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ボードゲームとその他エンタメビジネスの市場規模比較、要因分析

 国内市場規模においてデジタルゲームとアナログゲームはざっと300倍の差があります。しかし、デジタルゲームがアナログゲームより300倍面白いかと言われれば、そんなこともないように思います。なぜボードゲーム市場はその他エンタメビジネスの市場規模と比較して小さいのか、その理由を模索し、ボードゲームの市場規模を大きくしていくための方法について考えてみました。


各エンタメビジネスの国内市場規模

デジタルゲーム:約2兆
漫画:約7,000億
アニメ:約3兆
音楽:約2,000億
映画:約2,000億
ライブエンタメ:約6,000億
トレーディングカード・カードゲーム:約2,500億
ボードゲーム:約70億
※参考 
デジタルゲーム(全世界):約22兆
ボードゲーム(全世界):約2,500億
 上記のようなエンタメビジネス全般の中でもボードゲームの市場規模は突出して小さいです。私はデジタルゲームもしますし、映画、漫画も楽しんでいますが、それらに負けないくらいボードゲームは面白いと思っています。ここまで市場規模に差がついてしまうのはなぜなんでしょうか。

ボードゲームの弱点

 様々なエンタメビジネスの歴史や成長要因等を分析していった結果、逆に見えてきたのがボードゲームの2つの弱点です。
 ・ボードゲームの人気を左右する遊び方(ルール)はIP(知的財産)の対象外。
  →ボードゲームへの大きな投資を困難にしている可能性があります。
 ・プレイヤー自身がゲームの主人公になるため、IP(知的財産)の対象となる魅力的なキャラクターを創出できない。
  →その他エンタメビジネスが当たり前に取り入れているメディアミックス戦略を取り入れるのを難しくしている可能性があります。
 ボードゲームの人気を左右する遊び方(ルール)は無形であり、法的に権利を守ってもらえないことから大きな投資の呼び込みを難しくしていると思われます。また、プレイヤー自身が主人公になって没入できることがボードゲームの良さだと思っていますが、逆にIP(知的財産)の対象となる魅力的なキャラクターを創出できないという弱みにもなっています。それらが他エンタメと比較して市場規模の拡張を難しくしている可能性があります。

メディアミックス戦略とは

 メディアミックス戦略とはテレビ、新聞、ラジオ、雑誌、ネット等、異なる複数のメディアでプロモーションを展開する戦略のことです。メディアミックスの最大の成功事例はポケモンと言われています。デジタルゲームから始まり、アニメ、映画、グッズ、カードといった様々なジャンルで成功をおさめつつ、様々なメディアに露出し続けることで国民的なゲームとなりました。ゲームに登場する人気キャラクター達は見ない日がないくらい活躍し続けています。
 ボードゲーム以外のエンタメは常に虎視眈々とIP(知的財産)の対象を創造し、何かをきっかけに人気が出れば、様々なジャンルのエンタメに姿や形を変えつつ、複数のメディアで取り上げられることで一気に大きな市場を作り出すことが可能になります。例えば、私自身も「鬼滅の刃」を知るきっかけは映画でしたが、結果的に映画を2回見て、漫画を全巻揃え、アニメも全て見て、UFOキャッチャーでキャラクターのフィギュアを取得し、子供達は日輪刀の玩具やシール付のお菓子を買いました。鬼滅の刃関連ビジネスにまぁまぁ貢献していると思います。
 そう考えるとボードゲームと似たようなジャンルであるトレーディングカード・カードゲームの国内市場規模がボードゲームの35倍の約2500億であることも説明がつきます。ゲームとしてが面白いというだけでなく、デジタルゲーム、漫画、アニメ、スポーツ選手等のIP(知的財産)の対象となる魅力的なキャラクター達のカードが市場を牽引しているのだと思われます。

ボードゲーム市場を拡大する方法

 デジタルゲーム、漫画、アニメ、小説等のエンタメがジャンルやメディアをまたがって大きく展開しているのに対し、ボードゲームは他ジャンルから孤立して、ボードゲームという枠組みの中で孤軍奮闘することとなります。結果的にメディアに露出することも少なく、マス層に面白いボードゲームの存在を知ってもらえる機会もかなり限られてしまいます。
 そういった弱点を認識したうえでボードゲームの市場規模を拡大する方法を検討した結果、二つの方法があるのではないかと考えました。
 ・ボードゲームらしいメディアミックスを探る
 ・エンタメ以外とのミックスを探る

