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【wkgk】 #001 / 電脳戯話

定期購読『夜半の月極』のためのノートです。単体購入(¥250)もできますが、読み放題(¥500)がおすすめです。

過去に書いたもののアーカイヴをどこかに作りたいなと思い続けて幾星霜。ブログは現在の活動履歴を更新するだけで手一杯だし、媒体からの許諾を取りづらいものを勝手に全世界公開するのも気が引ける。もう少しクローズドに、だけど読みたい人には読めるように、整備しておけるといいなと思っていた。

そんな折、日本一時帰国中に亡き祖父母の家に泊まり、家族と一緒に昔のアルバムを眺めていたら、写真と写真の間に手紙や作文のコピーが挟まっていた。教師だった祖母はマメな性格で、長女である母が留学先で仕送りを受け取った礼状、あるいは留学仲間の父からプロポーズされた報告の書簡まで、40年の時を経てインクの色も鮮やかに読み取れる。その後生まれた私たち孫が書いたり描いたりした作文や絵日記も、手紙に添えて送られたものは全部保管されていた。東京の私の実家では原本がとっくに散逸してしまっているに違いない。

それで私は、久しぶりに自分の文筆家としてのデビュー作を読むことになった。

中学高校時代、国語科の自由課題にはいつもエッセイを提出していた。当時の作文、いま読んでも出来がいい。成績を稼ぐことが第一目的、年度末の学校文集に選出掲載されることを狙って書いており、技巧的にきっちり高得点を叩いてくる感じ。いけすかないガキである。

で、インターネットのない時代にどこから評判を聞きつけたのか、あるとき父親が勤める会社の社内報編集部から「家族のことを書いてほしい」との寄稿依頼を受けた。「設計部の岡田さん」の娘が、父親の日常をどんなふうに形容するのか知りたいという。無償では書かない! と言ったかどうだか忘れたが、たしか報酬を支払う代わりに会社で使わなくなったパソコンを譲り受けることになり、せっかくなのでその顛末を書いた。弟が5歳、と書いてあるから、15歳、高校一年生のときだろう。タイトルはもちろん坂本龍一『SMOOCHY』の収録曲から。


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