取引量の少ない「薄商い」が発する「正しいサイン」- 取引に厚みがあることの大切さ - NYダウ、日経平均、ドル円 > ビットコイン(BTC)、KOSPI、ドルウォン

本日意外なタイミングで日経平均が上げている。何でも25日移動平均が75日平均を上回る、いわゆる「ゴールデンクロス」になりかけており、テクニカルには「買いサイン」が点灯しているらしい。夏休み入りで取引量はかなり低下しているが、こういう薄商いの時こそ本来の市場の需給が出やすい。特に夏休みや年末など長期休暇前は多くの市場参加者がリスクを閉じようとするため、普段は見えないポジションの偏りが顕在化しやすい。これが結構「正しいサイン」だったりする。この法則は取引に厚みがある(=市場流動性の豊かな)主要市場で有効なことが多く、NYダウやドル円など、夏休みなどの薄商い、閑散相場の時の動きはその後の動きを指し示すことがある。

筆者にも苦い経験がある。ドイツの短期金利先物だったと記憶しているが、クリスマス休暇中に相場が変な動きをして持っていたポジションに損を抱えてしまった。「こんなのは薄商いで変に動いているだけ。年明けには戻るはず」と高をくくっていたら、新年にその先物が大暴落。正に「火だるま損切丸」となってしまった。若気の至りだったが、いい勉強にはなった。

ただ、市場参加者が少なく、流動性の乏しい市場では別の認識を持った方が良い。最近ではビットコインや韓国株式指数のKOSPIやドルウォンなどを見ているが、明らかに少数の参加者がシェアを握って意図的に動かしていたり、他の主要市場からの影響の方が強かったりする傾向が見られる。

例えばKOSPI指数について言うと、日韓のいざこざから日経は上がるけどKOSPIは下落、などのような事態を想定(期待?)する向きもあるようだが、実際は今日の様に日経が上がる時はKOSPIも連れ高になることが多い。ドル円とドルウォンにも似たような相関性が見られる。半導体関連株も個別に見ることがあるが、米マイクロンの値動きがしっかりしているのに比べて韓SKハイニックスなどは値動きが荒い。時価総額にもかなりの差があるので仕方ない面もあるが、その点まだサムスンの方が値動きはまともである。

流動性が低く荒っぽい相場を英語では「BOLD」とか「Choppy」と呼んでいるが、最近見ている中で最も「BOLD」なのがビットコイン(BTC) 。はっきり言って素人は手を出すべきではないし、相場慣れしている人でも荒い相場が得意な方以外は避けた方が無難。

銀行員に「仮想通貨は駄目」という人が多いそうだが、おそらくこのBTCを指しているのだろう。だが、何度か寄稿しているフェイスブックのリブラは別物である。事実(筆者の事前想定通り。「お金のマニュアル」仮想通貨編等ご参照)、国家主権に絡んだ大騒動になりつつある。これからの普及過程や流動性の増加に注目である。

「損切丸」を名乗っているからというわけではないが、損切りする時には相場が逆に行っているわけだから相手方を探すのが難しく、想定より損が膨らむのを覚悟する必要がある。まして取引量の少ない市場では、売りたくても買い手が見つからずとんでもない損失になることもある。BOLDマーケットは儲かる時も凄いが、損失も同程度に凄い損になる覚悟が必要だろう。

筆者が某日本の銀行支店で外国課勤務だった時に担当していた中堅商社は、本業は順調だったのに、当時市場が開いたばかりの「小豆相場」にのめり込んでしまい、危うく会社をこかしそうになった。後から知ったのだが、当時の小豆相場は3人ぐらいのトレーダーが80%以上の市場シェアを握っていてカモをいいように振り回していたのだという。なんとビットコインも0.7%の参加者が80%以上のシェアを占めているという。まさに現代の小豆相場。どの市場にもゼロサムゲームの要素はあるものだ。

長期的に理屈に沿って正攻法で主体的に投資したい損切丸としては、あまり取引に厚みのない市場は好まない。筆者も損切りは「気楽」に、とアドバイスしているが、取引量の少ない市場ではそうもいかなくなってしまう。なので、仮想通貨も今のBTCはどうかと思うが、LIBRAのように今後大きく普及していく見込みのあるツールについては注視していきたい。起業などにも通じる点があるが、既に成熟してしまった市場よりもこれから伸びていく市場の方がチャンスも多かろう。

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