ノーラン528491

【栗麻呂ノ暗号】『インセプション』で使われる謎の数字「528491」に秘められたノーランのメッセージとは…?

なんやねん、急に。

<銀河鉄道 クリストファーの城>の第5話やないんか?

第4話で、せっかく凄い展開になったっていうのに…


ちなみに『インセプション』の「528491」ってコレだよね…

映画の中で繰り返し出て来る謎の数字…

エネルギー業界の世界の半分を支配する”帝国”フィッシャー社の御曹司ロバートが適当に思いついた数字じゃなかったっけ?

秘密があるってホントかな…?

ふふふ。

第5話の中でこれにも触れようと思ったんだけど、ちょっと長くなるし、宮崎駿とも宮沢賢治とも関係ないんで、ここで単独で扱おうと思ったんだ。

なら、いったい何の数字やねん?

ノーランや映画ゆかりの誰かの誕生日を逆さにしたとか言われとるけど?

まさに、その通り。

誕生日を逆さにしたものだ。

誰の?

Sven-Göran Eriksson…つまり、サッカー元イングランド代表監督(01~06年)のスヴェン=ゴラン・エリクソンだよ。

(画像:エリクソンWikiページより)

ふぁ!?

あの数字は、エリクソンの誕生日「1948年2月5日」を逆さにしたものなんだ。

ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って…

なぜそこでエリクソン?

せや!

ノーランとエリクソンって髪型以外に何の接点もないやろ!

おお、そこは気付かなかった…

なんて冗談はさておき、これが実は非常に重要な意味があるんだ。

映画『インセプション』のアイデアの20%はエリクソンから得られていると言っていい。

特に映画冒頭シーン、超おじいちゃんになったサイト―(渡辺謙)とコブ(ディカプリオ)のシーンは、完全にエリクソンから着想を得てる。

ハァ!?

意味わからん!

まず映画『インセプション』が誕生するまでの流れを説明する必要がある。

ざっとまとめると、こんな感じだ。

INCEPTION STORY

2000年頃

構想に着手、脚本を書き始める

2002年

「夢の中に入りこむ泥棒の物語」を80ページほどにまとめ、ワーナー・ブラザーズに提示

2003~08年

『バットマン ビギンズ』『プレステージ』『ダークナイト』に取り組む

ノーランに衝撃を与える事件が「2つ」起きる

事件を機に、当初シンプルなSF短編だった『インセプション』の大作化を決意

2009年2月

完成された脚本をワーナーが購入

2009年6月

東京にて撮影を開始

2010年7月

ロンドンを皮切りに世界で公開される

日本では35億円、世界で900億円超の興行収入を記録(1ドル110円換算)

2017年8月

日本人「おかえもん」により、映画にまつわる全ての謎が解き明かされる…


最後のは、なんやねん。

衝撃を与えた「2つの事件」って何…?

1つがエリクソンの事件…

そしてもう1つは<銀河鉄道クリストファーの城>第5話で解説するよ。

エリクソンの…事件?

せや!エリクソンはスウェーデン人や!

サッカー発祥の地として、高いプライドと長い歴史を誇るイングランド代表チーム初の外国人監督やった!

就任した時は大事件やったで!

そうだったね。

彼が代表監督になったことで英国は大騒ぎになった。日本でのトルシエなんてもんじゃない。柔道の全日本代表監督や相撲協会の理事長に外国人が就任するようなものだ。

だから英国メディアやファンは彼に厳しい眼を向け続けた。それまでの英国人監督には求められなかったような高いハードルを彼に課したんだ。長らく低迷していたイングランド代表を、ある程度まで復活させたのにね。

そして、ドイツW杯を控えた2006年の年明け早々、彼に「事件」が起こった…

どんな事件!?

エクストラクション(抜き取り)事件…

つまり、エリクソンの頭の中から英国サッカー界における機密情報が抜き取られたんだ!

ええ~~~~っ!?

この事件により、英国サッカー協会は窮地に立たされた。

これが当時の新聞だよ。

「DIRTY DEALS(汚い取引)」って…?

新聞によると…

「プレミアリーグのアストンビラは今が買収の狙い目」

「500万ポンド以上のギャラなら独W杯後に自分が監督をやってもいい」

と語ったらしい。

さらに、

「ベッカムは自分が声をかければ英国に戻ってくる」

「オーウェンは育ちが悪いのでチームリーダーにはなれない」

とも語ったとか…

と、とんでもない機密情報だ…

エリクソンから「機密情報」を抜き取ったのは、新聞の写真にもある、顔にボカシが入った中東系の人物…

彼は「アラブの大富豪」を名乗り、ドバイの7つ星レストランにエリクソンを招き、超高級ビンテージワインをふるまい、機密情報を聞き出した。

ま、マジか…

でもこれは巧妙に仕組まれた罠だったんだ。

しかしエリクソンはこれを「現実の出来事」だと思い、機密情報を与えてしまった。

ニセモノの「アラブの大富豪」にね…

いったい誰が…何のために…?

目的はひとつ、この新聞の売上のため…

この事件の黒幕は、世界のメディア王ルパート・マードックだったんだよ。

誰?

どあほ!

オーストラリア出身で、1969年にロンドンの日刊紙ザ・サンを買収し、卑猥なヌード写真と煽動的な記事で人気を集め、1981年にイギリスを代表する名門紙タイムズを買収し、1985年にはアメリカの映画大手20世紀フォックスまでも買収。テレビ事業にも乗り出しFoxを設立。「NBC・CBS・ABC」と並ぶ4大ネットワークの一角へと成長させた男や!1994年には欧州最大の衛星放送Skyの筆頭株主にもなったんやで!

