チャッターアイランド vol.20

『チャッターアイランド』はDJ/プロデューサーのokadadaとDJ/ライターのshakkeがしゃべったことを記録する、という趣旨のテキスト/音声コンテンツです。忙しかったりサボったりで長らくお休みしておりましたが、今後もボチボチやっていきます。(※2022年5月2日収録)

お酒はほどほどに

shakke こないだもどっかでさ、昔はクラブでお酒たくさん飲まされたねって話をしたじゃん。
okadada あぁ、してましたね。
shakke 話聞いてたら、けっこうオカダさんもね、これまで飲まされてるなぁってなって。
okadada とは言いつつ、楽しんでる自分もいますからね。でもクラブで“ショット飲もう!”みたいなときにほかのひとに言いますけどね、“マジで無理だったらいいから”って。本当にオレに気を使うとかはなくていいよって。年下の子とかもいるし断りづらいじゃないっすか。とはいえ楽しいですからね、正直。こう言っちゃなんですけど。
shakke まぁ、景気付けとしてね。
okadada 若いときほどああいうのって楽しいじゃないですか。もちろん嫌いなひとがいるのもわかりますけどね。ちょっとお酒でぶっ潰れて記憶なくすぐらいのことをしてみたいって欲望ってやっぱりあるんじゃないかなぁと思う。
shakke 経験としてね。
okadada 40歳過ぎていつもそんなんとかだったら“いつまでやってんねん……”とかなるけど、20歳前後くらいで何回かそういう経験して自分の限界みたいのをわかっとく、っていうのはいいんじゃないかなとは。一度くらい中二病かかっとけ、みたいな話ですよね。耐性つけるために。
shakke そういえば、新宿OTOで働いてたときに急遽祝日のイベントが空いちゃったからオレがイベントやるってことがあって。やったはいいものの、そこまで集客できなくって。そのぶんバーの売り上げだけは伸ばそうと思って自分で飲むわけですよ。そこでは赤ワインがボトルで買うにはいちばん安くって、しかもワインのショットとかだったらテキーラとかウィスキーとかよりは度数が低いからさ。それで赤ワインをボトルで買ってショットをガーッと飲むと。でも10人くらいしかお客さん来てないからさ、ほぼほぼオレが飲むわけで。最終的にワインが9本くらい空いて、そのうち自分で6本ぶんくらいは飲んでたって感じで。
okadada うわぁ……。
shakke それで人生ではじめてくらい記憶をなくしてね。起きたら朝9時くらいで、パーティーももちろん終わってて。目を覚ましたらフロアの真ん中に大の字で寝てたっていう。で、お店のスタッフに電話して“昨日はすいません”みたいな。で、スタッフが言うには“昨日すごかったね〜。朝の4時くらいにフロアで潰れてたから、吐いたものがノドに詰まらないように横向きにしてあげたら、吐いちゃってさ。そしたら吐いたなかに針金が入ってたよ”って。
okadada ハハハハハ!
shakke オレ、胃のなかで針金を練成できるようになってて。
okadada フフフ……。ちがうでしょ。ワインの留め具かなんかじゃないっすか?
shakke こわっ!
okadada こわっ!
shakke しかもパーティーの翌日が友達の結婚式で司会をやることになってて。でも、もうノドはダメになってるし、二日酔いでぜんぜん動けないしで、欠席したっていう。申し訳ないことしたなぁ。
okadada わぁ、最悪っすねぇ……。でも健気オーガナイザーにありがちなことっすけどね。“ここはなんとか自分が場を立てねば!”みたいな。お酒ねぇ……ほんとほどほどにしてください。
shakke オカダさんはお酒で記憶なくしたりとかあった?
okadada 完全に無くしたのは1回だけかな。シャケちゃんとおなじ感じで、起きたらフロアの真ん中大の字になって寝てたっていう。で、トイレで吐いて、帰りは友達に手を引いてもらってましたもん、もう見えないんで。視界が右上しか見えない。両目が開いてんのか開いてないのかわかんないっすけど。空と看板しか見えないなか、レコードバッグ引いて連れて帰ってもらって。その日がいちばんひどかったっすねぇ。
shakke テキーラで?
okadada テキーラ、焼酎、ワインかな。テキーラのショット12杯ぐらい。平日でお客さん15人……しかも酒飲みの集団で、途中から車座になって飲んでたっすね。
shakke ハハハハハ。
okadada それが21歳くらいだったんですけど。まぁね、急性アルコール中毒とかも危ないんで……
shakke 身体と相談しつつね。
okadada 相談しつつ、若いうちはいいんじゃないですかね、やっといても。
shakke もうやりたくないなぁ!
okadada ぜんぜんやってますけどね。ぜんぜん同世代でもやってるひといてタフだなって思いますよ。でもなくなりましたねぇ。昔に比べて先輩から“(ショット)いくか?”って言われて、“はい! いきます!”みたいなやつがなくなった。
shakke そもそも先輩がだんだん少なくなってきたよね。
okadada そういうことですね。そして自分もお酒の強要みたいなのもしないし。どんどん飲まなくなってきてるっすね。
shakke あとオカダさんは東京に出てくるのが遅かったっていうのもあるよね。ある程度名前があって上京してるから、みんな気を使ってくれるってこともあるだろうし。
okadada そうやと思いますよ。大阪に住んでたころと比べると少なくなってますね。でもこないだもありましたけどね。渋谷の百軒店にBOUNCEっていうDJバーが新しくできて。そこのオープンの日にシャケちゃんとKMくんとDaBookさんでDJやったんすけど、バーカウンターのど真ん中にDJブースがあって、その両側からお酒が買える造りなんすよね。で、両側でテキーラの乾杯が行われてて。しかもどっちもオレの知り合いで、左から“オカダさん、乾杯しましょう!”ってきて飲んで、右からも“オカダさん、飲みましょう!”ってきて。
shakke ハハハハハ! 組手やん。
okadada テキーラがサラウンドになったという。
shakke テキーラのドルビー効果で。
okadada 映画館みたいでしたね。

