「保育園落ちた日本死ね」から3年、子供と親は安心できるのか?

「保育園落ちた日本死ね」
この言葉が流行語となってからもう3年だ。

そう思うと年月の過ぎる速さに頭を抱えたくなるが、この、待機児童問題に直面している親たちはもっと悩ましいと感じているに違いない。2019年に厚生労働省が発表した待機児童の数は4万8235人であるが、潜在的にはその倍以上の数がいるという意見もある。

そもそもこの待機児童という問題はなぜ起こるのだろうか?

まずその問題を考える時にややこしいのが、認可保育園、認可外保育園という言葉だ。

そもそも日本における就学前児童を対象とする教育施設は大別して

①認可保育園

②認可外保育園

③幼稚園、の3つに大別できる。簡単に説明していこう。

①の認可保育園とは児童福祉法に基づいて地方自治体が設置を許可した施設だ。要するに国の定めた基準を満たした保育園、ということになる。その基準というのが、設備として乳児室、保育室、医務室、調理室、トイレ、庭園が必要であったり、部屋の広さは1人の子供あたりに、○○歳の子供ならば○○平方メートル必要であるなど、かなり細かいものになっている。このような基準を満たしたことにより、認可保育園は国や自治体から財政支援を受けることができる。

②の認可外保育園は言葉通り、その基準を満たしていない保育園のことである。そのため、当然財政支援は受けることが出来ない。

③の幼稚園は、そもそも福祉施設ではなく、教育施設になるので管轄や法律からして保育園とは異なる。保育園は厚生労働省なのに対して、幼稚園は文部科学省である。

支援を受けている認可保育園の保育料は均衡価格より大幅に低い水準に設定されており、これによって需要ギャップが発生する。

これが待機児童だ。

こうした供給不足、超過需要が慢性的に続くのは、かつてのソ連などの、計画経済によく見られた現象だ。通常の市場の場合こうした、供給不足が続けば企業は価格を上げて儲けようとするが、価格が上がればサービスを受けたいと思う人、つまり需要が下がってくる。

また、値段が上がれば生産を増やす企業が出てくるので供給も増える。これが通常の市場における需要と供給の均衡である。

しかし、保育園の場合、国や自治体の定めた保育市場のルールがあり、認可保育園の場合、利用料に上限が定められている。そのために価格によって需要と供給のコントロールが効かなくなってしまっているのだ。

また、そのルールが厳しいがために新規参入の壁も非常に分厚い。先に言った通り、認可保育園を作ろうと思うと、かなり多くの土地が必要となってくる。都心には待機児童が多いが、都心でこの基準を満たすことのできるスペースを確保するのは非常に困難になる。
確保したとしても、ご近所から「うるさい」と言われ、反対される可能性もあるのだ。

保育園というものは補助金で成り立つ構造にあるので、補助金対象外の認可外保育園となると、財政面でかなり厳しくなる。保育料を高く設定したとしても、だ。保育園を作るより駐車場を作った方が儲かるという話もある。

こうした環境では当然、保育士も離れていく。保育士の常勤従事者は35万程なのだが、保育士の資格を持ちながらも保育士として働いていない、潜在保育士は70万人を超えると言われている。

さらに、2015年に厚生労働省が発表した「保育士等に関する関係資料」を見ると、全職種の平均給与が329万なのに対して、保育士の平均給与は216万である。政府は保育士の給与の上乗せを目指しているが、保育士のこなす業務量や保育士が負う責任からすれば依然低すぎるといえよう。多くの保育士が、自分の職業の待遇や賃金には問題があると感じているのは間違いない。

保育や介護業界は労働者の「やりがい感情」に支えられている。しかしそれはいつ崩れるやも分からない砂上の楼閣であると、早く気がつかねばならない。

こうした状況の解決策として、OECD(経済協力開発機構)は保育バウチャーというものを提案している。

これは認可ないし認可外保育園、幼稚園の区別をなくし、その分の補助金をバウチャー(金券)として保護者に回し、どの施設に子供を預けるかは、親に決めさせるという制度である。保育園が自由経済で運営されれば、新規参入が増え、保育士の待遇や、待機児童も解消される見込みがあるかもしれない。

実際、シンガポールは働く女性、共働きが日本より多いが、保育に関して国は小さな政府状態で、民間企業に多くを任せ介入も最小限だが、保育士の不足や待機児童などの問題は起こっていない。


待機児童問題を小さな問題、自分とは関係のない問題などと決して思ってはいけない。この問題はいずれ、あなたか、あなたの子供が通らねばならない問題なのだ。「日本死ね」から3年経った今、もう一度この問題について政治家や我々は考え直した方がいいだろう。

そういえば、ちょうどこの記事を書いている今が終戦記念日なのだった。最後は永六輔のこの格言で終わらせて頂こう。
「子供が毎日楽しく生きているかどうか。それが平和かどうかということです。」

polimos 寄稿人 アキ

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

我々は意見投稿サイト「polimos」を創り積極的に社会に刺激を与えていき民間から社会・政治の熟成と進歩を助けていきたいという思いで発足しました。 ここでは「polimos」の管理人や関係者が各自の意見を発表していきます。 多様な考えを知ることで視点をひろげましょう

ご視聴ありがとうございます
3
我々polimosは毎週noteに社会に対する批評文を掲載しております。 あなたが今、社会に対して言いたいことや問題提起したいことを書いて私たちを通じて世界に発信してみませんか? こちらのサイトから寄稿できます。 https://liberty-polimos.com/
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。