怒り+フルーツキャップ=
気がついた時にはもう、部屋中が無茶苦茶だった。
いつものことではある。飛び散る紙ごみ、混ざるお便り、無限にあるスーパーボール、髪飾りのついたヘアゴム…そういうものが散乱した部屋を台所から眺めると、もうすべてのスイッチをオフにしたくなる。
私はお皿を洗いながら、ふと目の前に置かれた白いアミアミを見つめる。(白いアミアミ…桃にかぶせてあるネットのようなもの、今調べたらフルーツキャップという名前らしい)
「お部屋を片付けて」
「部屋を片付けてから遊びなさい」
「こんな汚い部屋でよく遊べるね」
「何度言ったら片付けてくれるの?自分のものでしょう」
「もう捨てる」
だいたい私の怒りはこんな感じで目に見えて上がってくる。
でも子ども達は慣れているから、「もう捨てる」以外の言葉はあんまり効かない。「もう捨てる」はまあまあ効くが、日常的にやると効かなくなるのは時間の問題だし、本当に捨てると凄まじく泣く。恐怖政治でしかないから悩ましい。
そこで、目の前のフルーツキャップである。
もしかしたらこいつが、救世主になるかもしれない。
ひらめき…!
フルーツキャップは1つしかなかったため、ハサミで2つの輪に切る。
そして、なるべく大きな声で、宣言する。学芸会の主役のように、怒りは含めずに。
「もう、ママ怒った。ゆるせない。お片付けできないなら、こうしてやる。
この、アミアミブレスレットを、無理やり腕につけてやる。そうしたら、やる気満々マンに変身して、めちゃくちゃお片付けできるようになっちゃうんだ」
そうして、目を輝かせた息子(4歳)と、ちょっとしらけている娘(8歳)に装着しにいく。息子はもう、全力ダッシュで片付けを始める。娘も、嫌々ながら片付けを始める。もう一息。
「えー!すごい。アミアミパワーで片付けがこんなに上手になるなら、またすぐに桃を買ってこなくっちゃ。」そうして、娘も目を輝かし、片付けはお風呂までに完了した。
その間、たった10分。なんだよこのやろう。
ああでも、フルーツキャップに頼らず、物を減らさなくちゃ。
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