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トイレのときどこ見るか問題

 まったくもってくだらない問題について書いてみよう。
 そう思って見つけたテーマがタイトルの「トイレのときどこ見るか問題」だ。

 女性のトイレ事情には当然疎いんだけれど、男性の小を足すとき、大きくは2つのパターンに分類されると思う。

 1つは(これが7割くらいのイメージだ)、下を向く人。つまり自分のムスコを覗き込む人々だ。これをやる人々は多くの場合、猫背になる。その小さく縮こまった後ろ姿から漂う哀愁たるや、女性陣にも見せてあげたいほどだ。男は背中で語るというけれど、小用中の背中で語りたい男はきっといないと思う。

 さて、もう1つは、壁を見る人だ。男性トイレの小用便器はだいたい壁に沿って配されている。つまり、男性は小を足そうとする場合、壁と向かい合うことになる。その壁には、トイレにもよるけれど、「もう一歩前へ」や「綺麗に使っていただいてありがとうございます」などの標語系ポスターがだいたい貼られてある。このジャンルに属する人は、おそらく居酒屋のトイレによくある親父の教訓系やフライヤーなどにも目を通す傾向があるだろう。

 例外的に、片手でムスコを押さえながら、もう片方の手でスマホを見ながら用を足す手練れも世の中には一定数いる。だがその輩の中にはそのまま手を洗わずにトイレから出て行ったりすることもあるので、このコラムを読んだ女性の方々は、頭の片隅にそのことを頭に入れてデートや社外打ち合わせなどに臨んだ方がいいと思う。

 ちなみに僕は、真正面、つまり壁をぼうっと見つめる派だ。壁をじいっと見つめるのではない。ぼうっと見つめるのだ。以前、村上春樹がエッセイか何かで「意図的に両目の焦点をずらしてぼんやりした世界を見ることがある」といった主旨のことを書いていたけれど、感覚としてはあの感じに近い。

 ちなみに、ページ上の写真は、僕のオフィスのトイレの壁だ。
 そこには張り紙の類は何もなく、ただランダムな模様になるように配された小さなタイルが並んでいる。これが、焦点をずらしてぼんやりとするのに最適なのだ。用を足す時の僕は、壁に向かい、ぼうっと壁のタイルが織りなす模様を見ている。するとその間、僕は完全に無心になる。どこか別の異空間にいるかのようだ。

 だが、この忙しない大都会(の共用トイレ)において、そんな無のタイミングは長くは続かない。ドアが不意に空き、人が入ってくる気配が突然する。すると僕は、無の境地から一気に現実に引き戻されるのだ。

 もちろん、上を向くや、はたまた後ろを向いて小を足すという強者も、世の中にはいるかもしれない。が、これまでの人生で(当然のことながら)、頭だけ後ろ向きで用を足す男性を見たことはない。ここでふと疑問が頭をよぎる。

 「女性たちは用を足している時、どこを見ているのだろう?」

 この問いの答えもまた幾通りもあるかもしれない。あるいはパターン化されるかもしれない。しかし、女性の場合は個室だから、あられもない姿による、思いもよらぬ答えすら存在するかもしれない。いや、心のどこかでそうであってほしいと願っている。ヨガしながらとか。まあそんなことないか。ないよね。ない、ですよね?

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