深読み セプテンバー・ソング 中篇「墓地にて」
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2019年9月1日(日曜)
スナックふかよみ
ではJPクーパー『セプテンバー・ソング』の歌詞を見ていこうか。
歌詞を正しく理解すれば、この歌における「September」が「9月」のことではなく「第7の月ニサン」であることが納得できると思う。
お手並み拝見といきましょう…
深読み名探偵の腕前を…
景気づけに「ボチ」でもやったら?
ボチ? なにそれ?
ほら、あれよ…
「フンガー!フンガー!」ってやつ…
フランケン?
そうじゃなくて…
気合を入れるためにニュージーランドの人たちが、ラグビーの試合前にやるやつよ。
Oh…深代サン…
それを言うなら「ハカ」です…
あらやだ、あたしったら…
ハカとボチを間違えちゃった…
でも今の動画でじゅうぶん気合が入ったよ。
どうもありがとう深代ママ。
それじゃあ『September Song』のダウンロード・バージョンのミュージックビデオを見ながら歌詞を解説していこうか…
JP Cooper 『September Song』
よく見れば、いきなり主人公の若者が「十字架ポーズ」してるのね。
わかりやすい(笑)
彼は「イエス」を演じているの?
いや。あれは十字架のポーズをしながら「イエスのこと」を想っているんだ。
じゃあ彼は「イエスに関係する人の誰か」を演じてるってことね。
そういうこと。
だれ?
ひとりじゃないんだよね。彼は複数の人物を演じているんだ。
まずはここで流れる歌詞を見てみよう…
Our love was strong as a lion
Soft as the cotton you lie in
Times we got hot like an iron
You and I
ボクらの愛はライオンみたいに強くて…
キミが横たわる木綿のシーツみたいに柔らかくて…
ボクらが過ごした時間は鉄みたいに熱くて…
キミとボクって…
韻を踏んでて気持ちいいけど…
なんだかちょっと不自然な喩えばかりね。
実はこれ、全部「イエス」のことなんだ。
最初の「ライオン」は『ヨハネの黙示録』第5章5節からのもの。
ここではイエスが百獣の王ライオンに喩えられている…
5:5
すると長老のひとりが私に言った。「泣くな。見よ、ユダ族の獅子、ダビデの若枝であるかたが勝利を得たので、その巻物を開き七つの封印を解くことができる」
あっ!「ダビデの若枝」もそうじゃないの?
彼が意味深に何度も「若枝」を「見る」シーンがあったわ!
その通り。
彼は屋上で空を見上げ「ダビデの若枝」を夢想してたよね。
そこには無いはずの「若枝」を…
「鉄」も『ヨハネの黙示録』からですね。
そうです。
『ヨハネの黙示録』第12章5節には、イエスが「鉄の杖」で人々を治めると書かれている…
そして、地上で人間の女から生まれたのち、天の父のもとへ引き上げられると…
12:5
女は男の子を産んだが、彼は鉄の杖をもってすべての国民を治めるべき者である。この子は、神のみもとに、その御座のところに、引き上げられた。
「引き上げられた」って「処刑された」ってことでしょ?
うん。でも「処刑された」じゃなくて「処刑されるように仕向けた」だよね。
エルサレム入城後のイエスは、自分が処刑されるように行動した。
旧約の預言をすべて成就させるために、弟子も巻き込んで…
そう言われれば、確かにそうよね。
じゃあ彼女が横たわっていた「木綿のシーツ」は?
聖書って「木綿」が出て来ないでしょ?
そう。聖書に木綿は出て来ない。
木綿はインドやアフリカのもので、当時のパレスチナ地方では作られていなかったから。
イエスといえば「亜麻布(リネン)」だもんね。
『マルコによる福音書』
15:46 そこで、ヨセフは亜麻布を買い求め、イエスをとりおろして、その亜麻布に包み、岩を掘って造った墓に納め、墓の入口に石をころがしておいた。
さすがに「the linen you lie in(キミが横たわった亜麻布)」じゃバレバレになってしまう。
だからJPクーパーは「cotton(木綿)」に変えたんだと思うよ。
その代わり「lie in」と「linen」は表記も発音もよく似てるから、じゅうぶん想起できるようになっている。
あ、たしかに…
そして彼の頭の向こうに見える壁に「C」で始まって「T」で終わる「何か」が一瞬だけ映し出される。
「CHRIST」のことね。
次は場面が変わって「路上ですれ違う二人」が描かれる。
若者が道を歩いていると、向こうから若い女性が歩いて来て、二人は「開け放たれた扉」の前ですれ違い、若者は後ろを振り返るんだ…
このシーンにおける歌詞はこれ。
Our hearts had never been broken
We were so innocent, darling
We used to talk ‘til the morning
You and I
ボクらの心は決して折れることがなかった
ボクらはピュアで怖いもの知らずだったよね
朝になるまでずいぶんと話し込んだっけ
キミとボクで…
面白い歌詞。
「innocent」は「無実の人・幼な子」って意味もあるから、まさにイエスのことよね。
「朝になるまで話し込んだ」って「最後の晩餐」のあとのことかしら?
