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ある視点(コラムやエッセイ)

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#日常

いくつかのスイッチについて

いくつかのスイッチについて

 以前から、高田純二のような人になりたいと思っていた。「適当教典」をパラパラめくったこともあるが、適当すぎて笑って数十ページで閉じた。あの人は意図的に適当にしているのだろうか。頭は良さそうな感じを受けるので、おそらくあえて適当な高田純二を演じているのだろう。どうすればあのように振る舞えるのか。その秘訣はいまだに解明できていない。

 どこかの塾か何かのCMで「やる気スイッチ」を謳っていたけれど、あ

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【フツーの人々(7人目) / ルービックキューブの少年】

【フツーの人々(7人目) / ルービックキューブの少年】

 少年は小学生だった。おそらく4年か5年か。胸に校章が入った白い半袖シャツとグレーのショートパンツの制服を着ていた。パッと見ただけではあまり特徴のない子だった。色白で短い髪にほっそりとした腕。いかにも都会で育った男の子といった感じだった。もう一度見かけたとしても、ほかの小学生と見分けがつかないだろう。少年は渋谷から乗ってくると、おもむろに立方体の物体を取り出した。

 それは、ルービックキューブだ

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秘密は、誰にでもある。

秘密は、誰にでもある。

 たとえ愛する家族や親しい友人がいたとしても、その誰にも打ち明けていない秘密の一つや二つはあるだろう。それが、気安く言える類ではない内容であったり、まあ隠すほどのことではないものであったりしても。

 僕の場合は、それが煙草だった。結婚するときまで、僕は隠れるでもなくデートの時などにも煙草を吸っていた。妻は(当時は彼女)煙草を吸わない人だった。煙草どころか、酒も飲まない健康的な人だ。当時の彼女は、

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「羞恥心はトイレが1人でできるようになると生まれる」説

「羞恥心はトイレが1人でできるようになると生まれる」説

 うちには子どもが2人いる。小1の娘と3才の息子だ。
 僕が小さかったころと同じように、トイレがまだ安心できない場所みたいで、それぞれのトイレスタイルがある。

 姉のほうは最近ようやく扉を閉じられるようになったけれど、できれば少しでも開けておいてほしいタイプ。一方、トイレトレーニング中でやっと大小ともにトイレで行えるようになってきた弟はと言うと、自分から「閉めてくださーい」と言う(いやむしろ叫ぶ

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「はいチーズ」が、死語になる未来。

「はいチーズ」が、死語になる未来。

 写真を撮られるときの自分について。どうも不自然に見える。というか、不自然極まりない。変に撮られることを意識し過ぎてて。これもまあ、自分の声を録音して「変な声だ」と思うのに似ているかもしれない。

 一方、家族を撮るのはとても好きだ。でも家族といっしょに映る時、1人だけおちゃらけたり変に畏ったりしていることが多いのだ。普通にしていればいいのに。でもその「普通」や「自然」が案外難しいのもまた事実。

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自分の年齢に気づかなくなる話

自分の年齢に気づかなくなる話

 子どもが成長してその年齢に注意が向いていると、自分の年齢に気がつかなくなる。というか、自分に向かってちょっと待てと言って計算するくらいに、自分の年齢がわからなくなる。そのことに気がつく。

 小さいころや20代くらいまではそんなことはなかった。むしろ誕生日が近づくとちょっと腰が落ち着かなかったし、そこにあった特別感は確かに一年に一度だけの日がもつ魔法があったと思う。

 それが、30も後半になっ

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引っ越していった友人に。

引っ越していった友人に。

 最近、友人が引っ越しをした。
 同じ沿線に住むわりと近所に住んでいた友人だったのだが、となりの区とは言え電車で1時間程度はかかる場所へと越したのだ。

 引っ越したい、という話は少し前から聞いていた。友人は昨年、とある大企業に転職をしたのだが、そこでの縦割りぶりや同僚とのコミュニケーションに四苦八苦しているらしかった。ときどき会うと、冗談めかしてよく愚痴を言い合っていた。本気でグチをこぼせばそれ

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