201907参院選公約憲法

共同通信 2019年参院選公約特集「憲法」コメント

 共同通信配信の参議院選挙特集各党「公約特集:憲法」に、あの「安保法制合憲論者」の一人でいらっしゃる西修先生と並んで、コメントを出させていただきました。地方紙30紙くらいに掲載されるはずです。

 そもそも共同の記者さんと話をした時に、「”公約特集”って言っても、ここに出てるのは公約なのか、綱領なのか、漠然とした目標なのか、心意気なのか、さっぱりわからないから、そのあたりから書いて欲しいなぁ」と言うと、記者さんは、当座ふんふんと聞いてくれました。

 公約というのは、昨今出した本にもしっかり書きましたが、「次の選挙(含む「異なる院の選挙」)」までのおよそ「数年の間にできることのリスト集」でなければならないわけで、「公約は?」と尋ねたら時には、党是とか「栄光への道」とか、「世界平和!」などと書いてはいけないのです。

 あくまでも「昨今の諸条件の下で、この数年の間にせいぜい出来ることのリスト」です。

 だから、記事にある全政党のリストは厳密には「公約」ではありません。例えば、「軍隊などない」と書いている9条に「軍隊がある」と書き込む安倍改憲案など、憲法の法理を破壊するものであって、公明党は連立与党ですから、「自衛隊明記については慎重に」などとお茶を濁してはなりません。

 きちんと「この次の選挙まで、とにかく自民党に対して、我々は”そんな改憲案に協力はできませんよ”と言い続け、牽制するつもりです」と書かねばなりません。それが「公約」です。「加憲」なんて抽象的なことを書いても何の意味もありません。「目安」を書けということなら、まぁ容認できますが。

 そして、どうしても自民党がそういう不可解な改憲案で押し切ろうとしたら、「その時には、連立を離脱して野党になります」としなければ、「公約違反」となります。

 本当はそういうことを日本中の地方紙の読者にお伝えしたかったのですが、結局「すいません。スペースが足らなくて、今回はこんな感じでお許しください」となりました。しょうがないですが、「公約とは何か?」という問題は、もう完全に民主党政権「以前」に戻ってしまったようです。

 ちなみに「自民党の改憲案など信用できない」と、このコメントにこう書いたからといって、私は「9条条文死守護憲派」ではありません。本当は、きちんと戦力(force)を、憲法・法体系に位置付けるための精緻なる条文改正案を叩き台にして、「ちょっとは憲法のことがわかっている自民党議員」らと、野党第一党が賛成できるような案づくりの議論をしたいのです。

 9条の理念「軍隊を暴走させない」を、より現実化させて、アメリカがイランとやろうとしている戦争で「集団自衛権認めたんだろ?協力しろよな」と言ってきた時に、「あんたの大統領選挙のためにうちの若者に苦労をさせるような戦争には乗れませんな」と、きちんと主権を行使することのできる国になるために、憲法規範を「強める」改憲を目指しているからです。

 今回もまた、「約束したこと」も「言ってたこと」も「断言したこと」も、全部「でもそんなの関係ねぇ」ってすっとぼけて終わりになるような、「何の縛りにもならない虚しい言葉集」として、公約は終わるようです。

 いつまでこんな虚しい「公約特集」をやり続けるのかしら?責任の多くは、マス・メディアにあります。

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