千円札の柄はうどんでいいよ

okadada アメリカ文学を読んで、そこから日本の文学読んでくのもおもしろいっすよね。日本の有名な作品とかも“なんで教科書載ってんねやろ”みたいなことの理由がよくわかるというか。夏目漱石とかも紙幣に描かれたりしてるけど、なんでやろって思うじゃないですか。それってその国の価値観が表出してるってことじゃないっすか。
shakke なるほどね。
okadada お札に描かれるってことがどんなことかっていうのを考えるっていうか。ちょっと前に読んだ本で、貨幣制度と文学を関連付けて研究した本があって。『ドルと紙幣のアメリカ文学 貨幣制度と物語の共振』って本。アメリカで発行された貨幣をすべて並べて、そこになにが描かれているか、なぜ描かれたのか、みたいなことが書いてあって。
shakke その国が見せたいその国史観みたいなことだ。
okadada そうそう。国の価値っていうものをどこに置くかっていうのが如実に表れますよね。日本でいったら、たとえば平等院鳳凰堂とかね。
shakke 平等院鳳凰堂がどんな背景で建立されたのか、みたいなね。それはおもしろいかもしれない。
okadada 新札ができるときに思うんですけど、描かれるのってだいたい人間っすよね。たまに南米とかアジア圏で動物とかあるけど、だいたい人間。オレ、ぜんぜんカマキリとかでいいんすけどね。
shakke ハハハハハ! オレは千円札とかうどんでいいよ。
okadada ハハハハハ! うどんいいなぁ! 真ん中の透かしがうどんになってるんでしょ? 最高や! あ、透かしの丸の部分がお月さまになってて、まわりにうさぎがいっぱいいるみたいなのもいいなぁ!
shakke フフフ……こども銀行やん。
okadada でも、そうはならないわけですよ。この本、めっちゃおもしろいっすよ。わかりやすくおもしろいのは、『オズの魔法使い』ってあるじゃないですか。あの作品って定説としてアメリカが金本位制から貨幣制度に移り変わることを比喩として書いてるんだって言ってて。なぜ“イエロー・ブリック・ロード”なのか、みたいな。ブリキの木こり、カカシ、臆病なライオンがアメリカ東部の都市部の人間と工場労働者を表してると。で、銀の靴を履いてイエロー・ブリック・ロードを歩いてエメラルド・シティに向かうんですけど、エメラルドって、アメリカのお札の色って緑じゃないですか。ドル札ってグリーンバックって言うでしょ。そんで、エメラルド・シティに入るには緑に見えるメガネをかけなきゃいけないとか。最終的に魔法使いがじつはペテン師やったみたいなことも、全部都合よく解釈できんのが貨幣制度への変還なんだって話なんですけど。
shakke へぇ、おもしろ〜い。カカシや木こりがアメリカの人種的象徴ってのは聞いたことあるけど、その見立てはおもしろい。
okadada ライオンは外交面で批判されてた当時の大統領で、みたいなことっすよね。読んでみて“なるほど、貨幣か”ってなりましたね。
shakke おもしろそう! 読んでみます。

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