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看護の仕事の見える化        在宅医療偏 第5回                           訪問看護の醍醐味                                                 


1.     訪問看護ステーションみゆきの里のご紹介

 訪問看護ステーションみゆきの里は、熊本市南区にあり、1982年の御幸病院を皮切りに老健から特養、訪問看護ステーションまで11施設20事業所を同一敷地内に展開し40年が経過した地域密着多機能医療介護グループです。創業者の会長の理念である、「福祉の原点は在宅にあり」をとことん追求し、利用者にとっての環境づくりがされています。
 訪問看護ステーションは管理者の佐々木加奈子以下、看護師8名、理学療法士等6名で運営されています。インタビューは、「訪問看護が合っている」とおっしゃる管理者の佐々木加奈子さんと、訪問看護ステーションのホープである、入職後1年目の吉冨朋子さんです。

訪問看護ステーションみゆきの里
左から吉冨朋子さん、管理者の佐々木加奈子さん、河島奈甫子さん(第4回掲載)


理念

2.     一番の応援者が訪問看護師

 佐々木加奈子さんは、初めて訪問看護師となり同時に管理者となって2年が経過されました。自信に満ち溢れ、ゆるがない看護観、管理観をもって、スタッフの育成をされていました。入職した時から「私は訪問看護が好き」とおっしゃっていましたが、今は「私は訪問看護が合っている」とおっしゃっていました。
 佐々木さんのお話で印象に残っている言葉は「在宅は本人の考え、家族の絆がありありと出てくる。好きなように自分の人生を楽しんでほしいと思う」と心がけていることをお話しいただきました。また、特に看取りが在宅医療の醍醐味であるとお話をされ、利用者はもとより、利用者を支える家族を支えたいと思ったと話され「家族を支える一番の応援者であるのが私たちなんです」と目を輝かせ話される様子に感動しました。どんなことがあっても、訪問看護師が一番の応援者であることは、家族に伝わり、強い信頼関係が芽生えます。家族はどんなに心強かったでしょう。このことは、佐々木さんがこれまで経験した病院の看護と対照的な部分であるからこそ印象深く刻まれていると思います。佐々木さんは「病院は、家族の意向に沿うと言っても結局は病院の意向に沿ってるんですよ」という表現をされ、在宅との違いを話されました。
 ある時、利用者のケアについて不安を持っていた家族と、不安を解消するためにどうしたらいいか?と考えたことがあり、皆で知恵を絞った解決策が、LINEグループを作ることだったと教えていただきました。医療・介護スタッフのコミュニケーションツールは様々なものがある中、家族の不安解消を第一に考え、LINEを道具として使うことで、よりよい家族の支援につなげられたとおっしゃっていました。佐々木さんの信条である、「一番の応援者が訪問看護」であること、「家族を一人にさせない」という気持ちが表れているように思います。
 訪問看護の経験は2年でも、もともとの看護観に上乗せされた、在宅医療での「真の患者中心・家族中心」の信条が、ベテラン看護師としての風格につながっていると感じました。

3.     寄り添うこと

 看護学生の時から在宅に興味があった吉冨朋子さんは、訪問看護ステーションみゆきの里に入職し、1年間が経過しました。吉冨さんは、利用者さんの一番そばに居て、利用者さんの希望を叶えられるという喜びと、一人で訪問しなければならないことで、自分で判断しなければならないことの難しさを同時に感じ取られていました。
 その中でも、私が印象に残った言葉は、「在宅は寄り添うことができるところがよい」という言葉でした。私たち看護師は「寄り添う」という言葉をよく使います。一般的なビジネスシーンで使われる「寄り添う」は、「親身になって相手の気持ちを理解しようと努め、共感する」ことであるとされています。看護師が言う、寄り添うは、理解しようとする姿勢だけでなく、相手の気持ちに応えること、希望を叶えるというニュアンスがあるように思いました。吉冨さんに、「寄り添う」を質問すると、「聴くだけでなく、思いに沿った現状を作り出すことそのために看護をすること」、「訪問看護は特に思いに沿った看護ができる職場で、病院でできなかったことです。」という答えが返ってきました。まさに訪問看護の醍醐味を味わっていらっしゃる様子を拝見しとても嬉しくなりました。
 もう一つ感じたことは、訪問看護はベテラン看護師さんだけでなく、若い看護師さんが利用者さんに与えるパワーがあるということです。吉冨さんは、若いがゆえに、利用者さんに受け入れてもらえないのではないかと悩んでおられた時期があるようですが、若いエネルギーは利用者さんを元気にし、何でも教えていただくという謙虚な姿勢で臨まれることで好感を呼ぶことになったと思われます。
 私のジレンマに、看護学校の教員をしていた時、在宅医療に進みたいという学生に対し、まずは臨床で経験を積むことがよいとアドバイスをせざるを得なかったということがあります。在宅医療から入職し、丁寧に育てていくシステムを作っていく必要性を感じました。現在、新人看護師から育成するシステムも整いつつある中、多くの看護師さんが在宅医療に関心を持っていただくように尽力したいと思います。

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