従来のアジア貿易

人民元に付いていく韓国ウォン 其の2 - アジアの貿易構造変化と為替レートのメカニズム。

 大分減ったとはいえ、未だに韓国サイドから大量に垂れ流される「プロパガンダ的情報」。世論調査など真偽不明なものも多く、投資判断には役立たないので「損切丸」ではほとんど無視している。そこで基本に立ち返って、人為的な操作が難しい為替レートのメカニズムについて考察を加えてみた。

 これまで日本をはじめ、アジア諸国は一大消費地であるアメリカに製品を売って経済を大きくし、結果として輸出代金で受け取ったドルを売り自国通貨を相対的に高くすることで国富を増やしてきた

 ↑ 標題に日本、アメリカ、中国、韓国を代表例としたチャートを添付。

 主要通貨ドルのメリット=潜在的ドル安圧力、を最大限に生かし、通商交渉を圧倒的に有利に展開してきたのは周知の通りアメリカだ。「円高不況」などを経験した日本などは、米国工場を増やすなどして時間をかけてドル売り圧力を構造的に減らし、何とか凌いできて今に至っている。

 しかし、ここで大きな転換期が訪れる。中国の台頭だ。今やGDPもアメリカに次ぐ世界第2位。アメリカと並ぶ二大消費地と呼んでも過言ではなかろう。当然ながら貿易構造に大きな変化をもたらした。↓ 簡易なチャート。

現在のアジア貿易

 ここで日本、韓国の対応が真っ二つに割れた結果が現在の揉め事の根幹であろう。日本も当然中国向けの輸出にも注力していくわけであるが、米国との同盟関係は強固に維持してきた。対照的に中国>アメリカへ大きく舵を切ったのが韓国である。今や中国向けの輸出が全体の3割を超え、10%台のアメリカを押さえて圧倒的シェア1位である。

 そうなると、為替レートの影響についても大きな変化がおこる。韓国にとってもはや対ドルよりも対人民元のウォンのレートの方が大事になってきていることだ。実際チャート( ↓過去1年間の人民元・韓国ウォン)を確認すると、1人民元=160~170ウォン前後に調整され、人民元に対してある程度のウォン安水準を維持することが韓国にとって重要であることが伺える。

人民元ウォン1年

 つまり韓国にとっての貿易収支は中国次第であり、それゆえダイレクトな影響を受けやすくもなっている。あくまで推則だが、力関係を考えると韓国は輸出代金を人民元で受け取っているのではないか。ところが、日本などからの原材料の輸入決済のほとんどは未だドル(或いは円)のため、受け取った人民元を為替市場で売ってドルに替える必要が出てくる。これは正に中国に代わって為替市場で「覆面介入」しているようなものである(だから中国人民銀行は人民元売介入の必要がない?)。更に言えば、対人民元で一定のウォン安水準を保つためにウォンも売る必要があったと考えられる。

 こうして「人民元に付いていく韓国ウォン」が出来上がった。

 従来通り中国がアメリカ向けに大量に輸出をしている間は、反対側で中国がドル売・人民元買をするので、為替の売買いが拮抗して極端な為替変動が避けられていたのだろうが、ここでトランプ大統領が現われて事態は一変する。米中関税合戦である。

 この影響により中国からの対米輸出が激減したため人民元・ドルの需給バランスが崩れ、人民元は一時1ドル=@7.20近辺まで売られることになった(消費地の通貨は売り圧力が潜在)。その過程で韓国ウォンも連れ安になり1ドル=@1.220越えまで売られた(或いは売った)のである。対中国の貿易を考えると、人民元安の間は韓国はウォン買介入がしたくともあまり大々的に出来なかったのかもしれない

 一方で、依然原材料の輸入にドルが必要なため、一方的なウォン安が国の収支を悪化させるのも事実。確かにこの辺が韓国経済のアキレス腱ではあるが、過去2回の金融危機時とは貿易、金融的な状況が明らかに違っており、全く同じパターンになるとは考えない方が良さそうだ。真の危機が訪れるとすれば、人民元安に関係なく韓国ウォンが売られる時だろう(だからドル調達の重要性は変わらない)。

 例えば韓国が人民元売りの「覆面介入」している事情などについて、アメリカは既に知った上での今の対応なのかもしれない。極端に言えば、中国、韓国はドルを一切介さない貿易取引体制を将来的に目指しているようにも見え、まさに「覇権」をかけた戦いの様相を呈している。だからこそアメリカにとって「日本」が重要になっており、「半導体材料の管理」に行き着いたのではないか? つまり現在の日韓の揉め事は、正に米中の「覇権争い」の代理戦争とも言える。

 ただ文在寅政権があまりにも経済、マーケット音痴で、繰り出す経済政策が失敗の連続なので、中国も「覇権」のパートナーは無理、と見切っているようでもある。そうすると、最近中国が日本ににじり寄ってきていることにも説明がつく。中国にとって原材料を運んでくれるのは日本でも韓国でも構わないのだから(但し日本は代金を人民元では受け取らないだろう)。

 それから最後に - KOSPI指数がこの1週間猛烈に戻しているが、おそらくこれはPKO(Price Keeping Operation、株価介入操作)だろう。韓国内の政治情勢が不安定になっている中、過去のあの国の大統領の最後を考えれば、これは「命懸け」の施策といっても大袈裟ではなかろう。何せ自国通貨はいくらでも刷れるし、株のPKOにはドルはいらないのだから。もっとも、この国でも同じようなこと(=日銀、年金による株の大量購入)をしているので、これについて批判できる立場にはないが(苦笑)。

 最後の最後に何が訪れるのか - 戦争かインフレか。(進撃の巨人ではないが)破滅的な結末は見たくないのだが...。

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