Netflixという新たなメディアの潮流

今月4日、世界最大級のオンライン映像サービス「Netflix」のオリジナルドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のシーズン3が世界同時配信された。

このドラマは1980年代の架空の町ホーキンスを舞台に、少年の失踪を原因として次々と起こる不可解な事件に少年達が巻き込まれていくというSFホラーアドベンチャーものだ。

少年たちの成長や友情、家族のドラマだけでなく、超能力を持つ謎の少女や『裏の世界』といったSF要素、更には懐かしき80年代の名作映画や音楽、ファッションなどのポップカルチャーをふんだんに詰め込んだ本作は、Netflix内のコンテンツの中でも、あらゆる層から絶大な支持を得ており、シーズン1・2は「ドラマのアカデミー賞」と称されるエミー賞を多部門で受賞している。

このドラマの舞台である80年代という時代では、音楽や映画などはビデオやカセットといった電子メディアで”所有”するものであった。時代が少し進んでも、それらはCDやDVDといったものに置き換えられたに過ぎなかった。特にCDが台頭してきた90年代は日本音楽業界の最盛期とも言われる時代で、何人ものアーティストがダブルミリオンの売り上げを連発していた時代だった。

では今はどうだろうか?人気絶頂と言われる「あいみょん」や「米津玄師」といった今をときめくトップアーティストでも、CDの売り上げは100万枚に満たない。

この事態の大きな理由として挙げられるのは「Spotify」を筆頭とするストリーミングサービスがある。

今や音楽は、”所有するもの”から、”聴きたい時、見たい時に、聴きたいだけ、見たいだけレンタルするもの”という時代になったのである。

同様のことがテレビやドラマにも起こっている。2018年のアカデミー賞では、Netflixで配信されたアルフォンソ・キュアロン監督作の『ROMA/ローマ』が外国語映画賞、作品賞を含む10部門でノミネートされた。それだけではない、先に紹介した『ストレンジャー・シングス 未知の世界』が受賞したエミー賞という賞についてだが、これは元々テレビドラマを始めとする番組のほか、テレビに関連する様々な業績に与えられる賞である。この賞の2018年のノミネートを見てみると、最多の112部門でNetflixが候補に入っている。

これらはすなわち、アメリカの地上波ネットワークによって支えられていたテレビ時代の終わりを指す。1997年に設立されたNetflixは、この20年程でテレビの王者になってしまったのである。
もちろん、勢いのあるストリーミングサービスはNetflixだけではない。HuluやAmazonといったサービスも失速するテレビ局を尻目に、毎年大きな伸びを見せている。

これらのストリーミングサービスの最大の強みは受け手側の自由にある。テレビと違い、これらのサービスでは、特定の時間に拘束されることがない上に、見逃すこともない。さらにそのラインナップも魅力だ。ドラマやアニメだけでなく、コメディやドキュメンタリー、教育など豊富に揃っており、それらのなかからユーザーの行動分析を元に、ユーザーが自分だけでは思いつかないであろう、オススメなコンテンツを次々と提案してくれるのである。なのでユーザーは次から次へと新たなコンテンツを貪れる。まさにユーザーファースト、至れり尽くせりといった感じだ。

こうした外資のコンテンツサービスに日本のテレビ業界は対応できているのだろうか?

残念ながら、現在の段階ではとても対応できているとはいえない。日本のテレビでも、民法キー局5社による「TVer」などの配信サービスを出しているが、視聴中にスキップのできないCMが入る、見れる期間が決まっている、など、外資の大型配信サービスと比べて非常に不親切で魅力の少ない代物になってしまっている。

そもそも、日本のテレビ局はプレミア性に重点を置いてきた。番組は貴重なものであり、その価値を下げないため、みんなを待ちに待たせて、視聴させるというものである、この考え方がテレビ業界には根付いている。放送というシステムは普及率という面では確かに強い。3,40年前ならまだしも、テレビを見る習慣も薄れ、多くの人がスマートフォンに向き合う時間が1日の大半を占めるこの時代に、そういった懐古的な考えは通用しないだろう。コンテンツは、もはやユーザーに提供するものではなく、ユーザーによって多くの選択肢の中から選択されるものになったのである。

この世界中で流れるメディアの変化の流れはおそらくこれから、更に加速していくだろう。「局」や「放送」の力は弱まり、人や金の流れが変わり始めている。「ガラパゴス化」した日本のテレビ業界はこの荒波を乗り切り、新たなビジネスモデルを見つけることができるのだろうか。あるいは飲み込まれてしまうのか。きっとそれを知ることができるのはそう未来ではないはずである。

polimos 寄稿人 アキ

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