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忘れられない表情がある

わたしには忘れられない表情が2つある。
身近な人の表情ではなく、テレビドラマの中での1コマです。

1つは、もう30年ぐらい前になるだろうか。
月9ドラマ『東京ラブストーリー』で鈴木保奈美さん演じる赤名りかが、かんちの母校のサッカーゴールの前に立っていて、振り返った時の表情。

照らされた太陽の光が眩しそうで、上下のまつ毛がとてもキレイに輝いていて、それでいて少し切なそうな表情。

当時はまだ小学生だったような気がするけど、なぜだか子ども心にその一コマがわすれられなくて、今に至る。何か言葉で言い表せないような気持ちを心に秘めたような表情を私は美しい。と思ったのだと思う。

2年前、忘れられない表情が1つ増えた。
朝の連続小説『カムカムエブリバディ』の1コマ。

長い間、自分の演技に悩み続けた大部屋俳優の虚無蔵さん役を、松重豊さんが演じていた。役者の大先輩に自分はいい役者だと思ってもらっていたと聞かされた時「なんでもっと早く教えてもらえなかったのか?」とつぶやいた。それに対する相手の言葉を聞いて振り返った瞬間の表情。

そのセリフの前後の表情の変化が素晴らしくて、圧倒された。これまで気難しそうな顔をして自分に厳しく生きていた虚無蔵さんが、きっと自分で自分を許した瞬間。その一瞬で柔らかくなった表情。

俳優とは、言葉だけでなく、こんなにも豊かな表情で気持ちを伝えられる人なんだ。と、驚きと共に尊敬の念を感じて、何度も見返してしまったこのシーン。

わたしは普段の生活でこんなにも丁寧に自分の表情に気持ちをのせれてるだろうか。子どもの無邪気な表情を真っ直ぐに受け止められているだろうか。

そんなことを自分に問いただしたくなった。
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ライターとして言葉を残すためにはよく観察することからだと学び、表情を言葉にしてみようとする。しかし、これがなかなか難しい。
それでも残したい表情があるから、出来る限りの言葉を尽くす。

そんな日々の繰り返し。