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「お金のマニュアル」 -損をしないコツ- 其ノ19 不動産編③

 <相次ぐ不動産スキャンダル - "あなたは特別なお客様" >

 ただ、これも闇雲に不動産投資をすればいい、というものでもない。最近起きた事件でシェアハウス販売会社の破綻、いわゆる「パンプキンショック」スルガ銀行の不正融資レオパレスの違法建築の問題などを鑑みると、ここでも金融詐欺的な行為が横行している事がわかる。

 基本的な手口はこうだ。

 「投資した資金に対して家賃収入が利回り計算で5%になり、借金しても家賃で返せるので確実に儲かります。家賃は当社が30年一括で保証(=サブリース)しますので安心です!」

 ちょっと待って欲しい。それなら業者が自分で建物を回せば良いのでは?

 「いやいや、お客様だけ特別にお持ちしているのです!」

 日本人は、この「あなたは特別」攻撃に本当に弱い。人がいいというか、人任せというか。しかし、何度でも言う、特別な一見客など存在しない
様々な市場には目を皿のようにして収益機会を伺うプロや投資家が何万人とおり、市場で収益機会は早い者勝ちで一瞬にして奪われてしまう。のんびり素人に儲けさせるようなネタなど残りはしない。誰かが何かをあなたに持ってくるときは、基本的にその人が売りたいからだと思った方よい。

 <利回り5%の不動産?>

 アパートなどの不動産は収益物件と言われるが、セールストークのミソは「利回り5%」とうたってているところ。利回りと言えば「確定収入」と勘違いしそうだが(日本人は本当にこの「利回り」が大好き)、不動産における「利回り」は衣をまとわしているだけで「確定収入」ではない。なぜなら不動産や株では売却時に回収される投資元本額が固定されていないからだ。

 満期日の償還元本が確定している預金や国債(英語ではFixed Income、固定収入の商品のカテゴリー)と違い、途中いくら配当金や家賃を受け取っても、1,000万円で買った不動産を結局500万円で売ってしまったら利回りも何もあったものではない最後に現物を売るまで収支は確定しないのである。

 不動産の収益物件を見て、かつての職場で売っていた商品を思い出した。高利回りを謳っている「仕組み債」や「ハイブリッド債」である。本来低金利の円建て債券にオプションなどのデリバティブを付けて高利回りの衣をまとわせるところがそっくりである。顧客にオプションを売らせて無限のリスクを負わせ、法外な利鞘を抜く商品もある。買い手には日本の中小の金融機関がずらりと並んでいたのだが、

 「こんな "屑商品" 買わなければいいのに、全く日本の金融機関は...」

 と本心では思ったものである。

 其ノ20は不動産編④。投資商品購入時のチェック方法など。

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