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映像における「シナリオメイキング」を、記事の執筆に生かすには? #unleash_event レポート

2019年7月8日、編集デザインファームinquireが運営するメディア「UNLEASH」で「映像のシナリオメイキングを体験して想像力を刺激するワークショップ」を開催しました。

ゲストに迎えたのは、ビジュアルストーリーテリングのプロフェッショナルであるEXIT FILMの田村祥宏さん。

私もスタッフとして参加したのですが、いつもとは異なる思考回路を使ったことで脳が刺激され、とても貴重な時間となりました。そこで、今日は

①シナリオメイキングワークショプの内容
②記事を執筆する際に生かせる点

の2点を簡単にまとめてみたいと思います。

ワークショップの内容

一連のワークショップを通して、シナリオメイキングを体験する今回のイベント。

このシナリオメイキングの基盤となっているのは「スペキュラティブデザイン」とという考え方です。

スペキュラティブデザインについては、UNLEASHのこの記事でも紹介されているので、ぜひ読んでみてください。

スペキュラティブデザインとは、あり得る未来の姿を提示することで、人々の思考を促すデザイン手法。「未来はこうあるべきだ」という“問題解決型”のデザインではなく「こういう未来もあり得るのではないか」という“問題提起型”のデザインともいわれる。

シナリオメイキングというと、起承転結を論理的に固めるところから始めるのかと予想していましたが、今回のワークショップでは上記の考え方に基づいて「あり得そうなシナリオ」を柔軟に発想するところから始まりました。

具体的には、一見無関係に見えるキーワードを組み合わせ、それを半ば無理やり繋げて、映像のワンシーンを描写します。その際、起承転結は気にせず「こういうシーンもあり得るのではないか」という自由度の高い描写を心がけます。

例えば、私が渡されたキーワードは「主体的な行動選択」「メディア発信」「ヤクザ」「外資系商社マン」。これらを組み合わせて、ラブロマンスのシーンを作ることがお題だったので、

外資系商社マンの男がはるか昔の新聞記事の切り抜きを見て微笑んでいる。そこに写っているのはある女性だ。商社マンの頬には大きな傷がある。男は記事を見ながら感慨深げに頬の傷を撫でた。

といった感じになりました。

次に、この脈絡なくも見える「ワンシーン」から物語の主人公を決め、以下の3点を考えながら徐々にシナリオに落とし込んでいきます。

①主人公の内的欲求
②主人公の外的行動
③敵対者/壁

例えば、先ほどのシーンを利用して、私はこんなプロットと3要素を考えました。

30歳のやくざの男は裏社会で成功しながらも、選択肢のない生き方に嫌気がさしていた。そんな時、ある女性のインタビュー記事を読む。その女性の「自分の住む世界は自分で決める」という言葉に感銘を受け、自分も生きる世界を自分で決めたいと思うようになる。そこで組織を抜け出し、女性が働いている外資系の商社に入る。そこで新たな人生を歩もうとするが、昔の仲間たちからの妨害を受け…

①主人公の内的欲求:
憧れる女性と同じ世界を生きたい
②外的行動:持続的な行動
昔の仲間の妨害を逃れつつ、商社で地位を築こうと奮闘する
③敵対者:
昔の仲間、反社会的な組織

(使わざるを得ないキーワード「外資系商社」が突如出てきて、いい味だしてますね…(笑))

田村さんによれば、シナリオの多くは、①②③の組み合わせや、当てはめる要素に規則性(=型)があるのだそう。(例えば「主人公の内的欲求」は満たされず、挫折した主人公が「②外的行動」を達成しようと躍起になる、など)

ワークショップでは提示された型を用いつつ、最後のエンディングを考えていきました。

その際エンディングに、特定の課題に対する自分なりの「考え」を混ぜ込むことで、結果としてストーリーを通した問題提起に繋げられるようになっています。

私の場合は「メディア発信は、人の思考の幅を広げることはできるが、その先の行動を選択するのは結局その人自身でしかない」という考えを混ぜ込み、以下のようなエンディングを考えました。

仲間の妨害を受けた男は、結局商社で成功することができなかった。そこで、男は商社で働いていた時に得た情報を組織に持ち帰った。そして、その情報を元に、裏社会での地位を確固たるものにしていく。男は頰の傷を撫でながらこう言った。「俺はこの世界で生きることを自分で決めたんだ」。

(作ってみて分かったのですが、シナリオメイキングってめちゃくちゃ難しいですね…ツッコミどころが多い)

記事を執筆する際に生かせる点

ワークショップ後にグループのメンバーで「面白いシナリオとそうではないシナリオどこが違うんだろう」という話をしました。

スペキュラティブデザインに関して、というよりは、ストーリーテリングに焦点を当てた気づきにはなってしまうのですが、その際に出た話題で、記事を執筆する際に生かせそうな点をまとめておけたらと思います。

①最後に謎の答えが用意されている

面白いシナリオにおいては、最初の部分に提示された謎に対して、最後のエンディングで答えが用意されています。いわゆる伏線回収なので、よく言われることかもしれませんが、記事執筆の際には忘れがちだな、と。

例えば、リードで「この会社が急成長した要因はどこにあるのか」という課題(謎)が提起されたとしたら、

A(資金調達なのか?→それだけではうまくいかなかった)
B(では、優秀な外部顧問なのか?→それでもうまくいかなかった)
C(ビジョンミッションを策定し浸透させた→うまくいった)

みたいな形で最後に答えが来るように構成組むのもありだな、と感じました。(大切なことを最初に書くのはセオリーですが、この順序もいいのかな、と)

②立ち向かうべき「敵=課題」の難易度を徐々に上げていく

基本的にシナリオは主人公が内的欲求を抱えて敵(壁)に立ち向かっていく、の繰り返しで構成されるらしいです。その際出てくる敵(壁)が徐々に弱く(小さく)なっていったら盛り上がりにかけるよねという意見が出て、なるほどなと思いました。

記事でも、出てくる課題(要素)のインパクトが徐々に高まるように構成を作るとうまく読者の読みたいという感情を引き出せそうだな、と感じます。

③リードや締めの作成時に今回のようにキーワードからの発想法を用いる

ライティングをしていると、リードや締めが思い浮かばない…ということがよくあります。その際、無理に最初から筋道のたったリードや締めを考えようとするのではなく、今回のようにキーワードから「シーン(情景)」を思い浮かべ、そこからストーリーを導き出して行く。通常と反対方向とも言える発想法が役に立つのではないかという意見も上がりました。

確かに取材で得たキーワードを元に印象的なシーンを描写。その後伝えたいテーマを紐づけて起承転結を考えていくと言う思考法はこれまでしたことがなかったので、次回試してみようと思います。

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記事をストーリーとして捉えるとはよく言われますが、これまでいまいちピンと来ていませんでした。しかし、今回実際にシナリオを作る体験をしたことで、少しその感覚を自分の中に身につけられたように思います。

これから映画などを見るときはどういうストーリー展開になっているのかを気をつけて見てみたいと思います。では!

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