ボードゲームらしいメディアミックスとは

 ボードゲームのメディアミックスは難しいと記載しましたが、注意深く探してみるといくつか成功事例が見つかりました。
・将棋
 将棋はボードゲーム界におけるメディアミックス戦略の最大の成功事例だと思います。将棋に関連する新聞記事、書籍、主要タイトルの対戦動画等、幅広く展開をしており、将棋関連の市場規模はボードゲームの市場規模を超える約160億と言われています。現在最強の騎士である藤井さんが数多くのメディアに登場することで将棋というゲームも同時に広め続けています。
・麻雀
 最近、将棋を猛追していると感じさせるのが麻雀です。abemaが本気で麻雀をバックアップしており、麻雀のプロリーグであるmリーグは人気コンテンツとなっています。麻雀関連の書籍や若者向けの雀荘が増えることで競技人口も増えてきており、メディアミックスの成功事例と言えます。ちなみに麻雀に興味がなかった私がmリーグの存在を知ったのは岡田さんという雀士をテレビで見たことがきっかけです。
・パーティーゲーム
 様々なパーティーゲームをユーチューバーや芸人がyoutube、テレビ等でプレイしているのもメディアミックスの成功事例といえます。コストのかからない商材なので、プレイヤーの魅力を引き出すようなパーティーゲームであれば、様々なメディアに露出するチャンスもあるかと思われます。
 メディアミックス戦略に成功しているボードゲームに共通しているのは、ボードゲームは黒子に徹し、主役であるプレイヤーの魅力を最大限に引き出している点です。ボードゲームでメディアミックス戦略をとるためには、ボードゲームそのものの魅力だけでなく、「ボードゲーム×プレイヤー」のトータルでのコンテンツ価値向上を意識する必要があるのだと思います。参考になりそうな事例として、ボードゲームと同じくIP(知的財産)のないクイズという分野でメディアミックスを成功させているQuizKnockの動向に注目しています。

エンタメ以外とのミックスとは

 どうしてもエンタメ分野でのメディアミックスを考えてしまいがちですが、個人的にはボードゲームは教育分野との相性が良いと考えています。
 教育の国内市場規模は約3兆円です。ウボンゴというパズルゲームは海外では学校の教材として取り入れられている事例があるらしいです。仮に国内約600万人の小学生全員に2000円のボードゲームを教材として配ることになった場合、ボードゲームの市場規模を120億円押し上げる要因になります。ボードゲームが優れた知育教材になり得ることについて行政や教育関係者へのロビィ活動をしていくことも有益なのかもしれません。

最後に(ボードゲーム市場の良い所)

 他エンタメと互角かそれ以上に面白いのに市場規模が小さいことへの悔しさがきっかけとなって要因分析を始めたのですが、その結果ボードゲーム市場の良い所も見えてきました。
 ボードゲーム市場には企画する、デザインする、製作する、販売する、広告する、ボードゲームカフェを開く、といった様々な参加者が存在しています。ボードゲーム市場の参加者は良い意味でビジネスよりも単純にボードゲームが好きという動機を優先させている方が多いのではないかと思われます。ボードゲームを買う人はボードゲーム事情に詳しくなることで売る人にもなれます。過去記事に記載しましたが、デザインすらできない素人でも、とりあえず製作、販売を開始できる状況にあります。
 市場規模の大きな他エンタメで作品を世に出し広めるためにはビジネスを優先する大手企業に実力を認められる必要があります。認められれば大手企業の人的、資金的な手厚いサポートを受けながらデビューすることができますが、そのサポートを受け続けるためには熾烈な競争を勝ち残り続ける必要があります。一方、ボードゲームの作品を世に出し広めたい場合、そのようなプロセスは不要です。大手企業の代わりに様々なボードゲーム好きの市場参加者達が適宜サポートしてくれますし、お金さえ工面できれば無理のない範囲で作品を出し続けることも可能です。一時的に製作、販売を休んで、買うだけ、楽しむだけ、広めるだけの人になることも自由自在です。また、面白いと思ったボードゲームを皆で紹介し合うという文化も根付いており、市場関係者のライバル関係と協力関係が絶妙なバランスで成立することで成長し続けている市場でもあります。ボードゲーム好きであれば、川上から川下までどのポジションでも個人事業レベルでチャレンジすることが可能なフラットかつ魅力的なマーケットと言えます。
 是非、ボードゲーム市場の良い所を残しつつ、参加者全員で市場を伸ばしていけると良いですよね。引続き私もボードゲーム市場に何らかの形で参加し続けていきたいと思いますのでよろしくお願いします。


 
 


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