米中関税合戦 - 「2人のジャイアン」が胸ぐらを掴んでの殴り合い。

 トランプ大統領と習近平国家主席 - 正に「2人のジャイアン」が胸ぐらを掴んでの殴り合いになってきた。一方が殴ればもっと強く殴り返す、の繰り返しで、相手が音をあげるまで続けるつもりらしい。どちらも強いためなかなか終わらないが、いよいよ双方とも出血が酷くなってきた。こうなると、殴り疲れるまでやりきるしかないのかもしれない。

 さて、昨日(23日)の米株価はしばらく前日比プラス圏で安定推移していたが、中国の関税引き上げに対抗するようにトランプ大統領が再度関税引き上げを示唆したことから急落、パウエルFRB議長の利下げ示唆発言など吹き飛ばしてしまった。ドル円も急落したが、何も一方的なドル安ということではなく、対人民元でドルは上昇している。(したがって円が避難通貨として選考されている)いわゆる「リスクオフ」=市場リスクが増大したときに避難行動に出ること、である。

 ここまで株価を注視してうまくコントロールしていたトランプ大統領であるが、音をあげない「もう1人のジャイアン」に対して殴る力を増した格好だ。こうなるとどちらがボスかを決める「覇権争い」になるため、引くに引けない。優先度で言えば「覇権」>「株価(景気)」となるだろう。

 「ジャイアン」は血を流すかもしれないが、体が強いので大した怪我は負わない。どちらの「ジャイアン」に付くか迫られた弱い人達(国々)がケンカに巻き込まれて大けが、あるいは最悪瀕死の重傷を負ってしまうだろう。

 弱小国が大きな痛手を被るという意味では、1997年の「アジア通貨危機」型の混乱が想起される。既にベネズエラは瀕死の重傷だが、アルゼンチンやイタリアに波及しつつあり、トルコなども危惧される。いずれも景気が悪いのに通貨安によるインフレに悩まされる、いわゆる「スタグフレーション」だ。(イタリアはユーロに守られている分若干違うが)物価が上がるのに給料が下がる-想像するだに恐ろしい。

 折しもアジアでは「スネ夫」「のび太」が小競り合いを演じている。「のび太は酷い奴でこちらが仲直りしようとしても無視するんですよ」、とご近所に悪口を触れ回る「スネ夫」。それに対し、いや、そうじゃないんです、と釈明して回る「のび太」。「スネ夫が約束を守らないんです」

 一昔前にはアメリカが「ドラえもん」の役に回ることもあったし、国連、WTO、IMFなどがその役を引き受けることがあったが、今やほとんどがお昼寝状態。アメリカが「ジャイアン」になってしまった以上、もはやケンカを止める術はない。拳が砕けるか、殴り疲れるかを待つしかなさそうだ。

 来週以降のマーケットを展望すると、昨日のNYダウ600ドル下げは痛い。さすがの「トランプ光線」もその効力を失ってきており、株はしばらく調整局面入りが避けられない情勢だ。大統領再選を目指すにはここが正念場だろうが、ちょっと状況が悪い方に向かいつつある。さて、どうするのか。

 「アジア通貨危機」型の混乱を予想するなら、マイナーな市場にも注目していく必要がある。アルゼンチン、イタリア、トルコ etc... そしてアジアでは韓国もその1つに入るだろう。最近日本のデイトレーダーの中にはドル・ウォンやKOSPI指数(韓国総合株価指数)に注目する向きも増えていると聞く。政府が必死に介入しているようであるが、さあ勝敗の行方は如何に。

 ps. 最近香港や韓国の投資家で日本の不動産を買う顧客が増えてきているらしい。何かあったら逃げ出す準備をしているのだろう。さもありなん。円が高くなるわけだ。

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