急速に戻す「ウォン安」 - 日韓関係は和解へ? アメリカでも「カラータイマー点滅」

 随分とメディアやネットでも取り上げられるようになった「ウォン安」。今16日(金)のNY市場を眺めながらこの原稿を書いているが、ここへ来て急速に韓国ウォンが為替市場で買い戻されている。一時1223(ウォン安)まで買われていたドル/ウォンは1205(ウォン高)まで売られている。

 為替介入もあったのかもしれないが、その効果よりも日韓関係に(主に韓国側からの働きかけによる)融和ムードが漂ってきていることが主因だろう。13日に韓国「外貨準備高」の怪でも書いたが、ウォン売りを仕掛けている投資家、トレーダーにとっての最大のリスクは日韓の和解である。15日の文在寅大統領の演説のトーンが変わった、との報をきっかけに動き出したように見えるが、果たして本当に和解に向かうのだろうか?

 「損切丸」は今回の動きは一時的と見ている。おそらく主因はGSOMIAだろう。韓国サイドは一時破棄をちらつかせて交渉カードにしようとしていたが、アメリカから強烈な要請(命令?)があり、24日の延長期日を前に破棄をあきらめたのではないか。国民をあれだけ煽った手前、ここでGSOMIA延長するには「融和ムード」を演出するしかなかったのである。

 翻って日本。あれだけネットで大不評の岩谷防衛大臣(大分選出)に今回わざわざ発言させているのは、焦点がGSOMIAだからではないか。(韓国から大分への飛行機が飛ばなくなったことで地元から陳情を受けていた大臣にとっても渡りに船だったかもしれないが...)

 つまり、今回の「融和ムード」は日米韓による演出だった可能性が高い。アメリカはGSOMIAさえ延長できればそれでいいのである。だが、戦略物質である半導体のシェアを韓国(→中国)から取り戻したいのは変わっていないはず。マイクロン広島工場の1兆円投資やアプライドマテリアルズによる旧日立系のKOKUSAI ELECTRIC買収=2,500億円を忘れてはいけない

 また14日の投稿でも触れたが、アメリカにも「カラータイマー」が点滅しており、株価を支えたい、との思惑も働いているだろう。携帯電話やパソコンなどの対中関税を一部延期したことでうまくいくかと思われたが、その直後のNYダウ800ドル下落には正直肝を冷やしたのではないか。FRBによる利下げカードが残っているとは言え、株価が下落トレンドに転換してしまっては元も子もない。日韓の「融和ムード」もそうだが、香港のストライキについて習近平と電話会談をしたり、イギリスが拿捕したイランのタンカーを解放したのも同じ狙いかもしれない。

 これらを総合的に考えると、しばらくは平穏なマーケット展開になると推測する。株価が安定基調に戻るまでは、アメリカもできることはしてくるだろう。ただ、「トランプ光線」にマーケットは大分慣れてきており、戦略を修正していかないと今までのような効果は得られないかもしれない。

 ウォンに関して言えば、少なくとも24日までは買い戻し基調が続くことになる。だがGSOMIAが一旦延長されてしまえば、「日米韓」の「融和ムード」演出は必要なくなるわけで、日韓それぞれの国内世論と双方の政権維持のことを考えると、和解が順調に進むとは到底思えない。特に韓国は来年4月に選挙を控えており、まだまだ一山二山あるだろう。

 来週一杯は市場の動向を注視し、相場を見失わないようにしたい。

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