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口座維持手数料 導入検討 大手銀 - 預貯金はいよいよ「目減り資産」へ

 やはり、というか、いよいよ、というか、とにかく日本の銀行の本格的な「コスト転嫁」が始まりそうだ。最初の衝撃を和らげるために、手始めとしていわゆる*「不活動口」と呼ばれるほとんど使われていない口座を対象にするらしいが、おそらくこれをきっかけに「手数料増額」「マイナス金利付利」の方向に持っていくつもりだろう。新しい時代の幕開けである。

 そもそも「不活動口」が増えてしまったのには銀行側にも責任がある。経験がある方もおられるかもしれないが、転居の際、口座を転居先の支店に移す、いわゆる「移管」という手続を頼むと、「新規の口座を新しい支店で開けて対応して下さい」というのが定番だった。筆者も銀行の支店勤めの時に経験があるが、とにかく「移管手続」は面倒くさい。それでこのようなやり方が横行し、無駄な口座=「不活動口」が増えてしまったのである。

 「損切丸」では預貯金は「安全資産」ではない、と折に触れ書いてきた。最近の投稿だと11月5日付.「ヨーロッパがおかしい - 遂に個人預金にマイナス金利が適用へ。富裕層の資金は株へ向かうのか? 」 ↓ でも、日本でも銀行による「コスト転嫁」はそれほど先の話ではない、と書いた。(決して事前に銀行関係者から聞いていたわけではないが)思ったより事は速く進んでいるな、と感じている。それほど時間的に余裕がないのだろう。

 ネット界隈では当然ながら評判が悪い。今後の預金者のアクションを考えてみよう。

 1.口座維持手数料取らないネット銀行などに預け替える。

 ネット銀行でも中小銀行でも預金残高が増えていけば対応は大手銀と同じになる。また、銀行規模が小さくなれば倒産リスクも大きくなる事に留意。

 2.取引銀行を一つにまとめて優遇を受けられるようにする。

 ある程度は有効。しかし「マイナス金利付利」など今後予想される銀行の施策に対応できるとは限らず、預貯金として持っている限り「目減りリスク」(含.インフレリスク)の根本的解決にはならない

 3.配当のある株式やJREITなどに投資する。

 とりあえず配当を受け取れるという意味ではあり。ただし、価格の妥当性については下落リスクを考慮しておくこと。→ 預貯金の「目減りリスク」との比較になる。膨大な預貯金資産(約1,000兆円)からの移動キャッシュフローを考えるとある程度価格を下支えするかもしれない。

 4.預金を下ろしてタンス預金。

 頑丈な金庫を買えばそれなりの値段がするし、泥棒にも入られ易くなるのであまりお勧めしない(笑)。インフレ対策にもならない

 5.円はあきらめてドルなどの外貨預金にする。

 将来的に使うであろう外貨に替えておくのは有効。その額を超えた分には当然為替リスクが伴う。預金保険も対象外なので注意。

 ここでお金を3種類に分類して、優先順位が高いものからA、B、Cとする:

 A. 生活に必要なお金。

 必ず払わなければいけないお金。税金や健康保険料、年金などの社会保障費や、住居など衣食住に関わる出費など、生きていくのに不可避なお金

 B. 生活に必ずしも必要でないお金。

 娯楽費、酒代、ギャンブルなど、なくてもとりあえず生き死にには関わらないお金。「投資」も狭義ではここに入る。

 C.借金

 読んで字の如く、自分以外から借りるお金。

 C.借金については、いずれ別の投稿で触れることにしたいが、今回の銀行の口座維持手数料をきっかけに自分のお金をどうするか、となった場合にまず考えて欲しいのは、A. 生活に必要なお金、だ。

 お金にどのくらい余裕があるかにもよるが、国民年金などは2年前払いが可能で、おまけに割引措置もある。増える災害に備えるのであれば、火災保険や地震保険を年払いではなく2年とか5年とか一括で払う制度もある。外国に行く予定がある程度確定している方なら使う予定の外貨を保有するのもいいだろう。とにかく、**どうせ払わなければいけない(円の)お金なら前払いしておくこと。そのためにはとりあえず向こう5年ぐらい目処に、将来にわたるキャッシュフローを一度真剣に見直してみて欲しい

 **厳しいことをいうようだが、AとBの優先順位が逆転している人が結構いる。ゴルフにいくお金はバンバン使うのに、いざ家が壊れて雨漏りすると「お金がない!」などと言う人。なぜか遊ぶお金は別枠。家の補修にまずお金をかけてから、それでも余ったお金でゴルフに行くべきだろう。挙げ句に借金して雨漏りを直すのは最悪である。

 「投資」もしかり。A. 生活に必要なお金をしっかり払ってから、余ったお金で投資を行うのが理想だ。「そんな余裕はない!」とお叱りも受けそうだが、余裕ができるまで「こつこつ」貯めるしかない。AとBの優先順位が逆転している人はこの「こつこつ」が出来にくい。

 「投資」といえば聞こえはいいが、実はとても地味で時間がかかるもの。ウサギとカメではないが、最終的には「こつこつ」ひたむきにやった人が勝つ、というのが筆者の考えだ。なので、60歳になってから退職後に改めて考えるのではなく、なるべく若いうちから自分の将来のキャッシュフローを想定して投資の道を開いていくのが良いのではないか。(50代の筆者は自己反省も込めて...)

 今年初めの「年金2,000万円問題」もそうだが、今回の口座維持手数料「投資」とは何か、自分の資金繰を考え直すきっかけになると良いと思う。

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