だろうね。
イエスが弟子たちと徹夜するのは「最後の晩餐」が行われた夜だけだから。
そして、あの夜にすべてが計画されました。
計画?
イエスが救世主キリストであるという証拠を示す計画…
つまり「復活の奇跡」の計画だ…
あ、そういうことか。
この『September Song』という歌は、主人公の「ボク」と、離れ離れになってしまった「キミ」が、力を合わせて「復活の奇跡」を計画し、現実化させるという筋書きになってるんだ。
それに合わせてミュージックビデオも作られている。
じゃあ「路上ですれ違う二人」も?
もちろん。
まず最初に「開け放たれた扉」の前で、二人がすれ違う。
彼女がイエスの役よね。
そうだね。
そしてカメラの焦点が「開け放たれた扉」の奥に向けられ、「腰掛けて歌う男」が映し出される…
JPクーパー本人よね。
そして、すれ違った後しばらくたってから、若者は振り向いて彼女の後姿を見つめる。
「よく似てるけど違う人かな?」といった感じで。
なにか意味深ね…
この一連の流れは「イエスの復活シーン」を描いているんだよ。
イエスは死後に石窟の墓に埋葬され、二日後の朝、弟子や親族が様子を見に訪れた。
『マルコによる福音書』では、なぜか石室の扉が開け放たれていて、石棺の中のイエスの死体は消えており、そこには御使(天使)が座っていたんだ…
『マルコによる福音書』
16:5 墓の中にはいると、右手に真白な長い衣を着た若者がすわっているのを見て、非常に驚いた。16:6 するとこの若者は言った、「驚くことはない。あなたがたは十字架につけられたナザレ人イエスを捜しているのであろうが、イエスはよみがえって、ここにはおられない。ごらんなさい、ここがお納めした場所である。
あの「開け放たれていた扉」は「イエスの墓の扉」だったのね。
そして部屋の中で座ってたJPクーパーは、墓の中で座っていた天使か。
そして若者が後ろを振り向いて「他人の空似かな?」と考えるのは、『ヨハネによる福音書』の復活シーンの再現だ。
『ヨハネによる福音書』
20:14 そう言って、うしろをふり向くと、そこにイエスが立っておられるのを見た。しかし、それがイエスであることに気がつかなかった。
まあ、よく出来てるわ。
四福音書で異なる「復活シーン」の描写を上手く利用してたんだ。
そしてJPクーパーのアップになりBメロに入る。
こんな歌詞だ。
We had that mixtape on every weekend
Had it repeating, had it repeating
ボクたちには特別なミックステープがあった
週末になるとそればかり聴いていた
そんな週末が幾度となく繰り返された
かな…
この「毎週末に聴くミックステープ」って、何か他のことを言ってるような気がするわ。
鋭い。
この「mixtape」とは、イエスの言動録である新約聖書の「福音書」のことだ。
イエスの言動はすべて旧約聖書の預言に基づいている。イエスは旧約聖書の預言を成就させたメシアだからね。
つまり…
人類史上最高のラブソングである「福音書」は、旧約聖書の中に「原曲」があるってこと?
そういうこと。
JPクーパーは「福音書」のことを「旧約聖書の中の名曲をサンプリングして作り上げたミックステープ」と表現したというわけ。
「福音書」のメロディーは、週末になると必ずどこかで流される。
これはほぼ2000年の間、繰り返されてきました。
そして「福音書」のクライマックスは「ある週末の出来事」です。
なるほど、たしかに。
そして、いよいよサビに差し掛かる…
このサビ部分の歌詞は、「比喩」や「言い換え」や「駄洒落」が駆使された完璧なまでに美しい歌詞だ…
MVの彼と彼女によるドラマ映像も、歌詞を巧みに表現した素晴らしい演出になっている…
この歌のキーワード「フィフティーン」の登場ですね…
つづく
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