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【フツーの人々(2人目) / 車内の全身包帯女】

車内の全身包帯女

別に深夜とか、特別な時間帯じゃなかったんです。
確か休日夕方の17時とか、18時とか。
どちらかというと穏やかな、「今日の晩飯どうする?」的な
時間帯だったし、そんな空気が漂っていたと思います。

駅のホームでようやく電車が滑り込んで来て。
やっと来たよ遅延かよとか心小さく思ってたら
ゆっくりと電車がスピードを緩めて来て
自分が乗ろうとする車両が見えてくるわけです。

そしたら、その車両に誰も乗客いなかったんです。
1人の女性を除いて。

髪は黒くて肩より下まである長いストレート。
特に乱れてもいませんでした。
スタイルも良くてどちらかというとスレンダー。
でも、やっぱりその車両に1人という理由はあるわけで。

その女性、包帯しか身につけてなかったんです。
身体も包帯だけ、しかも目隠しも包帯。
たぶん下着もつけていなかったと思う。
「すわっ!AVの撮影か!?」と、とっさに周囲を見回しましたが、
撮影隊はもとより、隠れて撮影(あるいは操作)している人も見当たらず。

一駅だけの移動だったんで乗っちゃったんですが、
なんかときどきガクッガクッと揺れるんですよね、その人。
やっぱ遠隔操作か?と思うんだけど、ひと駅分だと結果わからず。

ヤバい人なのかな、いやいややはりAVか、
AVだったらもしかして出演させられんの?、とか
ちょっと待て車掌に知らせるボタンどこだっけ、とか
実に貧困な思考回路になるんですよね、そんな面食らう状況だと。
でもなぜか、本当になぜかはわからないんだけれど、
幽霊だとは思えなかったんですよね。
妙に質感がリアルで、明らかにこちら側の人だった。

ともあれ、仮にAV撮影だったとすると、
僕が周囲を見渡しまくる
ひどくマヌケで愛らしい姿が収められていると思います。

フツーの人なんてこの世に1人もいません。
自分にとってはフツーじゃない人々が
大きな世の中のフツーってもんを作ってるんですよね。
事実は小説よりも奇なり。いやほんと。

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