとしてはそんな感じがいいっすね。エモい曲じゃないんだけど……
shakke その内情がわかるひとが聴けば泣けるという。
okadada そういうのであればいい! まぁそれはあくまで映画っすけどね。
shakke 映画でいったら『柔道龍虎房』って作品があって。香港映画かな。なんでもない食事シーンの裏でうっすらハワイアンが流れてるシーンがあって、それが印象的で。そう思うと葬式でハワイアンとかがずっと流れてるのはめっちゃいいなと思った。なんでもない凪の気持ちというか。
okadada そうっすね。その感じもありですね。それこそさっき“リズムボックスの音さえ鳴ってればなんでもいい”って言ってたじゃないっすか。曲じゃなくてもリズムボックスが鳴ってれば。
shakke ああ、いいね!
okadada ACE TONEのタッタカタッツータッタカ……みたいなんがずっと鳴ってるっていう。
shakke それだ! ちょっと軽快さがほしいね。
okadada 演奏してもらってもいいんじゃないですか?
shakke いや、軽快なリズムパターンであればリズムボックスでいい。
okadada じゃあリズムボックスのサンバボタン押しとけばいいっすね。
shakke それはひょうきんでいいですね。


音声は以下より

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