泣く子も黙る、ニューズ・コーポレーションの総帥や!

その通り。

だから『インセプション』でもシドニーが舞台となり、「シドニー発ロサンゼルス行き」の機内で「インセプション(情報埋め込み)」が行われたんだ。

ところで、マードックって誰かに似てない?

ん? どこにでも居そうなおじいちゃんにしか見えないけど…

『インセプション』の始めと終わりに出て来る人に似てない?

さ、サイト―!?

似てるでしょ?

世界のメディア王ルパート・マードックがモデルなんだ。

嘘かホントか眉唾物の「エリクソン機密情報エクストラクション事件」を仕組んで、すっぱ抜いた新聞「ニュース・オブ・ザ・ワールド」ってのは、マードックが買収した「ザ・サン」の日曜版なんだよね。

この当時、マードックは凄まじい勢いで世界のメディアを支配しつつあった。

2005年には当時世界最大のSNSだったMySpaceを買収し、2007年には世界最大の株式市場であるNY証券取引所の株価指数として有名な「ダウ・ジョーンズ」を買収。子会社の名門紙「ウォールストリート・ジャーナル」も傘下に収める。

右派の大物やで。リベラル派からは忌み嫌われておるな。

イギリスとアルゼンチンが小さい島をめぐって衝突した「フォークランド紛争」ん時には、ガンガン世論を煽りおった。「大英帝国に歯向かうアルゼンチンを叩きのめせ!」ってな。

今のトランプみたいなもんや。

そして1989年にサッカーのリバプールFCサポーター96人が圧死した「ヒルズボロの悲劇」でも煽動的なデマ記事を次々と掲載し、今でもリバプールではマードックは嫌われている。

さらにはプレミアリーグの放送権を自身が支配するSkyで独占し、地上波で見れなくしてしまったことにより、英国庶民の恨みを買った。

そういえばノーランはビートルズの大ファンでリバプール贔屓やったな。

自分の映画でビートルズのアルバムをオマージュしておったほどに。

『インセプション』は『ホワイトアルバム』で…

栗麻呂ノ暗号:インセプション編

『インターステラー』が『アビイ・ロード』で…

栗麻呂ノ暗号:インターステラー編

『ダンケルク』が『LET IT BE』やった…

栗麻呂ノ暗号:ダンケルク編

ノーランの大好きな007にもマードックがモデルの悪役が出て来るね。

『トゥモロー・ネバー・ダイ』の悪役であり、新聞「トゥモロー」のオーナーであるメディア王・エリオット・カーヴァーは、マードックと彼のライバルだったロバート・マクスウェルをもとに作られたキャラクターだった。

大衆を煽動してイギリスと中国を戦争させようとするんだ。

ひゃあ!

あくまで個人的な意見だけど、ノーランはマードックのこと好きじゃないだろうね…

僕の代わりに言ってくれてありがとう。

さて、ノーランがバットマンに取り掛かり、「夢の中に入りこむ泥棒の物語」を棚上げしてた2006年に「エリクソン機密情報エクストラクション事件」が起こる。

この事件はノーランに衝撃を与えた。

英米のメディアのみならず世論までも支配するニューズ・コーポレーション傘下の新聞記者たちが、イングランド代表監督という地位にあるエリクソンを「架空の世界」に誘いこみ、まんまと機密情報を盗み出したんだ…

ゴクリ…

リベラル派からは忌み嫌われるマードックであったが、ノーランは彼になぜか惹かれている自分に気付いた…

ハァ!?

作家としての興味だ…

思想的に自分と合わないであろうルパード・マードックという人物に、どこか惹かれ、魅せられている自分に気付いたんだよ…

そしてフィッシャー父子の物語と、世界を手に入れようと野心を燃やす男サイト―が生まれた…

ど、どゆこと?

ルパートの父キースは、メルボルンの有力紙「ザ・ヘラルド」の社主だった。政治の世界でも力を持ち、豪首相のブレーンにもなっていたほどだ。ナベツネみたいなもんだね。そんな偉大な父の子として生まれたルパートは、学生時代あまり優秀ではなかった。

だから父キースは、自分の期待に応えられない息子ルパートに強い不満をもっていた。ルパードが自分の跡を継ぐことを絶望視していたんだ。

それ、フィッシャー親子そのまんま…

そして「エリクソン事件」と時期を同じくして、ニューズ・コーポレーション傘下の新聞による「電話盗聴スキャンダル」でイギリス社会は騒然となった。

政界・財界はもちろん、英国王室までも電話盗聴されており、犯罪行為を取り締まるはずの警察も買収されていたんだ…

これまでマードックの会社が密かにやってきたことが、一気に明るみに出たんだね…

うわあ…

マードックは「一般人には盗聴は行っていない」と苦しい弁明をしたんだけど、「エリクソン事件」を起こした新聞「News of the World」においてそれが嘘だったことが判明する。そして広告主が一斉にボイコットをし、同紙は168年の歴史に幕を下ろすことになったんだ。

そしてマードックの帝国は分裂の危機を迎える。風当りが強くなり、ついに帝国の分割が始まった。分社化や組織改編が進む中で、子供たち三人が後継者争いに名乗りを上げる。どうやら次男ジェームズに落ち着きそうだけど。

まあ、ざっとこんな英国の状況を背景に『インセプション』は誕生したんだね。

「528491」に、そんなスト―リーがあったなんて…

「驚き、桃の木、山椒の木…」やな。

「受話器に狸の盗聴器」ってのはどう?

また昭和ネタしてる!

しかもマードックは「狸」じゃなくて「狐」だから!

こりゃ、やられたな。

「もう一つの事件」もお楽しみにね!

次回にたっぷり紹介するよ。

さ~よお~な~ら~




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