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付き合ってると思っていた彼氏が いつの間にか誰かの花婿になってた話

実話です。

付き合ってると思っていた彼氏が、いつの間にか誰かと結婚式を挙げていた。
そんなドラマや漫画でしかないやろ!と思われるかもしれないが、実際に私に起こった話だ。


しかし、かれこれ30年近く前の話。
記憶も曖昧だし、そういう意味で事実とは違うかもしれない。
ノンフィクションをもとにしたフィクション、と思って読んでいただけるとありがたい。


私が大学4年生だった頃の話だ。

当時お付き合いをしていた彼は、1年先輩。
一足早くに卒業して就職したため、遠距離恋愛が始まった。
彼は朝早くから夜遅くまで働いていた。


当時は携帯電話がではじめた頃。
ポケットベルが全盛の時代。
ラインはおろかメールさえない。
連絡手段は固定電話のみ。
当然電話で話すこともままならなかった。
それでも、数ヶ月は連絡がついていたように思う。
だけどだんだん連絡がつかなくなる。


自分で言うのもなんだが、私は恋愛に対しては一途なタイプだ。
一途どころか粘着質で、星占いでは「ストーカー気質あり」と言われてしまうほどだ。
(こえーよ)
(美川憲一さんの「蠍座の女」みたいな感じ)
(実際私の月星座は蠍座)


「次は火曜日の8時頃に電話する」と言われれば、その時に友人との約束があったとしても途中で切り上げ家に帰り、電話の前で正座して待つ。そんなタイプだ。
しかし何時間まっても電話はかかってこない。


それでも私は「仕事が忙しいからだ」と思っていた。
普通ならそこで「おかいしいやろ!」と気づくものだろうが、なんせ22歳の世間知らずの女子。
それくらい仕事が大変なんだろう、と思っていた。



だかしかし、そんな状態が半年も続けば私の気持ちも限界に。
彼を呼び出し「もう別れよう」と私の方から切り出した。
その時彼はこう言った。
「まだ頑張る。電話もするし、ちゃんとやっていくから」
すでにそんな言葉は信じることもできず
「がんばるならどうぞ。私はもういいです」と伝えた。


もちろん、やはり彼から電話がかかってくることはなかった。


そしてその1年後
「まだ頑張る。電話もするし、ちゃんとやっていくから」
と言ったその時の彼は、すでに誰かと結婚式を挙げた後だったと知る。
結婚式を挙げた時には、奥様のお腹の中には赤ちゃんがいたことも知った。


この時私は違う人とお付き合いをしていたし、もとに戻りたいと言う気持ちは全くなかった。
でも私は強烈な人間不信に陥った。


ひとつは
「なんで私がこんなことをされないといけなんだろう?」
という強い感情。


言ってみれば浮気の成れの果てだ。
浮気をして新しい命を授かり、その人と人生を共に歩むと決めたのなら、私との縁を断ち切るべきだろう。
そんな最後の誠意さえ、私はかけてもらうことはなかったのだ。



私から別れを告げた時「僕はまだ頑張る」となぜそんなことを言えたのか?私から別れを告げられたのなら
「自分から別れようと言わなくて良くなった!ラッキー!」
と思ってすんなり別れを受け入れればよかったのに。


全くもって彼の行動の意味が、今でもわからない。
もちろん別れを告げた後も、電話は1度もかかってくることはなかった。
わかっていても私は静かに傷ついていた。


もう一つの人間不信の理由。
私の友人たちは1年以上この事実を知りながら、私に事実を伝えることをしなかったから。
いや、できなかったのだろう。


私とその彼は学生時代同じサークルにいた。
もちろんサークル内の人間は共通の友人だし、私と同じように先輩後輩で付き合っている人もいたから、情報は共有される。
だから私以外全員、彼が授かり婚をしたと知っていた。


だけど
「この事実を知ったら、何かが起こるかも」
という理由で、
私には絶対知られないように
友人たちはこの事実を私が知ることがないように口を閉ざした。


それほどに私は一途だったんだろう。
(だってストーカー気質だから笑)

ひょんなことからこの事実を知った私は、友人の1人に詰め寄った。
なんで言ってくれなかったのと。
「言えなかった。あなたが死んでしまうかもしれないと思って」



30年近く経った今では、その友人たちの判断は正しかったと思える。
自分でこの世を去ろうとしたかもしれないし、相手の新居にのりこんで何かやらかしてもおかしくはなかっただろうから。



でも当時はそんなことを思えるはずもない。
「私が死んでしまうかも」そう思ったとしても、私は本当のことを知りたかったし、こんなふうに二重に傷つくこともなかったのに。
そう思うことしかできなかった。


そんな出来事があったとしても、30年近くも経てば人生のネタでしかない。その彼との別れがあったからこそ、私は夫と結婚して、娘と息子に出会えたのだから。



振り返ると、ただただみんな若くて幼かったんだろうと思う。
本当にそれしかない。

事実を伝えることで人を傷つけしまうこと。
それが怖くて事実が伝えられない。
でも本質は、人を傷つけてしまうことで自分を傷つけることが人は恐ろしいのだ。

結果的に私は彼と別れて本当に良かったと思う。
その別れがなければ、
私の今の幸せは存在しないのだから。


そう言えばキレイにこの話は終わるのだが、私はそんなキレイな人ではない。


思うのだ。
彼はきっと、私との出来事を隠して生きていくに違いない。
奥様にもお子さんにも
「実は付き合っていた彼女に結婚した後も別れを切り出せずに、
うやむやにしたんだ」と、言えるはずもない。
もし私のことを思い出す時、彼に良心があるのなら、すこしはちくりと心が疼くだろう。


ざまーみろ。


それが私の本音だ。


もしかすると彼にはそんな良心はなくて、とても幸せで私のことなんて思い出しもしないのかもしれない。
私との出来事が面白おかしく、若気の至り、武勇伝になっているかもしれない。
もしそうだとしたら、本気で私は人を見る目がなかったということだ。


彼が今幸せか、不幸か全く興味はない。
でも私は願っているのだ。
彼にひとかけらの良心が残っていて、彼が若かった頃を思い出す時に、彼の心が疼くことを。



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